フグ目
8科29種が知られる。熱帯起源のもので、本県では殆どの種が偶来種からなる。水産上重要種はカワハギ科とフグ科に多い。
カワハギ科 フグ科 マンボウ科
カワハギ科
カワハギ
本県沿岸では成熟しない。南日本で生れたものが稚魚期に流れ藻に乗って北上し、夏から晩秋まで成長して全長10cm程になる。南日本では全長35cmにもなる。肝臓を珍重し、高級魚扱いである。
水槽で飼ってみると、胃袋に吸い込んだ水を小さい口から勢いよく吐き出して底の砂礫を吹き飛ばして餌を探す習性がよく分かる。
カワハギ科では棘条の第1背鰭、退化しつつある腹鰭がまだ残っているが、フグ科ではこれらのものは完全に消失し、尚かつ、腹部の肋骨も退化し、胃に水を一杯飲み込んで腹を大きく膨らませるのに都合よく進化している。これも、カワハギのような習性がさらに発達する過程でできたものであろう。
魚釣をしているとすぐ集まってきて、口が小さいため鈎にかからず、餌取りの名人である。
地方名:ギハギ(八戸)、テッテ(鰺ケ沢)
ウマヅラハギ
昭和50年代末から60年代にかけて、全国的に資源が増大し、定置網漁業者は本種が大量に乗網するので、ヒラメ、マダイといった高級魚に背鰭の棘が突き刺さり傷つけて商品価値を下げること、選別に手間がかかること、本種そのものは肥料にしかならず全くの嫌われものであった。しかし、それも平成に入ってから少なくなった。
殆ど全長20cm以下の小型主体であるが早春に時として30cm前後の大形魚がとれることがある。刺身用として高値を呼ぶ。小型魚は頭をとって皮を剥いでから出荷される。
皮は第1背鰭のつけ根の直後から刃物を下にいれ、腹部に達した所まで切り、そこで頭を引っ張ると内臓と共に皮が簡単に剥ける。
塩煮、煮付け、唐揚げなど。癖がなく白身で美味。瀬戸内では刺身で重宝する。
地方名:チュッチュ、セッセ、テッテ、バクチなど(一般)
ウスバハギ
全世界の温〜熱帯海域に分布するが、本県では夏場、定置網に全長40cm未満の小型魚が乗網する。成魚では全長1mに達する。
生時には濃褐色の角形の焼き印を押したような複雑な斑紋を有するが、死魚では微小な斑紋のみが残り、全体に灰白色を呈する。
強く側偏し、下顎部が強く突出しており、特異な形態である。
刺身、ちり鍋等。美味である。
地方名:タイショウ(平舘)、マヅラ(北金ケ沢)
フグ科
11種を産するが、食用となるのは以下の5種である。
「フグは食いたし、命は惜しし」という言葉があるように、フグには毒があること味は魚類の中で最高という人もあるくらいで昔から恐れつつも食べてみたい魚であった。
一般の魚類とは相当な違いがある。まず、歯は上下2枚ずつ合わせて4枚が鋭い嘴状になっておりペンチのように固いものをかみ切ることが出来る。フグ科のTetraodontidaeは4枚の歯の意である。カワハギの所でも言及したように、腹部を膨らませるため腹鰭はもとより、それを支持する骨盤(腰帯)も完全に退化消失しており、肋骨も欠く。体を左右に動かすための体側筋が退化し、代わって背鰭、臀鰭を動かす起伏筋が著しく発達している。背鰭、臀鰭は体の後方で対在しており、主要な運動器官となっている。両鰭は左右に同方向に動かす。
毒は特に肝臓、生殖腺(卵巣、精巣)、皮膚に蓄積され、肉には殆どない。いわゆるフグ毒(tetrodotoxin TTX)であるが、水には難溶性の神経毒であり、種類、季節により猛毒から無毒まで様々といわれる。一般には産卵期に毒性が強まるといわれる。この毒はフグの好餌であるトゲモミジガイ、巻貝などの腸内細菌が産生するもので食物連鎖によって濃縮・蓄積されるという。フグ自身も一定量以上毒を蓄積すれば危険であり、皮膚を通して排出して調節するという。
フグを食べるには全て猛毒があると考えることが肝心である。ある種は無毒であるとか、白子は弱いとか知ったかぶりをしてはならない。同一種でも、毒量には個体差が著しく、当たらなかったといっても、別の個体に猛毒がある可能性がある。これ故、フグは鉄砲といわれる(鉄砲は数打てば当たるの意)。
