畑園試だよりNo.17


<掲載記事>
○平成19年度主要成果(夏作関係)
 ・四季成り性イチゴ品種「なつあかり」の夏秋どり栽培
 ・被覆資材を組み合わせたエダマメ「あおもり福丸」のトンネル栽培
○トピックス
 ・ナガイモ優良種苗(原原種むかご)の新網室完成!
 ・各種検討会の開催
 ・冬場の農場管理
○平成19年度主要行事


平成19年度主要成果(夏作関係)

 12月18~19日に平成19年度試験成績検討会を開催しました。検討された中から、主な成果について紹介します。

四季成り性イチゴ品種「なつあかり」の夏秋どり技術
  
 新たに開発された四季成り性品種「なつあかり」の夏秋どり栽培において、苗の種類、育苗方法、定植時期の違いが収量、品質等に及ぼす影響について検討し、これまでに次のことが明らかになったので紹介します。

 1.夏秋どり栽培において、「なつあかり」は商品果収量が多く、食味が良好で、比較的果実が硬く、品質が安定します。
 2.夏秋どりには越年苗の4月定植が、当年苗の6月定植よりも商品果収量が多く有利です。
 3.越年苗の採苗時期は8月下旬~9月中旬が最も適し、10月上旬採苗のものでも十分使えます。
 4 露地の親株圃において、「なつあかり」は株当たり10本程度の1次ランナーを発生します。この1次ランナーを12cm径ポリポット上で受け、活着後に切り離し、雨よけハウスで引き続き受けポット採苗することで大量の越年苗が確保できます。


 

図3 なつあかりの果実





被覆資材を組み合わせたエダマメ「あおもり福丸」のトンネル栽培
  
   当場がエダマメ在来種から育成した「あおもり福丸」は、良食味のエダマメとして県内各地で栽培されています。この品種は着莢数が少ない特性があり、収穫時期の早い作型では生育期が低温に遭遇しやすいため、この現象が顕著に現れ極端な低収となる場合があります。
 これを改善する方法として不織布を用いたトンネル栽培が行われています。不織布トンネルは換気作業が不要である反面、昇温効果は従来の農ポリトンネルに比べ劣ります。
  そこで、これらの被覆資材を組み合わせた栽培方法について検討したので結果を紹介します。試験は、5月上旬直播栽培作型で行いました。

1.トンネル被覆の効果
 (1)「不織布+農ポリ」トンネルでは、「被覆なし」に比べ5~8℃、「不織布」トンネルに比べ2~3℃の昇温効果がありました。
 (2)aあたり上物収量は、「被覆なし」に比べ多収年では1.5倍、低収年では約6倍に増加しました。
 (3)aあたり上物収量は、「不織布」トンネルに比べ多収年では同等、低収年は1.6倍に増加しました。

2.トンネル被覆の方法
(1)トンネル断面図 (2)トンネル上面図(農ポリ換気孔配置)

3.被覆方法の違いと収量

 



ナガイモ優良種苗(原原種むかご) の新網室完成!
 
 ナガイモ販売単価の低落に対応するため、県は関係機関と連携し平成19年3月に「あおもりながいも産地再生戦略」を策定しました。戦略には「優良種苗の安定供給」が生産対策の重点施策の一つとして位置づけられました。
 これを受けて、ナガイモ優良種苗(原原種むかご)を安定的に供給するため、畑作園芸試験場内に鉄骨硬質プラスチック網室を建設することとなったもので、平成20年1月末に完成しました。これにより、生産現場へのナガイモ優良種苗供給量はこれまでの約90kgから190kg(平成20年度より)へと拡大可能になります。
 
建設に当たっては、国の補助事業が利用されました。 網室の外観1
網室の外観2 網室の内部
土壌改良等を行い、栽培が開始されます。


各種検討会の開催
 

 

○平成20年度農薬関係資料候補事項検討会(平成19年11月15日)
 新しく開発された農薬は、公立の試験研究機関等で効果、薬害などの実用性を検討し、その後安全性等について国の審査を経て農薬登録されます。
 当場では本県で栽培される品目を中心に殺菌剤、殺虫剤、除草剤などの実用性を検討しています。本検討会は、当場で実用性を認めた農薬について登録された段階で「農作物病害虫防除指針(青森県農作物病害虫防除指針編成会議編)」等に反映するため、毎年11月中旬に開催しています。
 本年は、県庁関係課、地域県民局普及指導室、農林総合研究センターの参集を得て11月15日に開催し、殺虫剤4剤、除草剤5剤を採用しました。

