畑園試だよりNo.2






新年度の抱負

場長  吉原 雅彦

 新年度を迎え新しいスタッフが揃う中で重点施策である冬の農業確立に向けた野菜生産を推進するための技術開発を進めていくことになりました。この業務の推進に当たっては、県の行財政が大変厳しい状況の中にあるものの、特段の措置を講じて頂くことができたのではないかと受止めております。
 こんな状況下にあるため、14年度の場運営に当たっては、

 1.考え方や方向性を重視した上での研究課題の整理
 2.勘所を押さえた試験研究(業務)の推進
 3.試験研究とこれを支える耕作分野との連携強化

を重点に、より一層の試験研究の効率化に努めて参りたいと考えております。
 まず、研究課題の整理についてでありますが、平成14年度に予算化された事業数は23課題(前年度26課題)でありますが、これを受け研究員個々が担当する実施課題の数では52課題(前年度111課題)になっております。このように今年度は、これまでに比べて実施課題数が大幅に減少していることが大きな特徴になっております。これまでは、どちらかというとほ場試験のやり易さを優先させてきたようでありますが、研究テーマの持っている考え方や方向性をより重視する中で、予算課題そのものに直接応えることができるように試験研究を進めるべきだとの観点から検討・工夫を重ねてきた結果であります。また、このことが本当に実効があがるよう今後ともその進行管理に努めたいと考えております。
 次は、勘所を押さえた試験研究の推進についてでありますが、一般に試験テーマは3~5年を一区切りの年限としておりますが、これら全体にやみくもに全力投球するのではなく研究テーマの持っている特徴や性格、そして、実施年次の違い等に着目しながら、それぞれの試験研究テーマのその時点その時点でのポイントを明らかにし、その個所に重点的に力を入れることにより、全体としてメリハリの付いた取組みとなるようにしたいものだと考えております。
 最後に試験研究とこれを支える耕作分野との連携強化についてでありますが、最近のように研究者が大幅に若返っている中にあって、作物生産に係る研究員個々の力量だけに頼っているだけではどうしても不十分であります。幸い試験場の中には、農場を担当し豊富な経験と技能とを持ち合わせている技能技師等がおりますので、・これらの方々の力量を結集し、立派な作物生産の上に立って試験研究を進めうるようにすべきではないかと考え、協力を得た取り組みを進めることにしております。


冬の農業確立を目指して
 現在、県では冬場の収入の確保と就労の機会の拡大等をねらい、「冬の農業」の確立を重要施策として取りあげています。この一環として、畑園試では今年度から5カ年間にわたり、「自然エネルギーを活用した冬の農業確立のための技術開発」という研究テーマに取り組むことになりました。
 この研究では、県南地域が冬場に日照時間が多いという地域性に着目し、太陽光で発電した電力でハウス内を暖房し、だいこん、こかぶ、こまつななどの葉・根菜類やトマトの11~3月の生産技術の開発を目指しています。これまで、葉・根菜類の無加温栽培については、すでに検討を進め、その栽培法の確立に努めてきましたが、今回この研究では加温することによって、葉・根菜類では生育期間を短縮させて収穫回数を多くすること、低温条件下で栽培しづらいトマトの場合には高品質な生産技術を確立することが目標になっております。これら新鮮な野菜を冬期間地場で生産・消費することによって、直売・農産加工の取り組み等の地域活性化にも大きく貢献できるのではないかと考えています。
 このような冬期間の施設栽培の取り組みでは、暖房費の節減のための効率的な加温や保温技術を確立することも重要な課題となっております。しかし、畑園試は、作物の栽培についての試験は長年培ってきましたが、ハウス内の熱を有効に利用する技術についてはその実績がないのが実情であります。このため、熱伝導の研究に取り組んでいる八戸工大や、農業用被覆資材の開発、製造のノウハウをもつみかど化工(株)等とも協力しあって、効率よく研究を進めることができればと考えております。
 一方、このような試験研究の推進にあたっては、研究全体のマネージメントをはじめ、試験研究の進行管理等の面で新たな対応も求められ、このための体制やルールづくりも併行させる必要があるのではないかと考えております。
 最後に、近々太陽光発電装置や硬質フィルムハウスが建設され本格的な研究が開始されることになっておりますので、多くの方々からご指導・助言をいただければ幸いであります。

栽培部  豊川 幸穂



えだまめの産地づくりへの取リ組み

 青森県には古くから「毛豆」とよばれ、えだまめとして食べられてきたとてもおいしい在来種がありました。しかしながら、この毛豆は晩生種のため、えだまめとして収穫できる時期が9月下旬になってしまい、ビールの消費量が多い夏場に収穫できないのが難点でした。
 こんな状況を踏まえ、この「毛豆」に放射線を照射し、突然変異を起こすことによって、毛豆の味はそのままに、収穫時期の早い品種を育成しようと試みました。その結果「あおもり豊丸」と「あおもり福丸」とを誕生(平成13年に品種登録)させることができました。現在、この2品種を使い、えだまめのミニ産地づくりに取り組んでおります。
 この中では、えだまめをできるだけ長く出荷(7月下旬から9月下旬)できるように品種と作型を組合わせながら上手に販売して行く方法を検討しております。連続出荷するための栽培法については、トンネル・マルチがけを行う早どり栽培と普通栽培との組合わせとこの組み合わせを2品種で繰り返すことにより、7月下旬~9月下旬までの連続出荷が実現されることになりました。
 一方、このような取り組みをしているえだまめの評価はどうでしょうか?、この意向を確認するためのアンケート調査を行ってみました。その結果、①試食した感想は270名前後のモニターのうち、「すごくおいしい」あるいは「おいしい」とした人が90%。②さやの色が茶色なのですが、見た目の感想については「特徴があって良い」が35%、「気にならない」が56%、合わせて90%の方が評価してくれ、消費者には茶色の毛に対する抵抗感が小さいことが解りました。③試食してみて、知人に奨めたいと思うかについては「奨めてみようと思う」が85%を占め大変高い評価を得ることができました。これらアンケートの結果からこの2品種については県内外からの評価が高く、産地化を図っていくことができると確信しております。
 本年度は、試験場でも栽培面積を拡大し対応するほか、横浜町、十和田湖町、石川地区(弘前市)の現地でも、これまで以上の成果を上げるべく積極的な取り組みを奨めていくことになっております。

