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水産上重要な魚類 (1)

  メクラウナギ目 ヤツメウナギ目 ネズミザメ目 エイ目

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 四季折々に食卓に供される魚類はその種の多さと形態の多様さから目と舌を楽しませてくれる有り難い食材である。また、近年、海産魚類に豊富に含まれる高度不飽和脂肪酸であるDHAが健康面で有用であることが知られるようになり、日本人の食生活にはなくてはならないものとの認識が高まって来た。

 本県で漁獲される魚類のうち市場に水揚げされる種はおよそ150種前後である。この中 から、水産上重要魚種を中心として分類群別に簡単に主な漁場、漁法、漁期、生態、地方名、料理法等を紹介する。ただし、ここで紹介する地方名についてはかなり昔のものであり、土地の古老しか分からないものが多く、現在は廃れているものが多い。また、標準和名と同じ呼称についてはもちろん除外してある。

 なお、ここではスペースの制約があるので、形態に関しての記述は出来るだけ避けることとした。形態については市販されている図鑑類(益田他編,1984)を参照されたい。


 メクラウナギ目
 メクラウナギ科

 クロメクラウナギ
 本種は日本海、特に深浦沖の沖合で籠漁法により漁獲されるもので、昔は皮を干したものが強靭であることから下駄の鼻緒に用いられた。現在では、漁獲も減り最近まで薫製として販売されていた。しかし、韓国船が近海にやって来て大々的に籠漁法で漁獲するようになってからは殆どとれなくなったという。韓国ではハンドバック、ベルトなどに加工して日本に輸出しているとのことである。
 地方名: メクラウナギ(岩崎)、アナゴ(深浦)


 ヤツメウナギ目
 ヤツメウナギ科

 カワヤツメ
 晩秋、産卵の為遡上して来たものを河口に敷設した胴網等で漁獲する。生臭いので好き嫌いのあるものであるが、蒲焼風に調理して食用とする。ビタミンAを多量に含有する為夜盲症の薬として用いられたのも昔のこととなった。
 地方名: ヤツ(ヅ)メ(一般)


 ネズミザメ目
 ドチザメ科

 ホシザメ
 鮫の中では珍しく刺身となる肉質をもち喜ばれる。殆ど底曳で漁獲されるが、近年資源が枯渇状況にある。地方名カノコザメは体側に散在する白点を鹿子模様に見立てた優雅なもの(八戸)、サシミザメはそのものズバリ(下風呂)。


 ネズミザメ科

 ネズミザメ
 11〜3月の冬場を中心に北海道方面から産仔する為に南下回遊して来たものを漁獲するもので、北洋ではサケ流網にかかったサケを呑食する嫌われものである。本県では次種アブラツノザメとともに重要資源であった。江戸時代に本種を専門に漁獲し、近在に売り捌いた小泊村下前の加藤乙吉さんの名前が津軽での地方名カト(ウ)ザメ、(カドザメ)となったとか。南部ではモウカ(ザメ)である。刺身、照り焼き、味噌漬けと用途は広い。

 明治17年大間の佃栄太郎氏の発明になる流網漁法が普及し佐井村では盛んに行なわれており、冬期の貴重な収入源であった。全長3mに達する大形の魚体で、雌には重さ約6Kgの胎仔が4尾入っており大きな卵嚢を持っている。これをすり潰したものをデンゴ、デゴといい美味なものだそうである。食い過ぎると、頭痛がして「デンゴに酔う」という。肝臓は魚油に、胃、心臓も食用とされた。切り身は鱈とともに津軽、南部ともに正月料理に欠かせないものであった。


 ツノザメ科

 アブラツノザメ
 背鰭に鋭い棘が発達しており角鮫である。昔は全県沿岸で漁獲されていた重要資源であったが近年資源は減少の一途を辿っている。主産地は底曳の八戸と三厩である。三厩では津軽海峡の深場で延縄漁法で漁獲する。秋から春にかけての漁である。利用法は殆ど蒲鉾用であり、宮城方面に出荷される。

 肝油からは上等の油が採れ、肝油、化粧品に利用される。本種は成熟まで年数がかかり、懐妊期間が20〜22カ月と長いことから資源が悪化して からの回復には時間がかかる種である。

 2〜5月にかけて20cm前後の胎児11〜13尾を産む。成熟全長は雄で約70cm、雌で約80〜90cmとされる。
 
 本種が大回遊する例として以下の記録がある。
 
 北米シアトル沖合で放流したものが8年後に本県泊で再捕(体長94cmの雄で8年間1cmも成長しなかった)(三河、1971)。
 カナダの太平洋岸にあるバンクーバー島南岸で1985年7月4日に標識放流されたものが、何と11年5か月後の1996年12月4日に三厩のサメ延縄漁船が北海道福島沖4.5マイルで再捕した例がある。この場合には放流データがはっきりしており、放流サイズは74.8cm、再捕サイズが95cm, 3.6Kgであった (県水産総合研究センタ−資料提供)。
 最近の例では同じくカナダで放流されたものが15年後の2000年2月に戸井町沖水深300mで再捕されているが、これは最長記録であろう。

 なお、放流機関はカナダのバンクーバー島ナナイモにあるカナダ水産研究所生物試験場であり、ここでは長年にわたって本種の標識放流を行なっている。 このように、本種の成長は大形となると極めて緩慢であることが知れる。
 地方名: アブラ、ツノザメ(一般)、カノコツノザメ(龍飛)、ツノジ(牛滝)、ハダカザメ(津軽)。


 エイ目

 ガンギエイ類
 沿岸性のものはメガネカスベアカエイなどで他は太平洋深海に産する種(マツバラエイ、リボンカスベ、ソコガンギエイ、ザラカスベ、アラスカカスベ、ツムラカスベ、クジカスベ、オナガカスベなど)が多い。日本海深海には大形になるドブカスベを産するが食用とはしない。八戸では食用となる胸鰭部分のみを切り取って切りベラと称して販売する。軟骨魚類特有の軟骨の歯触りと、煮こごりが美味である。
 地方名:カスベ(一般)、カスぺ(八戸)、ヘピ(ビ)タ(八戸)、ベラ(ザラ)(八戸)、アラ(シ)(鰺ケ沢)





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