H17年度研究成果

平成17年度研究成果 

研究テーマ
 里山林の生物多様性調査(Ⅳ)
 -トラップを使用した昆虫の調査手法について-
要  約 
 昆虫多様性調査に適したトラップの選択と、その調査方法、樹木の資源量や林相と昆虫の捕獲状況、捕獲経過との関係を明らかにするために、今回は里山のスギ人工林2林分に黒色と白色の衝突板式トラップやマレーズトラップを設置して、捕獲された甲虫目及びカミキリムシ科の科や種及び個体数を調査した。その結果、2林分で捕獲状況が異なり、衝突板トラップでは捕獲された甲虫やカミキリムシ科の種数や個体数の差が大きかった。このことには、両林分の低木層の発達の程度が影響しているものと考えられた。立木の断面積合計(BA)を樹木資源量の目安としたが、高木のBAと、これら捕獲状況との関係は明らかでなかった。また、今年度の調査結果やⅠ~Ⅲ報までの成果から、甲虫の科ごとに、各トラップの適性や使用する場合の組み合わせを明示した。

研究テーマ
 リンゴ剪定枝を利用した菌床栽培試験(Ⅰ)
 -ヒラタケ栽培試験-
要  約 
 ヒラタケ栽培におけるリンゴ剪定枝の利用可能性について検討した。リンゴ剪定枝オガクズ利用による、発生量の減少は見られず、栽培期間は短縮された。リンゴ剪定枝オガクズ利用では2mm以上の大粒粒子とそれ以下の小粒粒子による培地の比較で発生量の差は見られなかった。リンゴ剪定枝チップ利用の発生量調査では、チップ配合割合に関係なく、ブナオガクズに比較して発生量 が多かった。これらのことから、リンゴ剪定枝のきのこ栽培への利用可能性は高いと考えられる。

研究テーマ
 ホタテ貝殻粉砕物のきのこ菌床栽培への利用について
要  約 
 ホタテ貝殻粉砕物のきのこ菌床栽培への利用について検討した。ヒラタケ栽培試験では、貝殻破片の添加により培養期間の短縮や発生量の増加が見られた。マイタケ栽培試験では、ビン栽培、袋栽培ともに貝殻粉末の添加により発生量は増加したが、培養期間の長期化、発生期間のバラツキ等の弊害も見られた。シイタケ栽培試験では、貝殻粉末の添加により発生量が増加した。添加量は培地重量の1%程度が適量と考えられた。初雪たけ栽培試験では、貝殻粉末、破片ともに添加により発生量が増加した。添加量は培地重量の2%以下が適量と考えられた。これらの結果から、培養期間が長期を要する栽培方法には利用可能性が見出されるが、短期間の栽培方法においては弊害が現れやすく利用可能性は低いと考えられる。

研究テーマ
 木材乾燥技術の改善に関する乾燥試験(Ⅰ)
 -スギ芯持柱材4面溝切り加工による試験-
要  約 
 スギ芯持ち柱材4面に「溝切り幅1.6mmn溝切り深さ20mm」と「溝切り幅5.0mmn溝切り深さ10mm」の加工を施し、人工乾燥により試験を行った。人工乾燥終了後、全乾法により含水率を測定した結果、「溝切り幅1.6mmn溝切り深さ20mm」による試験体の平均含水率が11.10%、「溝切り幅5.0mmn溝切り深さ10mm」の試験体が 11.68%と前者の方が後者の試験体より0.58%ほど含水率が下回る結果となった。乾燥日数は、双方とも22日間であった。平成14年度スギ芯持ち柱材に背割り加工(幅3.0mn、深さ5.25Cm)を施し人工乾燥した結果では、乾燥日数は15日間であり溝切り加工による方法が7日ほど乾燥日数を多く要した。乾燥過程で材の収縮作用による表面割れは、「溝切り幅1.6mmn溝切り深さ20mm」の試験体27本中4箇所(4本)で総延長778mmであった。最長割れ長さ553mm、割れ幅10mmの材が1箇所あった他は0.1mmが2箇所0.2mmが1箇所という結果となった。一方「溝切り幅5.0mmn溝切り深さ10mm」の試験体28本に表面割れが発生した箇所数は、21箇所(7本)で割れ幅も大半が0.1mm~0.3mmであった。溝切り幅5.0mmの試験体ではヤング率も若干低くまた、溝の中割れが数多く出現して商品価値の低下につながることから、溝切り幅は1.6mmが効率的な手法であることが確認できた。

研究テーマ
 木材乾燥技術の改善に関する乾燥試験(Ⅱ)
 -スギ芯持柱材2・3面溝切り加工による試験-
要  約 
 スギ芯持ち柱材2・3面に、「溝切り幅1.6mm、溝切り深さ15mm」の加工を施し、人工乾燥を行った。乾燥終了後、全乾法により含水率を測定した結果、2面溝切りによる試験体の平均含水率が14.21%、3面溝切りの試験体が 13.66%と後者の方が前者の試験体より0.55%ほど含水率が下回る結果となった。乾燥日数は、双方とも22日間でり、4面溝切り加工材と同等であった。乾燥過程で材の収縮作用による表面割れは、2・3面溝切り加工とも表面割れが溝無し材面より溝部分有り材面に多く出現する傾向が見られた。動的ヤング係数は、2・3面溝切り加工材の方が、県産スギ(無加工材)の動的ヤング係数の平均値より若干ではあるが上回る結果を得た。このことから、柱の表面を一部見えがかりで使用する真壁工法の建築材として、2・3面溝切り加工材を使用出来ることが分かった。

研究テーマ
県産スギ湾曲集成材技術による屋内外製品の研究開発
要  約 
 県産スギ材をラミナとする湾曲集成材を用いて、クランプ式湾曲集成装置と従来のクラッピングマシンを改良したエアー式湾曲集成装置を活用して、製品開発に向けた試作を行った。製品・技術ともに県内本工業の実情に即したものであり、企業への技術移転の可能性が高い。
 造作用の小中断面湾曲集成材のためクランプ式湾曲集成装置を技術開発し、その装置により作った湾曲集成材を用いて屋内製品として公共用ベンチ、屋外製品としてバス待ち合い所を試作した。

                      

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