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水産上重要な魚類 (2)  ニシン目

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 ニシン目
 ニシン科の5種と、カタクチイワシ科の1種の計6種が知られる。いわゆるイワシ類である。

 ニシン科

 マイワシ
 資源が大変動する魚種であり、本県でも昭和62年には大豊漁で総漁獲量80万トンのうち43万トンもの水揚げがあった。平成元年を境に全国的に資源が減少しており、かつての豊漁時代が嘘のような現状である。近年の漁獲量は数千トンから1万トンを前後している。

 陸奥湾産のマイワシは外海のものと比べて脂肪分が少なく、油焼けしにくいことから特に秋から冬にかけてとれた小羽イワシはカタクチイワシとともに名産「イワシ焼干」に加工される。高級料理屋で蕎麦のダシに用いられる。

 かつて、世界中のイワシを食べ歩いたグルメ俳優の渡邊文雄氏は野辺地産のイワシを食していわく、「陸奥湾のイワシが世界一旨い」と折り紙を付けたとか。新鮮なものの刺身は本当に美味である。

 また、本種の利用法として一風変わった所では、陸奥湾のマイワシはカツオ釣の活き餌として長持ちするという評価が高く、一時期、カツオ船が湾内に買付に来ていたものである。

 湾内奥部では冬場に時として水温が急激に低下し、岸近くでは水温が1℃近くになることがある。平年の表層の最低水温は3-4℃で あるが、青森市内での除排雪で大量の雪が直接海面に投げこまれると、溶けた雪は塩分の薄い軽い水となって表層に広がり潮と南西の風に乗って茂浦方面にやって来る。海岸でカモメが騒いでいれば、それは低温麻痺した大羽マイワシの漂着である。早速、いとも簡単に拾い歩くことになる。しかし、こういうことは毎年あることではない。
 地方名:イワシ、ナナツボシ(一般)、ヒラゴ、ヒライワシ(陸奥湾)。

 ニシン
 江戸時代後期から明治にかけて本県西海岸、陸奥湾、下北沿岸でニシンの漁獲があったことは遠い昔のこととなった。特に西海岸の鰺ケ沢では大豊漁の時代があり、弘前城下に運ぶために道路が開かれたという程であった。

 湾内では大湊の古名である安渡からとった安渡ニシンの名前があった。それが、昭和32年まで続いた本場北海道ニシンの衰退と共に姿を消したのである。本県西海岸でのニシン漁の最後は明治31年であった。

 一方、海ニシンとは違った沼ニシンというものがあり、本県では尾駮ニシンが有名である。太平洋岸では同様に茨城県涸沼ニシンが知られる。尾駮ニシンはむつ小川原開発のための核燃施設用港湾となる運命にあり、すでに漁業権が消滅した。早晩、この貴重なニシンも消滅の運命にある。現在、辛うじて漁獲があるのは太平洋沿岸での底曳漁業と早春の陸奥湾での刺網程度である。

 陸奥湾野辺地漁協では湾内ニシン資源の復活を夢見て昭和61年から平成11年まで、日本栽培漁業協会宮古事業場で生産した種苗を毎春数十万尾搬入し、海面で中間育成して全長10cmまで育てて放流してきた。3〜4年で回帰 したものが確認されたが、残念ながら思うような効果が挙げられなかった。
 地方名:カド(イワシ)(八戸)、ニシ(一般)、ヌマニシ(尾駮)。 

 ウルメイワシ
 体が円筒形に近く、目が大きく、潤んでいることからオロメ(下北)、ドロメ(陸奥湾)、マナコイワシ(日本海)、メダマイワシ(日本海)、ノドイワシ(八戸)、ゴドウイワシ(脇野沢)などと呼ばれているが、一番ぴったり来るのがドロボウイワシ(上磯〜脇野沢)ではなかろうか?現在のように温暖期に入り、マイワシが不漁になった時、このイワシが獲れるようになるからである。

 まるで、マイワシを駆逐する阿修羅の如き印象を受けるが、実際の魚はおとなしく、価値のあまりない魚である。獲れるのが夏場であるから、すぐに鮮度が落ち不味となるからである。それでも最近のグルメブームに乗って、刺身がいけるという人も。また、一夜干の塩焼きは絶品とも。漁獲量自体は何ほどもない。

 コノシロ
 西海岸では刺網の雑魚として初夏の頃結構漁獲されるものであるが、一般にはあまり喜ばれない。焼くと人肉を焼く匂いがするとか、武家社会では「この城」を焼くに通ずることから嫌われた。
 コノシロの10cmばかりの当歳魚は江戸前の寿司になくてはならないコハダとして重宝される。体側の黒点模様は豆絞りを連想させ、いなせなものであり、幼魚の活発に泳ぐ様も又、江戸っ子の生きのよさを彷彿とさせる。



 カタクチイワシ科

 カタクチイワシ
 マイワシのような資源の大変動をしない魚種であり、その増減の周期はマイワシとは全く逆である。本種は温暖期に増大し、マイワシはマダラと同じく低温期に増大する。
 魚体は小さく15cm程にしかならない。湾内ではイワシ小定置で漁獲される程度であるが、上磯地方では焼干の原料として欠かせないものである。マイワシが不漁の年はカタクチを、その逆はマイワシをとうまく補う構図となっている。しかし、カタクチで作ったものが本物であり、高価なものである。上磯地方では冬場の貴重な収入源となっている。  干しあげた背中が真っ黒いことから一般にセグロ(イワシ)と呼ばれる。

 湾内では晩秋から春先にかけての寒い時期に、斜路等の浅瀬に狂ったように集団で乗り上げることがある。この時にはカモメが騒ぎ、ザルを持った人達で大騒ぎとなる。一説には大きな魚に追いかけられて逃げ惑う現象と言われる。しかし、冬場に大きな魚といってもネズミザメ程度しか思い当たらず、その正体は依然不明である。
 地方名:セグロ(イワシ)(一般)、ヒシコ(イワシ)、タヅクリ(八戸)、バカイワシ、マルイワシ(下北)、マルゴ(上磯)。





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