畑園試だよりNo.1

発刊にあたって
場長 吉原 雅彦
新しい年を迎え「畑園試だより」を刊行することにいたしました。これまでも発刊に向けた検討を進めてきましたが、延び延びになっていたものであります。 現在、当場の置かれている状況は、①これまでになく効率的な試験研究の推進が重要になってきていること、②県の農業施策の中で冬の農業が重要な柱となっており野菜研究への関心が高まってきていること、③その上、当場が独立した試験場として30周年を迎える節目の年であること等となっており、これらを契機に踏み切った次第であります。 まず、効率的な試験研究の推進についてでありますが、当場に予算化されている研究課題(平成13年度)は26課題でありますが、各研究員が担当している実施課題数は111課題に上っています。この結果として、本来、予算課題の持っている方向性・考え方・その重要度がかなり薄められたままで実施されているように見えます。研究テーマの趣旨に即した成果がえられるよう、また、試験研究の効率を高める観点からも、予算課題の持っている大切な精神が失われることのないよう配慮して、試験が進められるよう改善を図りたいと考えております。 次は、冬の農業の確立に係わる技術開発についてであります。本県の農業は、米・りんご・野菜・畜産とそれぞれの作目間で調和がとれているのが特色でありますが、夏場と冬場の生産のギャップが大きく、特に野菜の場合には冬場の供給がほとんど止まってしまうのが実態であり、このことが本県の食料自給率の足かせにもなっております。 こんな中にあって、冬の農業を振興することが本県の重要な課題であるとの知事の強い指示もあって、県庁内に専任の推進チームが設置されました。畑園試としても冬場が多日照という県南地域の特徴を十分に生かし、次年度以降、施設での野菜栽培の技術開発を担当できるよう検討を進めているところであります。 最後に、30周年記念行事でありますが、現在、熊谷次長をキャップとし記念誌の編集委員会でその作成準備を進めてきております。関係各位の御協力・御支援をいただきながら、節目の年を飾ることができればと考えているところであります。 ![]() 昨年の12月に、6名の専従者からなる「あおもりの冬の農業推進チーム」が県庁内に設置され、新エネルギー等の農業利用に関する基礎調査、冬の農業エキスパートの養成、及び冬の農業推進活動を行うとともに、産学官による戦略会議を設置して、冬の農業の推進方向を検討することにしております。 このような中で、畑園試としても、冬場の野菜生産が拡大されるよう、施設を利用した野菜生産のための技術開発を担当していくことになっております。もとより、農家が簡単に冬場の野菜生産に取組める現状にはない訳で、長年月にわたるねばり強い研究努力が要求されるものと考えております。 担当する研究の中では、2つの柱を立てております。それは、冬のハウスの利用技術を確立することと、適作物の選定やその栽培技術を確立することであります。 冬のハウスの利用技術を確立する中では、自然エネルギー等を利用しながら、作物栽培に必要な温度を効率よく確保する仕組みを検討していくことにしております。 また、適作物の選定とその栽培技術の確立の中では、トマト、こまつな、こねぎ、だいこん等を供試し、作型、品種、栽培法等を組合わせた技術開発に取り組み、成果を上げたいと考えております。 これ迄にない、難しいテーマに取り組むことになりますので、関係各位の御指導、御鞭捷をよろしくお願いいたします。 ![]() 栽培部 豊川 幸穂 ![]() これまで、畑園試では、にんにく・ながいも・大豆・小麦等の優良種苗(種子)を生産し、県内の農協等に供給を続けてきております。このような中にあって、輸入にんにくの拡大等が見込まれる情勢等を踏まえ、生産規模を拡大し、低コスト化により国際競争力を高めたいとの生産者サイド(経済連、農協等)からの強い要望もあって、にんにくの優良種苗供給事業(平成12年度から毎年2.Otの供給)が誕生しました。 この結果、年次計画で毎年20a(延べ6棟)ずつのパイプハウスが設置されることになりましたが、このことがその後の試験業務の推進や農場での歳入の確保にもマイナスの影響を与えることになってきました。 このため、これまでの経過や現状での問題点等を十分に理解してもらうよう打合せや検討会議を重ねながら、平成14年度から見直しを図っていくことになりました。その改善方向は次のようであります。 ①新たなにんにくの種苗供給のためのバイブハウスは設置しない。 ②にんにくに限らず、試験場の種苗供給は原則として原々種とする。 ③これまで設置したにんにくの種苗供給のためのパイプハウスは、有効利用に努める。. ![]() 作物改良部 石谷 正博 ![]() 平成13年度(4月1日付け)の機構改革により、畑作園芸試験場の病虫肥料部と南部地域病害虫防除所が統合し、病害虫防除室が設置された。 この統合は、①研究と防除指導の一体化による現場指導のレベルアップ②試験研究成果の現場への迅速な普及と農業者二一ズの試験研究への反映③試験場の高度な機器の活用による専門的な病害虫診断を実施するなど、気象の変化や時代の動きに対応した高度な防除指導の実施を目的としたものであります。 設置された当室の分掌事務は、旧南部地域病虫害防除所の分掌事務と旧病虫肥料部の分掌事務を合わせたもので、統合により特に新たな事務やその内容の変更となった事務はありません。 すなわち、旧南部地域病害虫防除所の所掌事務であり、植物防疫法第32条に規定されている以下の事務が新しく試験場の分掌事務となりました。 ①植物の検疫に関すること。 ②農作物についての有害動物及び有害植物の防除についての企画に関すること。 ③市町村、農業者又はその組織する団体が行う農作物についての有害動物及び有害植物の防除に対する指導及び協力に関すること。 ④農作物についての有害動物又は有害植物による損害の発生予察事業に関すること。 ⑤農作物についての有害動物及び有害植物の防除に必要な薬剤及び器具の保管並びに当該器具の修理に関すること。 ⑥その他農作物についての有害動物及び有害植物の防除に関すること。 これら事務については条例により所管区域が定められ、三八・上十三及び下北地域が対象地域であります。また、これら事務は病害虫防除室長の専決事項とされております。さらに、畑作園芸試験場の試験対象作物は畑作物及び野菜であるが、植物防疫法に基づく上記事務については畑作物・野菜・水稲及び果樹など全農作物が対象となっております。 このような結果として当室は、研究から行政事務(病害虫防除の技術開発から防除指導、土壌管理や施肥改善試験)を分掌しており、研究職員4名と行政職員5名(室長含む)が配置されております。 ![]() 病害虫防除室 鎌倉 二郎 ![]()
![]() 当場が畑作園芸試験場として昭和47年に設立されて以来、早いもので30周年目の年を迎えることになりました。これを契機に「畑園試だより」を発行することになりました。当場の研究成果や活動状況等を紹介してまいりますが、今後ともご愛読・ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。 |