畑園試だよりNo.10



 
 

平成17年度主要成果(冬作物関係)

 平成17年度前期試験成績・設計検討会が8月25日(木)、26日(金)の2日間開催されました。
 農協、県関係機関などから51名が出席し、麦類、にんにくなど冬作物関係を中心に57課題(試験 成績25課題、試験設計32課題)について検討しました。
 ここでは、完了課題の中から2課題について成績の概要について紹介します。

冬期加温施設栽培における葉根菜類の収量性

 太陽光エネルギーを利用して発電し、その電力を利用して沸かした温湯を熱源としてパワーヒートパイプによって加温し暖房する施設栽培において、こまつな、こかぶ等の葉根菜類を11~2月の4作期に、は種したところ、生育、収量、収穫までに要する日数及び積算温度等が明らかになったので紹介します。

1 こまつな
  は種後39~57日(積算温度470~620℃)で収穫期に達し、収量は180~240kg/a程度となります。 冬期間に同一ほ場で3回作付できます。

2 こねぎ
  は種後90~136日(積算温度1,300~1,600℃)で収穫期に達し、収量は550~900kg/a程度となります。

3 こかぶ
  は種後55~82日(積算温度650~930℃)で収穫期に達し、収量は510~580kg/a程度となります。 冬期間に同一ほ場で2回作付できます。

4 だいこん
  は種後71~115日(積算温度1,000~1,400℃)で収穫期に達し、収量は900~950kg/a程度となります。

 



写真 葉根菜類の栽培状況
 

 (栽培部 岩瀬研究管理員)



小麦品種「ネバリゴシ」に発生した不稔症状の原因解明

 平成13年に県南地方の現地ほ場において、平成12年に奨励品種に採用されためん用小麦「ネバリゴシ」に不稔症状が発生しました。不稔症状は、それまで県南地方で栽培されてきた「キタカミコムギ」ではみられませんでした。
 県南地方の土壌は火山性の黒ぼく土壌であることから銅欠乏の可能性が高いことが考えられ、平成15~17年度の3か年間その検証を行い、次のような結果が得られました。
 一般的に、小麦は土壌中の0.1N塩酸可溶性銅が0.5ppm以上では、欠乏による不稔症状が発生しないことが明らかになっています。試験の結果、可溶性銅が0.8ppm~0.9ppmのほ場では欠乏による不稔症状が発生せず、0.2ppmのほ場では発生することを確認しました。また、平成17年度に可溶性銅が0.2ppmのほ場において、土壌に銅施用を実施し銅含量の矯正を行うことによって、不稔症状が回避されることを確認しました。
 ネバリゴシに発生した不稔症状は銅欠乏によるもであり、可溶性銅が0.8ppm以下で不稔症状の発生が懸念されることを明らかにしました。

 

小麦の不稔症状
(可溶性銅0.2ppmの土壌)
図 ネバリゴシへの銅施用効果
(中央部分)
 

 (病害虫防除室 細田主任研究員)


平成17年度 冬作物関係試験研究課題
 
課   題 細  目  課  題 研究期間
自然エネルギーを活用した冬の農業確立のための技術開発 1.太陽光エネルギーを活用したハウス利用技術の確立
2.冬期寒冷多日照地域に適した作物の導入と栽培 技術の確立
3.いちご芽枯れ症状の回避技術の確立
平14~18

平14~18

平14~18
寒冷地におけるいちごの周年供給システムの確立 1.やませ気象地域における夏秋どり新作型の開発 平15~19
畑作・野菜の栽培試験 1.畑作物・野菜の作況試験
2.にんにく萌芽抑制技術確立試験
 (1)りん片の芽の伸長推移
  (2)長期貯蔵後の高温処理に対するにんにくの耐性
 (3)長期貯蔵後の高温処理による障害発生時期
 (4)収穫時期と芽の伸長
昭59~
平17~19
平17~19
平17~19

平17

平17
にんにく病害虫抵抗性品種育成技術の開発 1.新品種開発に向けた育種素材の探索
 (1)主要病害虫抵抗性品種の探索
 (2)交配育種のための花芽形成等を誘導する環境要因の解明
2.品種識別法の確立
 (1)生産地識別技術の開発
 (2)品種・系統識別技術の開発
平17~20

平17~20

平17~20
平17~20
平17~20
野菜の特性検定試験 1.いちごの耐病性検定 平17~19
新用途小麦・大豆品種の高品質多収栽培技術の確立 1.新用途小麦の高品質多収栽培技術の検討
2.現地実証試験
平16~17
平16~17
畑作物・野菜の優良品種の選定 1.主要農作物奨励品種決定調査
(1)小麦奨励品種決定調査
(2)なたね奨励品種決定調査
平11~18
平11~18
平11~18
系統適応性検定試験 1.麦類系統適応性検定試験 昭29~
なたね育種試験 1.なたね初期世代系統選抜試験 昭37~


 

