青森県水産試験場研究報告 3,29−35 (2003)


                                                              

        

青森県出戸東方における海洋特性について



佐藤 晋一



The Property of Ocean at east of Dedo,
Aomori Prefecture, Japan



                    Shinichi Sato



 本県太平洋側の出戸沖は沿岸部を津軽暖流が南下し,その沖合を親潮第1分枝が南下している.また,この海域の大陸棚の幅は4q程度と狭くなっており,その沖側海底には小川原海底谷が北東から南西に走っている.このため,湧昇された冷水が特徴的に分布する海域ともいわれている.
 ここでは,これまでに蓄積された観測資料を整理し,若干の考察を行ったので報告する.


                           要  約


 
本県太平洋側の出戸沖線(北緯41度)についての観測資料を整理し,若干の考察を行った.
 津軽暖流域の各層最高水温は0m層では8〜9月に最高,50m層では9〜10月に最高,100m層では10月に最高と,下層に向かってピークが少しずつ遅く,水温値も低くなっていた.最低水温はいずれも2〜3月に見られた.
 水塊深度は6〜7月に一旦極小値をみせ,8月から12月は同程度の深さを示していた.
 出戸東方における津軽暖流の張り出し位置は,1〜3月に最も西側に位置し,10月に最も東方に位置していた.しかし,東経142度40分までの観測線ではとらえられない事例が約5割もみられており,8〜12月は観測の5割以上で張り出し位置がより東側であることがうかがわれた.
 出戸東方の東経142度40分までの水深300m層を無流面とする南下流量は175回の全平均で0.56Svとなった.月平均で見ると最大は6月で,7〜11月の平均値は小さく,最小は11月となった.全平均は0.56Svとなったが,これは,尻屋線における500m層を無流面とする津軽暖流の南下流量の全平均2.03Svの3割弱に当たっていた.この理由としては,出戸線の観測ラインが短いことや尻屋線での無流面が500mと深く設定できたことがあげられ,出戸線のデータでは津軽暖流の流量をとらえきれていないといえた.
 地衡流量は,3月から6月ぐらいまで流量が増加していくが,7月以降の流量が少なくなっていた.これはこの時期,津軽暖流が沿岸モードから渦モードに移行し,東経142度40分までの短い出戸線ではとらえきれなくなるためと考えられた.
 季節変動の主成分分析の結果から,この海域では津軽暖流による変動が最も大きいと考えられた.
 第2主成分は水深150m付近を中心とする変動が見いだされ,親潮第1分枝の変動を示しているものと考えられた.
 塩分の第1主成分も津軽暖流の変動を示しているものと考えられた.第2主成分は沿岸側の下層に分布の中心がみられ,親潮系冷水を示しているものと考えられた.