畑園試だよりNo.12

多様な遺伝形質が生きる農業
場長 肥口一雄 フラワーセンター21あおもりから畑作園芸試験場への配置換えにより4月から着任しました。古巣の職場ですが、活気に満ちた職員や笑顔で働く農場員とともに県農業の柱となった畑作野菜を支える研究に取り組んでまいります。 地上に農耕が始まって数千年。この間人類は試行錯誤を繰り返しながら、豊かな生活を目指して智恵と工夫をこらし一歩ずつ進化の道を歩んできました。日本各地にはその土地土地に適合したことばや住まい方があるように、気候や土壌条件に適合した作物や野菜が定着し、その土地独特の風味豊かな料理を創り出し、青森県でも津軽や南部の旬の材料や保存技術を活かした情緒あふれる文化が醸成されました。累々とした年月で培ったこれらの文化も、戦後の食糧難を乗り越え高度に経済を成長させるために全国画一化の荒波に一挙に洗われました。大量生産・大量消費のかけ声のもとに、規格品が洪水のように生み出されたのです。低価格を追求する一方で、日本人が同じものを食べ、同じものを着、同じ住み方をして国産ものをしいたげ、安易に海外品に依存する生活はがけっぷちの傾いた家と同じです。 安全安心な食べ物を求める消費者のため農薬や化学肥料を減らす努力がなされ、最近やっと失われた味覚や色彩を求めて地場産品の地場消費が広がりをみせてきました。多様な遺伝形質が豊かに存在する世界が活力ある将来を創ります。 行政改革の中で予算縮小・人員削減がすすめられますが、成果を短期間にどしどし生み出す努力をしながらも、国土をきちんと守り、次世代の人類が情味豊かな生活が送れるよう、将来を見据えた育種や栽培法を研究して農業の土台をしっかりしたものにしていきたいと思っています。
本県のながいもはA品率、単収とも低下し、「日本一のながいも産地」を維持できなくなる恐れが出ています。平成16~17年度に「ながいも産地再生のための高品質栽培技術の確立」試験を実施し、種子の種類、植付時期、追肥方法と収量、品質の関係について検討しました。しかし、年次変動の確認、栽培法が内部品質に及ぼす影響などの課題も残されたことから、引き続いて、これらの課題の解決に向けて取り組むものです。 ![]() 前号(「畑園試だより」第11号)に引き続き、平成17年度の主要成果について紹介します。 青森県で栽培可能な新形質ばれいしょの特性 本県のばれいしょ品種は大部分が「メークイン」となっています。 しかし、最近は消費動向の多様化・他との差別化から外観(皮色、肉色)に特徴のある変わり種品種を作付・販売している事例も見られます。 また、本県では平成15年にばれいしょの重要害虫「ジャガイモシストセンチュウ」の発生が確認され、被害拡大が懸念されています。対策の一つに抵抗性品種作付がありますが、これら変わり種品種・抵抗性品種の本県での栽培特性はほとんど把握されていません。 このため、畑作園芸試験場において、これらの品種について延べ17品種の栽培特性を調査した中で有望と思われる品種について特性を紹介します。 1.インカのめざめ(変わり種品種) M~Sサイズ中心で、収量性は「メークイン」より劣りますが、鮮やかな肉色(濃黄)が特徴的です。芽の動きが早いので通常の収穫時期(茎葉黄変期)より早めに収穫する必要があります。また、サイズが大きくなると中心空洞が増えるので多肥・疎植栽培は厳禁です。 2.花標津(抵抗性品種) Mサイズ中心で、収量性は「メークイン」とほぼ同等です。この品種はシストセンチュウ抵抗性の他、疫病抵抗性も持っており疫病無防除でもほとんど疫病が発生しません。茎葉枯凋期は「メークイン」より遅めですが、生育終期の茎葉二次生長発生が多いので、それ以前に収穫する必要があります。 3.上記両品種とも肉質は「メークイン」、「男爵薯」の中間で、食味は「メークイン」等に比べ同等~やや劣るとなっています。
(作物改良部 技師 古川尊仁)
青森県南地域におけるながいもの特別栽培 当場では、化学合成農薬・化学肥料を削減した野菜の栽培試験に取り組んでいます。 本県特産のながいもについて、青森県特別栽培農産物認証制度に準拠して農薬の使用回数と化学肥料の使用量を慣行栽培の5割に削減した栽培法を検討した結果、収量・品質とも同等に生産できることが明らかとなりました。なお、本試験は2年子頂芽切除種子を使用し、5月下旬に植え付けした結果です。また、県南地域での結果であり、利用対象地域は県南地域に限定されます。 1.施肥方法(10a当たりの化学肥料による窒素施肥量:21kgを10.5kgに削減) 基肥+追肥体系とし、基肥には肥効が速い有機質肥料を、追肥には化学肥料を使用します。基肥の窒素量は10.5kg/10aとし、植え付け時に植え溝の脇に施用、覆土します。追肥は1回当たり3.5kg/10aを7~10日間隔で3回行います。 2.防除方法(総使用回数:慣行の16回を7~8回に削減) (1)植え付け後の腐敗防止、土壌病害防除のため種子消毒は必ず行います(成分が2種類のため使用回数は2回となる)。また、種芋は、植え付け後の腐敗が少ない年子種子を使用します。 (2)害虫の防除:萌芽後のつるの伸長時(7月上~中旬)にナガイモコガ、アブラムシ類を1回防除します(使用回数1回)。その後、生育期の食葉性害虫の発生に応じて、1回防除します(使用回数1回)。 (3)病害の防除:8月上旬から7~10日間隔で2~3回、炭そ病、葉渋病を防除します(使用回数2~3回)。 1回のみでは防除が難しく、お盆前、お盆明けの最低2回の防除が必要です。 (4)雑草の防除:植え付け後除草剤(土壌処理剤)を1回散布し、初期の雑草を防除します。中耕・培土後は、手取り除草を行います(2~3回程度)。
(栽培部 技師 木村一哉)
![]() 1、退職者 (平成18年3月31日)
2、転出者 (平成18年3月31日)
3、転入者 (平成18年4月1日)
![]() ![]() 平成18年2月22日に場内会議室において、平成17年度農林総合研究センター畑作園芸試験場研究成果発表会を開催しました。 県内の市町村、農業関係機関・団体・メーカ、農業者など約50名の参加があり、下記成果の発表と意見交換を行いました。 発表課題・発表者
------------------------------------------------- ![]() 平成18年2月17日に、当場研究職員を中心とした「にんにく萌芽抑制研究グループ」が農林水産部長賞を受賞しました。 平成14年4月に、にんにくの萌芽抑制剤の販売が中止となったことから、県では「青森県産にんにく品質確保研究推進プロジェクトチーム」を立ち上げ、周年出荷に向けた 対応を進めてきました。このチームの中に「にんにく萌芽抑制研究グループ」が組織さ れ、薬剤によらない萌芽抑制技術の確立に取り組みました。この結果、①温度制御、② 低温貯蔵及び③低温貯蔵と乾熱処理の組み合せによる萌芽抑制技術を開発し、普及に移 しました。現場では農協を中心に低温貯蔵施設、乾熱処理施設が導入され、開発した技 術が活用されることにより、周年供給体制が維持されました。 今回は、この功績が認められたものです。
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