○平成19年度後期試験成績検討会(平成19年12月18~19日)
 野菜、畑作物は作期や作型の関係で春夏作と秋冬作に分かれます。このため、当場ではこれらの収穫に合わせて8月に前期成績検討会(秋冬作関係)、12月に後期試験成績検討会(秋冬作関係)を実施しています。
 後期検討会は、12月18~19日に開催し、94課題の成績を検討しました。八戸市農業交流研修センター、県庁関係課、地域県民局普及指導室、農林総合研究センターなどから貴重なご意見等をいただきました。

○平成20年度指導奨励事項・指導参考資料候補事項検討会(平成19年1月19日)
 後期検討会終了後、普及に移す技術情報として指導奨励事項候補1事項(栽培部)、指導参考資料候補1事項(作物改良部)について検討し、いずれも候補として提案することになりました。


冬場の農場管理
 当場の農場は農場管理委員会が中心となって管理、運営されています。春から秋にかけては露地栽培圃場の管理作業がメインとなりますが、冬期間も施設を利用した野菜栽培の管理のほか、春先からの安全で円滑な作業に向けた準備に追われています。忙しい作業の中から、いくつかを紹介します。
 
○農業機械の点検・整備
 農業機械については、大がかりな修理は別として自前でできる点検・整備は農場を担当する職員が行います。また、農具の手入れも行います。

 
今では珍しくなった自走式トレンチャーのチェーン爪の交換(ナガイモウイルス フリー種苗生産網室の植え溝掘りなどで 活躍しています) ロータリ爪の交換
ロータリの爪は2年程度でこんなに
 磨り減ります
新しい爪に交換し、春からまたフル稼働 です
トレーラの整備
 外枠の傷みがひどく、部材を交換
新しくなったトレーラ
 
ペンキを塗り新しくなったバケット
冬期間は除雪にも活躍します
 

○圃場ラベル・説明看板の整備
 試験圃場には、研究の内容を記載した説明看板と試験区を区別するラベルを立てます。回収したラベル、看板は洗浄、乾燥後、冬の間に白いペンキを塗り再利用します。
ラベルのペンキ塗り。 約1,000枚を塗り直します

○除雪作業
県南地域は津軽地域に比べると雪が少ないですが、時として大雪に見舞われます。ハウスなど栽培施設の崩壊を防ぐため、除雪が行われます。
平成20年2月13~14日の大雪の際には大型機械による除雪も行われました(庁舎前駐車場)。

○主要農作物の種子選別
 当場では、ナガイモ、ニンニクなど特産野菜のウイルスフリーの供給事業の他に大豆、小麦など主要農作物の種子の供給事業を行っています。純度を維持するため、種子についても徹底した選別を行っています。
大豆の原原種子の選別

おまけ
○独特の農具1(ひっかき棒?) ○独特の農具2(ながいも用スコップ)
マルチの下に発生した雑草を除草する道具で、野菜株元のマルチ孔(穴)から差し込み、雑草を引き出します。マルチを破損せずに除草できる優れものです。 ナガイモ掘り取り用で、一般のスコップに比べて細長いのが特徴です。
左:剣スコップ
中央・右:ながいも用スコップ
 
○鏡餅
ミカンや橙が一般的ですが、当場では本県野菜の一層の飛躍を願いを込め特産のニンニクを載せています。色彩的には寂しい感も。


平成19年度主要行事
後半(10~3月)の主要行事
期 日     行   事   名 開催場所 参 加 者
19,11,15 平成20年度農薬関係資料候補事項検討会 場内 県庁関係課・機関
19,12,18~19 平成19年度後期試験成績検討会 場内 関係農協、県庁関係課・機関など
19,12,19 平成20年度指導奨励事項・参考資料等候補事項検討会 場内 県庁関係課・機関
20,2,22 平成19年度試験研究成果発表会 場内 市町村、農協、メーカ、県庁関係課・機関など
20,3,4~5(予定) 平成20年度試験設計検討会(春夏作等) 場内 県庁関係課・機関

 
 
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