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津軽海峡海域

 津軽海峡域は魚類分布他の実態から龍飛から大間までの西部海域と大間崎以東尻屋崎までの東部海域に2分するのが適当であろう。

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1)津軽海峡西部海域
 龍飛崎から大間崎にいたる海域で、陸奥湾湾口部は含まない。龍飛崎周辺は特に強く暖流がつき当たるところで、イソハゼ、ミサキスジハゼ、ヒメギンポ、コケギンポ等の色彩豊かな南日本で見られるものが普通に生息している。 
 
 海峡を東進する暖流は一部大間崎以南の下北半島の刃に相当する佐井村沿岸につき当たり強い南下流となって陸奥湾湾口部との間に渦流域を形成し、特に晩秋から初冬にかけて多くの亜熱帯性ないし温帯性魚類が漁獲されることが知られている。佐井村南端部にある牛滝で長年底建網等で漁獲される魚類の収集・研究を行ってきた野村・塩垣(1988, 1992)の研究では、日本海でも記録されていない極 めて珍しい多くの亜熱帯性ないし温帯性魚類が記録されている。
 
 以下に代表的なものを挙げるが、これらは全て本県のこの海域が北限となっている。

 エドアブラザメ、ウシエイ、トカゲエソ、ハマダツ、オキザヨリ、アオヤガラ、タカクラタツ、ヨロイイタチウオ、シオイタチウオ、トウゴロウイワシ、セスジボラ、キジハタ、クエ、キントキダイ、アカアマダイ、カンパチ、クサヤモロ、モロ、ムロアジ、マルアジ、アカアジ、オアカモロ、オニアジ、オキアジ、ナンヨウカイワリ、クロアジモドキ、リュウグウノヒメ、マンザイウオ、ハチビキ、イスズミ、コショウダイ、ヒゲソリダイ、シマイサキ、コトヒキ、カゴカキダイ、チョウチョウウオ、ゲンロクダイ、ハタタテダイ、カワビシャ、テングダイ、スズメダイ、オヤビッチャ、タカノハダイ、ユウダチタカノハ、コブダイ、ニシキベラ、ホンベラ、オハグロベラ、アイゴ、コウライマナガツオ、イソハゼ、ミサキスジハゼ、リュウグウハゼ、シマシロクラハゼ、アワユキセジロハゼ、ヒゲセジロハゼ、コマハゼ、ヤリミミズハゼ、ナンセンハゼ、キビレミシマ、ヘビギンポ、ヒメギンポ、コケギンポ、イソギンポ、ベニツケギンポ、イズカサゴ、ミノカサゴ、オニオコゼ、ヒメオコゼ、ハオコゼ、イネゴチ、コチ、フタスジカジカ、アナハゼ、アヤアナハゼ、ムツカジカ、イダテンカジカ、ダンゴウオ、ギマ、テングハコフグ、ソウシハギ、ウミスズメ、クロサバフグ、ホシフグ、ネズミフグなど。


写真 ヒメギンポ

三厩村龍飛産. ヘビギンポ科ではヘビギンポが日本沿岸で普通.本種は南日本のもので三厩村龍飛では普通.





 本海域は佐井村漁協牛滝支所長を長年勤めた野村義勝氏の熱心な研究により詳細なデータが得られている。当然、これらの魚種は日本海沿岸で採集記録されているべきものである。本海域は日本海海域と同じ温帯性とみなされる。
 
 この中で、特筆すべきはハゼ科のシマシロクラハゼである。本種は龍飛崎の岩礁性海岸の潮下帯で筆者が4個体採集し、このうち2個体が、新潟県佐渡島と長崎県野母崎産の標本と共に陛下の研究により新種として記載されたものである。龍飛産の標本は完模式及び副模式標本に指定され、国立科学博物館の登録標本となっている(Akihito and Meguro, 1988)。


写真 シマシロクラハゼ

三厩村産. Akihito and Meguro(1988)が三厩村龍飛産標本をホロタイプに指定して記載した





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 2)津軽海峡東部海域
 大間崎から尻屋崎に至る海域である。この海域は海峡西口海域に比較して極端に暖流系要素が減少しており、冬期間の冷え込みが厳しいことを物語っている。昔から、大間崎以東には温帯性巻貝であるサザエの分布が見られないこと、さらに、典型的寒流種として道東海域に生息する有名な軟体動物門多板綱のオオバンヒザラガイ(地方名は北海道と同じくアイヌ語のムイと称する)、北海道野付湾で有名な甲殻綱長尾類のホッカイエビの生息が知られており(塩垣、1988)西部海域とは 著しい生物分布の相違が認められる。
 
 魚類にあっても、タイ類(マダイ、チダイ)は殆ど見られない。また、前掲の海峡西部海域の北限の魚類を欠いている。しかし、当海域が北限となっているものも少ないがある。これらは、キタノウミヘビ、キントキダイ、ギンガメアジ、マハタ、オキナヒメジ、ナガユメタチモドキ、ナガミミズハゼ、ハオコゼなど。
 以上述べてきたように、海峡西部海域は日本海と同じ温帯に、東部海域は冷温帯とされる。

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