青森県水産試験場研究報告 1,9−15 (2001)


                                                              

        

異なる逆算方法により求められたウスメバル成長式の比較



菊谷 尚久



A Comparoson between Growth Formula of Rockfish,Sebastes thompsoni (Jordan et Hubbs)Estimated by Different Backcalculation



                  Naohisa Kikuya

(要約)


 
魚類の成長解析では,これまで耳石径と体長の回帰式を用い,耳石輪径に基づく逆算法により成長式を算出する方法が多用されている.逆算法による解析の場合,従来より回帰式による方法とFreser-Lee法の2つが用いられており,三尾(1965)による輪径の標準化もFreser-Lee法の1つと考えられる.渡邊(1997)によると,回帰式による方法では,各固体の耳石径ー体長関係と個体群の耳石径ー体長関係との差を無視することになり,固体によっては採集時の実測耳石径から計算される計算体長と実測体長とが一致しないという矛盾が生じるとしている.またFreser-Lee法で初期仔魚を含まない標本で回帰式を求めた場合,実測よりも回帰式の傾きは大きく切片は小さくなり,この回帰式で過去の成長を推定すると,実際の過去の体長より小さい値になるとしている.そして,従来法の問題点を改善する方法としてBiological Intercept法を紹介している.
 本報告では青森県日本海側から得られたウスメバルを用い,回帰式による方法,輪径の標準化による方法及びBiological Intercept法を応用した方法で成長式を算出し比較を行った.



                          要  約

 耳石輪径に基づく逆算による成長式の算出において,逆算方法の違いによる算出結果の違いについて検討するため,青森県日本海側及び陸奥湾内のウスメバル1,302尾を用いて,回帰式による方法と輪径の標準化による方法及びBiological Intercept法を応用した方法で成長式を算出し,得られた成長式について実測体長との比較を行った.
 その結果,回帰式による方法(未補正)では各年齢を通じて成長を過小評価する結果となり,また,三尾の標準化の場合では若齢部分において成長を過小評価する結果,Biological Intercept法を応用した方法では実測体長にもっとも近い値を得る結果となったことから,Biological Intercept法は,従来の逆算方法にみられる過小評価の可能性を補う有効な逆算方法であると考えられた.