平成17年度東北地域野菜研究会・ 地域農業確立総合研究 「寒冷地におけるイチゴの周年供給システムの 確立」現地検討会開催
 7月21日に、東北各県の試験研究者等が三沢市に集まり、平成17年度東北地域野菜研究会が開催されました。また、7月22日の午前には同研究会、並びに地域農業確立総合研究「寒冷地におけるイチゴの周年供給システムの確立」現地検討会の共催による現地視察が行われ、さらに、同日の午後には「寒冷地におけるイチゴの周年供給システムの確立」現地検討会が、八戸市で開催されました。
 
東北地域野菜研究会(三沢市つたや会館)
現地視察
(畑作園芸試験場いちご栽培ハウス)
地域農業確立総合研究「寒冷地におけるイチゴの周年供給システムの確立」現地検討会(八戸市公会堂)


農産祭り2005
 当場とふるさと食品研究センター農産物加工指導センター共催の「農産祭り2005」が、平成17年9月8(木)~9日(金)に開催されました。
 試験ほ場・施設の公開、研究成果の紹介、畑作・野菜の相談、加工品の実演・試食などが行われました。また、併催行事として、にんにくパワーアップ共進会、野菜作機械実演会も開催されました。
 初日は台風14号の影響もありましたが、2日間で約1,300名の来場者でにぎわいました。
 
○研究成果展示コーナー
 夏秋どりいちごの作型開発、にんに くの萌芽・発根抑制技術、えだまめ毛豆シリーズの栽培法など、19の研究成果を紹介しました。
○畑作物・野菜栽培の相談所
 にんにく、トマトなどの栽培管理、土づくり、病害虫防除などについての相談が多 くよせられました。
○小学校児童の視察
農林水産業・食文化体験学習モデル校(上北地方農林水産事務所)である三沢市立岡三沢小学校の5年生約130名が畑や各催事場を見学し、畑作物・野菜の生産、流通、加工について学びました。
左:ながいも試験ほ場  右:にんにくパワーアップ共進会場
○にんにくパワーアップ共進会
にんにくの主産地である三戸、上北地方農林水産事務所管内から90点の出品がありました。
主催:上北地方野菜広域営農団地推進協議会、三八地区農協青果物集出荷推進協議会
 
○農産加工グループによる食堂
「地鶏シャモロック」を使った手打ちそば、とりめしなどが好評でした。

農業体験学習

 9月2日、三沢市内のいちい幼稚園(137名)・春日台保育園(63名)の園児と六戸町立大曲小学校(1~6年:135名)の児童が当試験場を訪れ、5月に植え付けをしたじゃがいも(キタアカリ)の収穫を体験しました。朝から空模様が思わしくなく心配されましたが、体験開始の10時半頃には青空が戻り、正午までの学習を無事終えることができました。
 
いちい幼稚園・春日台保育園 大曲小学校
 

畑園試の主要行事

○これまで(4~9月)の主要行事
期 日 行  事  名 場 所 出席者
17, 4,19 平成17年度地域農業確立総合研究「寒冷地におけるイチゴの周年供給システムの確立」現地推進会議 八戸市 大学、東北農研、JA八戸広域、担当農家、県関係機関
17, 5, 2 農作業体験学習(大曲小学校、春日台保育園、いちい幼稚園) 場内 児童など
17, 5,17 第1回研究開発評価内部委員会(事後評価) 場内 関係委員
17, 7,19~ 8, 5 新任普及指導員専門技術向上研修(第1期) 場内 普及指導員
17, 7,21~22 平成17年度東北地域野菜研究会 三沢市、六戸町、八戸市 大学、東北農政局、東北農研、東北各県研究機関など
17, 7,22 平成17年度地域農業確立総合研究「寒冷地におけるイチゴの周年供給システムの確立」現地推進会議(東北地域) 三沢市、八戸市 大学、東北農政局、東北農研、東北各県研究機関など
17, 8,17 第2回研究開発評価内部委員会(事前評価) 場内 関係委員
17, 8,22~ 9, 9 新任普及指導員専門技術向上研修(第2期) 場内 普及指導員
17, 8,25~26 平成17年度前期成績・設計検討会 場内 全農青森、農協、県関係機関など
17, 8,26 平成18年度指導奨励事項等候補事項検討会(冬作物等) 場内 県関係機関
17, 9, 2 農作業体験学習(大曲小学校、春日台保育園、いちい幼稚園) 場内 児童など
17, 9, 8~ 9 平成17年度農産祭り 場内 生産農家、一般消費者、JAなど
17, 9,13~16 青森県農業大学校園芸学(野菜)演習 場内 農業大学校専攻科2年

○今後(10~3月)の主要行事予定
期 日 行  事  名 場所
17,11,17 平成18年度農薬関係資料候補検討会 場内
17,12,19~20 平成17年度後期試験成績検討会 場内
17,12,16 平成18年度指導奨励事項等候補事項検討会(夏作物等) 場内
18, 2,22 平成17年度試験研究成果発表会 場内
18, 3, 8~ 9 平成18年度試験設計検討会 場内
※都合により、変更する場合があります。
 
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