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酒米・酵母・麹 酒米・酵母・麹

酒⽶(さかまい)

酒⽶は酒造に適した性質をもつうるち⽶のことで、正式には酒造好適⽶(しゅぞうこうてきまい)といいます。酒づくりには、⼤粒で、雑味の原因となるタンパク質や脂肪が少ない⽶が好まれます。また、⽶粒の中に⼼⽩(しんぱく)という⽩⾊不透明部があることも重要です。⼼⽩はすきまが多くやわらかいので、麹菌(こうじきん)が⼊り込みやすく、良質な麹をつくることができます。
⻘森県では、昭和43年(1968)に利⽤が始まった「古城錦(こじょうにしき)」、昭和52年(1977)から利⽤されている「豊盃(ほうはい)」などのオリジナル酒⽶を開発しています。これらの酒⽶は、⻘森県産業技術(あおもりけんさんぎょうぎじゅつ)センターの農林総合研究所(のうりんそうごうけんきゅうじょ)が栽培適性を、弘前⼯業研究所(ひろさきこうぎょうけんきゅうじょ)が酒造適性を研究し、⻑い時間をかけて品種化されています。

⻘森県のスタンダード酒⽶
「華吹雪(はなふぶき)」

「おくほまれ」と多収で寒さに強い「ふ系103」を交配した品種で、昭和61年(1986)から利用が始まり、現在も純米酒や特別純米酒の主要な原料米です。全国の酒米の中で最も大粒で、収量も安定し、栽培しやすいことから、酒米では全国11位の生産量を誇ります。製成酒は、米の旨みが凝縮された味わい深いお酒に仕上がります。心白が大きいため、高精白すると割れやすく、精米歩合の高い大吟醸酒などには不向きです。弘前市など、県内でも比較的温暖な地域で生産されています。

⻘森県の酒⽶の王様
「華想い(はなおもい)」

「⼭⽥錦」と「華吹雪」を交配した品種で、純⽶⼤吟醸酒や⼤吟醸酒の主流な酒⽶として平成14年(2002)から利⽤されています。かつて⻘森県の⼤吟醸酒は、県外産の酒⽶、特に「⼭⽥錦」を原料としており、県産⽶での⼤吟醸酒づくりの期待をうけて開発されました。半分以上精⽶しても割れづらく、きれいな後味のお酒に仕上がります。県オリジナル酵⺟との組み合わせで、きれいな味わいと華やかな⾹りが調和したお酒が味わえます。「華想い」を表ラベルに表記できるのは、県酒造組合の厳しい品質検査に合格したお酒のみ。寒さや病気に弱いため、弘前市など、気象や⼟壌の条件が良い地域で栽培されています。

酒⽶の異端児、すっきりタイプ
「華さやか(はなさやか)」

「華想い」の選抜過程で偶然みつけた変わり種です。「⿊1900」と「吟ぎんが」を交配した品種です。麹酵素によって分解されにくいタンパク質「プログルテリン」を多く含むため、雑味となるアミノ酸が極めて少なく、すっきりした味わいのお酒に仕上がります。このようなタイプの実⽤品種は、国内でも「華さやか」だけです。平成26年(2014)から利⽤が始まりました。「華さやか」の⽶や酒粕は、コレステロールや脂肪を吸着して体外への排出を促すレジスタントプロテインとしての⽣体機能が明らかにされています。また、パン⽤にも向いています。主に弘前市や⼗和⽥市(とわだし)で⽣産されています。

冷害知らずのオールマイティ酒⽶
「吟烏帽⼦(ぎんえぼし)」

ともに耐冷性に優れた酒造好適⽶「出⽻の⾥」と⼀般うるち⽶「⿊2065」を両親にもち、寒さに極めて強く、病気にも強い品種です。これまでの県産酒⽶は、寒さや病気にあまり強くないため、ヤマセの影響が出やすい県南(けんなん)・下北(しもきた)地域での栽培には不向きでした。県南地域の蔵元から、地元の酒⽶で⾼品質な地酒を造りたいという期待を受けて開発された品種で、⽶の中⼼部に⼩ぶりの⼼⽩があり、⾒た⽬もきれいな酒⽶です。平成30年(2018)から利⽤が始まり、⼤吟醸酒から純⽶酒まで、キレのある旨みが特徴のお酒が造られています。「吟烏帽⼦」の誕⽣によって、⻘森県のすべての酒蔵で、地元の酒⽶による地酒づくりが可能になりました。