スーパーで好評を博した「あおもり福丸」(横浜町産)

作物改良部  石谷 正博



畑作物・野菜に及ぼす障害の実態

 病害虫防除室には、農作物が病害虫に侵されたのではないかという診断依頼が持ち込まれます。担当者は依頼者に対して診断結果を回答すると同時に、その結果を作物別・障害の種類別にデータベース化して、その時々の発生情報としてとりまとめをする中で、情報等の提供に努めております。
 ◎病害虫の診断調査結果
 平成13年度における診断・問い合わせ等の依頼総数は238件であり、その内訳は、診断依頼145件、防除法などの間い合わせ78件、実態調査11件、情報提供4件でした。作目別の依頼件数では、畑作物・野菜が197件で全体の82%と圧倒的に多く、その他では水稲、果樹、花、飼料作物、家屋衛生関連などがありました。また病害虫など原因別件数では、病害が118件と全体の50%を占め、虫害が13%、生理障害が16%であり、その他には貯蔵障害、野鼠、衛生害虫などがあり、また防除指導に関する問い合わせもありました。作目別ではにんにく、トマト、ながいもが全体の半数以上を占めておりました。にんにくではイモクサレセンチュウまたは類似障害の診断に係わる依頼が20件と半数を占めており、トマトでは萎凋病・かいよう病など土壌病害関係の依頼が多いのが特徴的でした。特に平成13年度はナガイモ炭ぞ病に係わる診断依頼が7件と例年に比べて多かったので、その発生概況や多発生要因について、以下に述べます。
 ◎最近発生が目立っているナガイモ炭ぞ病
 平成13年は各地において発生し、平成3年以来の多発生となりました。13年は7月中旬に高温多湿の気象条件に見舞われたこともあって、菌の感染に好適であったことと、2~3年前から発生が増加傾向にあったため、菌密度が上昇していたことが重なって、発生時期が例年より早まったと考えられます。一方、初発生の時期に本病を防除した圃場は少なかったこともあって、蔓延期である8月下旬以降に防除を始めた畑では防除効果があがらなかったのではないかと考えられます。
 今後は発生のごく初期の段階から、定期的に薬剤散布に努める必要があると考えております。
ナガイモ炭ぞ病の症状

病害虫防除室  桑田 博隆



人のうごき

1.退職者(平成14年3月31日)
職名 氏名
研究調整監 大場貞信
病害虫防除室長 鎌倉二郎
主事 遠藤妙子
技能技師 沼岡満男

2.転出者(平成14年4月1日)
職名 氏名 転出先
主事 常田恵 自然保護課主事

3.転入者(平成14年4月1日)
職名 氏名 旧所属
病害虫防除室長 藤村建彦 フラワーセンター21あおもり
(総括研究管理員生産技術部長事務取扱)
主査 鳥谷部京子 内水面試験場主査
主事 田口功 十和田出納事務所主事
技師 木村一哉 農産園芸課技師
技師 福士直美 新採用
技能技師 沼岡満男 再任用

4.昇任・昇格者(平成14年4月1日)
職名 氏名 旧職名
研究調整監栽培部長事務取扱 豊川幸穂 総括研究管理員栽培部長事務取扱
総括研究管理員作物改良部長事務取扱 石谷正博 作物改良部長
研究管理員 岩瀬利己 総括主任研究員
研究管理員 庭田英子 総括主任研究員
総括主任研究員 柳野利哉 主任研究員
主任研究員 西舘勝富 技師
主任研究員 松田正利 技師



 試験場では、近隣の小学校や幼稚園・保育園が実施している農作業の体験学習に協力してきております。今年も4月24日、六戸町大曲小学校の全校児童152名がジャガイモの植付け作業を実施しました。1年生から6年生が全員で植付けした後、6年生のお姉さんお兄さんが、「きちんと植えられているか」を点検しました。これからは草取りなど管理をしっかり行って、夏休みが終わったら収穫しようと確認し合いました。
 青森県の自然や気象と作物との関わりを知り、命ある作物を育てる農作業を通じて郷士の自然や食物・食材への関心が高まっていくことを期待しています。
石谷部長から説明を受ける小学生



 今回は、各部(室)の近況を中心に紹介することにしました。新年度を迎え、新しい体制のもとでスタートしましたが、「冬の農業」など難しいテーマにも本格的に取り組んでいくことになります。皆様のご支援・ご指導をよろしくお願いします。
 
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