サケ目
重要水産資源が多い。いわゆるサケ・マスの他、チカ、アユ、シラウオを含む。
キュウリウオ科
チカ
淡水の
ワカサギを含む科であるが、つい、ワカサギ科としたくなるが正式にはキュウリウオ科である。昔、長崎から青森に来て間もなくの頃、ワカサギは何科かと先輩から聞かれ、ワカサギ科でしょうと答えて苦笑されたことを思い出す。意地悪な先輩の質問であった。
チカとワカサギの形態は非常に良く似ており正確に識別できれば大変な目利きである。チカは口が小さく上顎後端は瞳孔中央下に達しないこと、腹鰭起部が背鰭起部よりも後方にあること(チカは近くないと覚えると良い)に対してワカサギでは口がやや大きく上顎後端は瞳孔中央下に達し、腹鰭起部は背鰭起部よりも前位か直下にある。体色ではワカサギは飴色、チカは青味がかった銀白色と覚えておけば良い。陸奥湾では両種が分布しており、ややこしい。
両種の生態で明確に区別されるのは産卵場である。チカは沿岸の開放的な砂浜海岸で産卵し、ワカサギは川を遡って礫底に産卵する。これだけの違いがある。
陸奥湾に流れ込む河川の中流域で春先に「チカ漁」としてよく報道されるが、これはワカサギが産卵のため河川を遡上してきたものを投網などで漁獲するものであり誤りである。
チカは本県西海岸には分布しない。陸奥湾から下北、太平洋沿岸である。生物地理区分で明らかにしたように、冷温帯域にのみ分布するのである。早春、刺網漁で子持ちのものが獲れるが、15cm程の大形のものが混じる。これは3-4歳魚である。秋口から、河口、港
内などに成長したものが姿を見せはじめ、釣人で賑う風景が見られる。
世間では北海道のシシャモを珍重するが、チカはもっと世間に受け入れられてしかるべきと思う。子持ちの塩焼き、天ぷら、唐揚げは淡泊で骨・内臓ごと食べられ栄養的にも最高と思うが。
シラウオ科
イシカワシラウオ
八戸前沖から猿ケ森にかけての砂浜海岸の沿岸に産する
シラウオの仲間である。シラウオは終生淡水ないし汽水で生活するのに対して本種は海での生活を専らとする。形態はよく似ているが、本種の方が吻が短く鈍いこと、体高が高く全体にズングリしていること、尾鰭に黒点がないこと等で区別できる。分布は、和歌山から本県までの太平洋沿岸であり、八戸沿岸が北限である。
近くにシラウオを多産する小川原湖があるが昔は小川原湖のシラウオは秋以降海に下り、越冬してから春先に産卵のため沼に入ると考えられていた。しかし、最近の研究でそうではなく種も異なることが分かったのである。小川原湖のシラウオが豊漁を続けているのとは逆に本種の資源は残念なことにここ20年も大不漁が続いている。
シラウオよりやや小振りで、6-7cmにしか ならない。シラウオのような指と形容されるのはやはりシラウオの方であり、本種は指は指でも美人のそれではなくプクンとした子供の指といった所であろうか?
12月が解禁で船曳網漁法で獲られるが、産卵期の4-5月には浅い砂浜で目の細かい刺網
で漁獲される。産卵も砂浜で行われる。卵は生み出されると外卵膜が反転して砂粒に付着し、流れに流されないよううまく出来ている
(塩垣, 1998, 1999) 。
地方名:シラウオ、シラオ、シラヨ(八戸)
サケ科
アメマス、ニジマス、サクラマス、カラフトマス、サケ、マスノスケ、ベニザケと産業価値の高い魚種が多い。この仲間は河川で生れた後、サケ、カラフトマス、マスノスケ、ベニザケを除き河川に残留する型と降海する型があり、複雑な生活史を送る。マスノスケ、ベニザケは本県では珍しいが、その味覚は最上に位置する。
サケ(
シロザケ)
産業上最も重要なものは本種であり、昭和59年には1万トン近い漁獲があったが、以降漸減し、近年では半減となっている。
明治以来の北海道を中心とした国策に依る孵化放流事業も近年民営化の波に飲み込まれつつある。それとは裏腹に、輸入もののサケ・マスが幅をきかせ、肉質の劣る本種の値段が下落し、沿岸定置網漁業者を嘆かせている。
サクラマス
冬から春にかけてのヘラ釣りによる曳釣漁業が盛んで、釣りとしても最も技術を要するもので腕の見せどころでもある。大きいものは特にイタマス(タイコマス)と呼ばれるもので、体高が高く最大10Kgにも達する。これ
は遠くロシア海域の河川に遡上する別系統のものであって、本邦の河川に遡上するものはせいぜい5Kg程度にしかならない。イタマスは特に深浦では日本海を北上するものを専門に漁獲している。
地方名:アオマス(下風呂)、イタマス( 一般)、カラフトマス(深浦)、スギノコ(大畑)、タイコマス(深浦)、ヌケマス(三厩)、ホンマス、マス(一般)、ママス(下北)

写真 サクラマス.
深浦町産.本標本は「太鼓ます」と呼ばれ,体高が高いのが特徴.
カラフトマス
名前の通り、カラフト方面の河川に遡上する群で、日本海で成育した北上群を小泊他で浮延縄漁法で漁獲していた。しかし、この漁法も輸入物のサケ・マスが大量に入ってくるとともに市場価値の低落を見、昭和50年代で廃れてしまった。
地方名:アオマス(一般)、サクラマス(深浦、下北)、セッパリマス(下北)
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