「華想い」の穂と岩⽊⼭

「華想い」の穂と岩⽊⼭

「華吹雪」の穂、籾、粒

「華吹雪」の穂、籾、粒

「華想い」の穂、籾、粒

「華想い」の穂、籾、粒

「華さやか」の穂、籾、粒

「華さやか」の穂、籾、粒

「吟烏帽⼦」の穂、籾、粒

「吟烏帽⼦」の穂、籾、粒

酵母とは

麹のはたらきで⽶のデンプンから⽣成した糖をアルコールに変えるのが酵⺟です。また、⽇本酒独特の華やかな⾹りも酵⺟から造られます。発酵⼒や⾹りの⽣成⼒の強弱など、酒質に密接にかかわることから、優良な酵⺟の開発は明治時代から⾏われてきました。明治以前までの酒づくりでは「家付き酵⺟」と呼ばれる野⽣酵⺟を使っていましたが、現在は純粋培養した酵⺟を⽤いるのが⼀般的です。
⻘森県では、酒⽶「華吹雪」「華想い」の実⽤化にともない、県オリジナル酵⺟の開発・普及を⾏ってきました。現在までに4種類の酵⺟が県内に配布され、平成29年(2017)からは県外配布も⾏っています。

まほろば吟(まほろばぎん)

吟醸酒や⼤吟醸酒など⾼精⽩が必要な⾼級酒⽤の酒⽶「華想い」の誕⽣にともない、従来の商品と差別化できる華やかな⾹りが必要と考えて開発されました。⼤吟醸酒や純⽶⼤吟醸酒、吟醸酒に使⽤されています。りんごの爽やかな⾹り成分「カプロン酸エチル」を⾼⽣産し、酸度が低く、華やかな⾹りを特徴としたお酒に仕上がります。もろみ中で⾼泡が発⽣しない性質をもち、アルコール耐性がやや低い酵⺟です。平成15年(2003)から利⽤されています。

まほろば醇(まほろばじゅん)

「まほろば吟」と同様、「華想い」の誕⽣にともなって開発された酵⺟です。純⽶⼤吟醸酒や⼤吟醸酒に使⽤されています。りんごの⾹り成分「カプロン酸エチル」とバナナのような芳醇な⾹り成分「酢酸イソアミル」のバランスが良く、酸味がきれいで⾹味の調和したお酒に仕上がります。もろみ中で⾼泡が発⽣しない性質をもち、アルコール耐性は「まほろば吟」より⾼い酵⺟です。平成15年(2003)から利⽤されています。

まほろば芳(まほろばかぐわ)

「まほろば吟」「まほろば醇」と同様、「華想い」の誕⽣にともなって開発された酵⺟です。純⽶⼤吟醸酒、⼤吟醸酒、純⽶酒に使⽤されます。バナナの⾹り成分「酢酸イソアミル」を⾼⽣産し、酸味がきれいで⾹味良好なお酒に仕上がります。もろみ中で⾼泡が発⽣しない性質をもち、アルコール耐性が⾼いため、もろみの末期になっても死滅しにくい特徴があります。平成15年(2003)から利⽤されています。

まほろば華(まほろばはな)

⻘森県初の県産酵⺟で、「まほろば吟」「まほろば醇」「まほろば芳」の親株でもあります。県内の酒蔵から酵⺟を分離し、選別・改良を重ねて開発されました。平成9年(1997)から利⽤され、現在も華吹雪の純⽶酒をはじめ、多くの銘柄に使⽤されています。バナナの⾹り成分 「酢酸イソアミル」とりんごの⾹り成分「カプロン酸エチル」のバランスが良く、酸味はやや低めで、⾹味良好なお酒に仕上がります。低温発酵、アルコール耐性に優れています。

電⼦顕微鏡でみる⻘森県オリジナル酵⺟

電⼦顕微鏡でみる⻘森県オリジナル酵⺟

麹菌は、みそ、しょうゆ、穀物酢、⽇本酒など伝統⾷品の製造になくてはならない存在で、⽇本の「国菌」です。麹菌にはデンプンやタンパク質などを分解する酵素を⽣み出す⼒があり、これらの酵素のバランスが、お酒の⾹りや味わいに⼤きく影響します。そのため、酒づくりでは、求める酒質にあった麹を造ることが⼤切です。酒⽶や酵⺟の開発は各地で⾏われていますが、麹菌を独⾃で開発し、実⽤化する例はほとんどありません。⻘森県では、酒⽶「華想い」の誕⽣にともない、平成16年(2004)から県オリジナル麹菌の開発に着⼿しました。優れた特性をもつオリジナル麹菌の開発に成功したことで、原料も微⽣物もオール⻘森県産酒の醸造が可能になりました。

ゴールドG

「華想い」の⾼級酒に適した性質をもつよう、市販の麹菌に紫外線を照射して変異させた株から選抜されました。デンプンをグルコース(ブドウ糖)に分解する「グルコアミラーゼ」という酵素を⾼⽣産し、酵⺟がつくる「カプロン酸エチル」の華やかな⾹りとよく調和します。もろみの糖化⼒がかなり強いため、留麹を省略しても、きれいで旨みのあるお酒に仕上がります。

⽶麹の拡⼤写真。表⾯が麹菌の菌⽷で覆われている

⽶麹の拡⼤写真。表⾯が麹菌の菌⽷で覆われている

⻘森県オリジナル麹菌でつくられた⽶麹

⻘森県オリジナル麹菌でつくられた⽶麹