料理する際には後頭部背面から包丁を半分くらい入れ頭と共に内臓を引き出し、内臓を傷つけないようにし、皮を剥いで、肉のみを用いる。よく水洗いすることが肝心である(古諺にフグ一匹に水一石)。内臓は絶対に食べてはならない。また、筋肉にもまれではあるが強毒を持つことがある(ヒガンフグ)ので、量を過ごさないことが肝要である。
トラフグ
フグ科の中で最も美味であり、フグ料理の最高級魚である。また、全長70cmを越し、食用フグの中では最大となる。北海道以南東シナ海まで。
本県では最近、日本海で延縄漁法により11-12月に漁獲されるようになった。小泊を中 心に1トン前後の漁獲であるが、下関の有名なフグ市場である南風泊市場に活魚で空輸しており、キロ1万7千円の値がつく。平均4-5キロという。
200海里時代となってからは、東シナ海、 朝鮮沿岸での漁業が締め出され、天然物の漁獲は減る一方である。そこで、養殖物の生産が急増し、最近では天然物の量を上回っている。日本海では福井県まで養殖が盛んとなった。養殖物は無毒という。
平成12年には中国産養殖物が大量に日本市場に出回るようになり、国内ものの市場価格の下落が心配されている。
絵皿に花びらのようにきれいに並べられた刺身は薄く、皿の絵模様が透けて見えるという。フグチリ、フグ鍋など。冬場を除いてはあまり顧みられない。
クサフグ
浅海性が強く、子供の釣の外道でよくかかる。豆フグとも呼ばれ、最大全長15cm程にしかならない。6月の大潮の干潮時に大群で砂利の多い海岸に押し寄せて体を空中に露出させながら産卵する習性がある。卵膜には強い粘性があり石の表面に付着する。この頃、横浜では夜、明かりを持って浅所に集まったフグをヤスで突き取る漁法がある。
小さいが、頭をとって皮を剥いだものを一夜塩干して焼いたものは酒の肴になる。
地方名:コメフグ(鰺ケ沢)、スナフグ(陸奥湾)、ナシロフグ(陸奥湾)、マメフグ(後潟)

写真 クサフグ. 鰺ヶ沢町産.
15p程度の小型のフグであるが、皮をはいで一夜干したものの焼いたものはこたえられない.5〜6月の大潮の満潮時、磯海岸に集団で乗り上げて産卵することは有名.
ゴマフグ
頭が小さく、フグの中では全体にスマートである。体背面は青味がかって、小黒点が胡麻を振ったように密布する。産卵期は6月頃でこの頃、昭和50年代には横浜の定置に次種マフグと共に大量に乗ったものであるが、ここ二十年ばかり大不漁が続いている。浅い砂底に粘着卵を産出する。漁があった頃には金沢に陸送されていた。全長40cm。剥きフグとして販売される。塩焼、汁物など。
地方名:アオフグ(横浜、野辺地)、サバフグ(脇野沢、横浜)
マフグ
体は全くの無鱗であり、滑らかである。ゴマフグと共に資源は悪化したままである。全長40cm。
日本海の大戸瀬などの底建網には冬期に小型のものが乗るが、この時期のものは刺身、フグ鍋として美味である。冬場の南シナ海産の大形魚はトラフグの代用品となるという。
地方名:ナメラ(フグ)(一般)
ヒガンフグ
春彼岸の頃、産卵期を迎え最も味が良くなることから付いた名前であろう。もっともこれは九州、三崎方面のことであり、本県では産卵期は遅れて5〜6月である。皮膚は瘤状の小突起で覆われ、棘はない。目が赤い。茶褐色の地色に眼径大の黒褐色の円形斑が密布する。余り大きくならず全長30cm前後となる。
岩礁性の藻が多い所に多いがまとまってとれることは少ない。本県ではトラフグを除き最も味が良いとされる。
地方名:ショウサイ(フグ)(北金ケ沢)、トラフグ(脇野沢、陸奥湾)、目アカ(フグ)(風合瀬、牛滝)、モフグ(今別、平舘)
マンボウ科
マンボウ
全世界の温・熱帯域に分布する。体は側偏し、明瞭な尾鰭がない。体は丸く、ここから学名のMola(石臼)が出た。全長3mにもなり、背面に長い背鰭を出していたり、体を横に浮いていることがある。クラゲを食べる。本県では主に太平洋、陸奥湾などで偶に漁獲されるが市場には現れない。肉は白く柔らかい。酢味噌で食べる。
地方名:キナンポウ(脇野沢)、キナンボウ(牛滝)(何れも空骨病みの意)
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