青森県水産試験場研究報告 2,11−16 (2002)


                                                              

        

小泊村沿岸域におけるウスメバル未成漁の分布について



菊谷 尚久



Distribution of preadult rockfish, Sebastes thompsoni (Jordan et Hubbs),

in Kodomari costal sea



                   Naohisa Kikuya



 ウスメバルSebastes thompsoni (Jordan et Hubbs)は日本海北部を代表する岩礁域に生息する魚種であり,青森県では主として一本釣や刺網により漁獲される.青森県日本海側での近年の漁獲量は年間200〜500トン台で推移しており,市場単価が高いことから沿岸漁業での重要な漁獲対象種となっている.
 本種の初期生活については,流れ藻に付随する稚魚として知られており(池原,1997),長澤(2001)により詳細な報告がなされている.しかし,流れ藻から離れた後の生息環境については,涌坪・田村(1983)や池原(1989)により報告されてはいるものの,未成魚期の生活様式については未だ不明な点が多く残されている.
 本報告は,青森県日本海側北部の小泊村沿岸域で実施した刺網(三枚網)調査で,未成魚期のウスメバルの分布に関して若干の知見を得たので報告する.



                           要  約


 青森県日本海側の小泊沖におけるウスメバル未成魚期の分布・移動について,1999年7月〜2000年6月の期間,小泊沖水深50〜70mの海域で刺網試験を実施した.
1. 調査期間中に採集した魚類51種2,286個体のうち,ウスメバルが1,223尾ともっとも多く漁獲された.
2. ウスメバル平均漁獲尾数は,7〜9月の間は20〜40尾/回を示していたが,10〜12月にかけて10尾/回以下に激減した後,1月以降再び増加し6月では最高の109.5尾/回を示した.
3. 体長組成から各年齢ごとの正規分布に分解した結果から,調査海域でのウスメバルの分布は1,2歳魚が中心であることが示された.
4. 春季に着底した0歳魚は,翌年の2月以降調査海域に出現した.
5. 調査海域周辺のウスメバルは,1,2歳魚期を水深50〜70m付近ですごした後,漁獲の主体となる3歳魚以上の主分布域である水深100〜150mへ移動すると考えられた.
6. 1,2歳魚が深場へ移動する要因の一つとして,秋季の高水温からの逃避がきっかけになっていると考えられた.
7. ウスメバルの好適水温帯は9〜16℃前後と考えられた.