青森県水産総合研究センター研究報告4号(2004.3

                                              Bull. Aomori Pref. Fisher. Res.Centr., No. 43980

          

        改訂青森県産魚類目録



       塩垣  優1・石戸 芳男2・野村 義勝3・杉本  匡4



        1青森県水産総合研究センター増養殖研究所,〒0393381 東津軽郡平内町茂浦月泊10

        20310823 八戸市湊高台4519

        30394712 下北郡佐井村長後字牛滝川目231

        4青森県営浅虫水族館,〒0393501青森市大字浅虫字馬場山125



      キーワード:魚類目録,青森県,改訂版



       Revised Catalogue of the Fishes collected from the Waters
                of Aomori Prefecture

  
         
 Masaru SHIOGAKI1, Yoshio ISHITO2, Yoshikatsu NOMURA3
                     and Tadashi SUGIMOTO
4




    Abstract A catalogue of fishes collected from the waters of Aomori Prefecture was
   issued twenty-two years ago
Shiogaki, 1982),with the records of 529 species belonging

   to 185 families. Shiogaki , Nomura and Sugimoto1992 supplemented Shiogaki1982),with

   106 new records and then showed that the fish fauna was composed of 643 species belonging to

   198 families . Since the publication of the catalogue by Shiogaki et al .1992 numerous new

   records of fishes were reported.

   This paper reports 697 species belonging to 211 families , including 68 new records indicated

   with asterisk to Japanese name of fishes.

   It is notable that the tropical to subtropical species were recently recorded from this northern

   areai.e., Manta birostris, Chanos chanos, Taractes rubescens, Eleutheronema tetradactylum,

   Zanclus cornutus, Ostracion rhinorhynchus, Arothron hispidus, etc..


            1Corresponding autherMasaru Shiogaki, Aomori Prefectural Fisheries Research

          Center, Aquaculture Institute, Moura, Hiranai-machi, Aomori 0393381E-mail

          masaru_shiogaki@ags.pref.aomori.jp




  森県産魚類の全体的な把握は短期間の調査では困難であり,また,本県の地理的な特徴と海域の多様さのため独力でなすことは到底不可能である.

塩垣は昭和48年,本県に奉職以来記録の収集整理にあたり,特にそれまで顧みられなかった潮間帯‐潮下帯魚類や沿岸域,深海域での魚類相の解明に努めてきた(塩垣,1982;塩垣ほか,1992;塩垣・古川,2000;塩垣,2003ほか).石戸は東北区水産研究所八戸支所に長年勤務し,その間,八戸を中心とする太平洋海域での底曳,定置網漁業で漁獲される魚類相の解明に努めてきた(石戸,19992003ほか).野村は,佐井村牛滝で漁獲される魚種を中心に,長年にわたって,標本保存と記録の整理に当ってきた.その収集は周年に亘り,かつ漁業者の熱心な協力のもと本県初記録の多くの魚種を記録した(野村・塩垣,19881992;野村,2004.杉本は県営浅虫水族館に勤務しながら,県内各地で展示用魚類の収集にあたり,多くの新記録魚種の記録保存に努めてきた(杉本,19871991ほか).
 塩垣ほか(1992)は塩垣(1982)に収録されていなかった新記録魚種を中心とした補訂版を出したが,今回は新記録魚種のリストだけではなく,今後の利用者の便を考慮し,これまで記録されてきた全魚種の目録とした.収録範囲にはこれまで同様,外川(1967)が熱心に調査された太平洋岸階上町との隣接町である岩手県種市町をも含めてある(図1).

科までの上位分類群の配列はこれまで益田ほか編(1988)に準拠してきたが,今回は大幅な改訂がなされたNakabo2002)に全面的に従った.魚種の配列に戸惑う利用者の便を考慮し,全ての科名の頭に同書の目次に付けられた科の通し番号を付した.大分類群名のうち,煩雑を避け,上綱,綱,亜綱,目,亜目,科のみとした.和名,学名も1部を除き同書に従ったが,益田ほか(1988)とは和名,学名はおろか目,科の変更もあり,注意を要する.それぞれの収録種の産地については,できるだけ簡略を旨とし,これまで詳細なデータを示したものについては産地のみの記録とし,これまで収録していなかった種のほか,塩垣ほか(1992)以降に確認された学術上貴重なものについては,産地,サイズ(TL,全長;SL,体長),採集年月日,漁法の順で示した.また,すでに報告してきた種に関しては煩雑を避けるため,特に直接の文献を示さず塩垣(1982),塩垣ほか(1992)とし,直接の引用文献を省略した.今回の引用文献は紙数の都合上,それ以外のものに限定してある.産地に引用文献の通し番号で示した.

また,今回の新記録魚種68種には和名の頭に*印を付した.今回の改訂作業では分類が細かくなってこれまで1種としてきたものが何種にも細分されている場合があり,分類学的な再検討を要するものがあるが,この場合,Nakabo2002)の分布に従った.これらは殆ど淡水魚であり,要再調査とした.漁法のうち太平洋深海底曳とは塩垣が昭和5556年代に従事した県水産試験場調査船初代開運丸でのオッタートロール太平洋深海底曳漁法(本県太平洋底曳海区の沖合水深5001000m海区)をいう.ウオダス情報並びに新聞記事等の引用文献名は発行年月日と取上げた魚種名のみとした.

改訂の結果,総計211697種・亜種となった.近年,収録魚種の内,オニイトマキエイ,サバヒー,ミナミコノシロ,ツノダシ,テングハコフグ,サザナミフグなど熱帯ないし亜熱帯性魚類の出現が相次いでおり注目される.今後,収録される魚種があるとすれば極めて珍しい遇来種であり,地球環境の変動に伴う新たな暖海性魚類の出現であろう.これらをモニターしていくことが今後,重要な責務となる.

最後に,太平洋沿岸における潮間帯魚類に関しては鮫を除き殆ど手がつけられていない点を問題点としてあげておく.

今回の目録編集にあたって多くの方々の情報提供に感謝する.特に,青森県水産総合研究センター発行のウオダス情報担当者,各出先の水産業改良普及所員,多くの漁協職員並びに組合員,一般の釣客,新聞記事等からの情報は貴重であり,吟味の上収録した.また,独立行政法人東北区水産研究所八戸支所支所長北川大二博士には八戸産魚類についての貴重なご教示を頂いた.淡水魚の1部については弘前大学佐原雄二博士,県内水面研究所長崎勝康氏のご教示を頂いた.

ここに,関係者の皆様に深く謝意を表する.