畑園試だよりNo.5






冬の農業・夏の農業

場長  寺田 吉廣


 本年4月に新場長として、試験研究のレクを受けた中で「冬の農業」の課題がありました。この「冬の農業」については、農業試験場在任中に、農林水産部内にプロジェクトチームが創設される等の動きがあったこともあり予備知識がありましたので、研究内容は理解しやすいものでした。

 これまでの本県の野菜振興の方策は、「夏期の冷涼な気候と広大な土地資源を生かした産地づくり」を目標として各種施策を展開してきたわけですが、この成果として、近年、本県は福島県を抜いて東北一の野菜供給県にまで発展したわけです。
 
 しかし、冬期間はながいも、にんにく等貯蔵性のある作物に限られることから、地産地消やスローフードの観点や冬期間「道の駅」の品揃えが極端に悪くなる等の状況を解決するためには「冬の農業」の推進は重要な研究課題であると思っております。
  
 「冬の農業」推進には栽培技術の側面もさることながら、生産コストの面から安価なエネルギーをいかに確保し、効率的に利用すべきかが重要な課題です。この点で、昨年「冬の農業」研究のため当試験場に設置したソーラパネルは低温・多照の条件で最大効率が発揮できる性質をもっておりますので、県南地域に適したエネルギー確保手段と言えます。 このソーラパネルは今後の更なる技術発展によりエネルギー変換効率の向上と価格の低下が期待されておりますので、近い将来「冬の農業」推進のための暖房源としての活用が期待されます。
 
 さらに、冷房のためのエネルギー源にも活用することにより、本年度から研究を開始する「いちごの夏秋どり栽培」等「夏の農業」振興にも活用し、施設の有効利用と野菜の周年供給を図るべきであると考えています。



本格化した冬の農業の技術開発
 青森県では冬期間の農業振興を図るため、地域資源を活かした「冬の農業」を推進しています。その一環として、当場は冬期に施設で野菜生産する技術を開発することになりました。本年2月には、太陽光発電を暖房に利用する硬質フィルムハウスが完成し、野菜の栽培試験が始まりました。取り組んでいるのは、次の三つの課題です。
 ①県南地域の冬期多日照という気象条件を利用して太陽光発電を行い、施設(硬質フィルムハウス)の暖房に利用する試み。
 ②暖房コストを抑え、施設の熱効率を高めるための加温用のヒートパイプと保温用の断熱カーテンについての検討。
 ③果菜類、葉菜類、根菜類等の各種野菜を冬期に施設栽培する技術開発
 いずれの課題とも、これまで取り組んだことのない新しいものですので、効率よく研究を進めるためにも、関係者の皆様からの御指導、御助言をよろしくお願いします。

太陽光発電パネル

硬質フィルムハウス

施設内でのトマト栽培

栽培部  木村 利幸



進展するえだまめのミニ産地づくり
 畑作園芸試験場では平成11年から、当時の農業研究推進センター、農業試験場と共同で、早生品種「あおもり豊丸」、「あおもり福丸」と「毛豆」を組み合わせた長期出荷を想定し、産地づくりとマーケティング研究に取り組んでいます。
 弘前市、横浜町、十和田湖町の3か所で試験栽培を行い、弘前市では7月中・下旬から9月までの連続出荷ができました。また、消費者を対象とした試食アンケートを実施した結果、食味は全県において高く評価されました。
 マーケティング面では、MA資材で包装して食味や鮮度を長期間保持できるように工夫し、また市場出荷する場合は、毛豆をイメージした段ボールと品種を解説したチラシを利用しました。これにより従来のえだまめと差別化することができ、産地直売所、青森市場、東京市場のいずれでも販売は好調でした。
 各所から供給量の増加を求められていることもあって、本年度の作付けは順調に拡大しています。「毛豆シリーズ」が町の特産品として定着することを期待します。


作物改良部  今 克秀



野菜の病害虫診断から見えてくるもの
 病害虫等による障害の診断依頼は、野菜作では、にんにく、ながいも、トマトを中心として、年々増加する傾向にあり、新発生・難防除病害虫の多発傾向を反映しているものと思われます。診断結果は、病害、虫害、線虫害、薬害、生理障害等きわめて多岐にわたりますが、南部地域の基幹作物であるナガイモ、ゴボウ等の根菜類では、リゾクトニア菌による根部腐敗、奇形等の診断依頼が増加しており、ネギ作等を組み入れた輪作体系を導入するなどの抜本的な対策を講ずることが必要と思われます。
 診断依頼があった障害で最も多かったのは病害の42%ですが、次いで、根の生理的な障害が多く、全体でみても29%を占めています。根菜類では、さらにその割合が高くなり、ながいもでは、診断依頼の実に51%が生理障害と診断されています。これは、安易な未熟有機物の多投や無理な土壌改良・施肥等による結果と考えられ、土壌診断に基づく適正な土壌改良・肥培管理の重要性を示しているものと思われます。



図3 ながいもの障害別割合

病害虫防除室  藤村 建彦




人のうごき
1、退職者 (平成15年3月31日)
 職   名 氏    名
 場  長 吉原 雅彦
 技能技師 沼岡 満男

2、転出者 (平成15年3月31日)
職 名 氏  名 転 出 先
次 長 熊谷 憲治 畑作園芸試験場 研究調整監
研究調整監 豊川 幸穂 青森県農林総合研究センター 研究調整監
総務室長 加藤 眞人 八戸県土整備事務所 総務室長
 総括研究管理員(作物改良部長事務取扱) 石谷 正博 畑作園芸試験場 総括研究管理員
研究管理員 今 克秀 作物改良部長
主任研究員 松田 正利 西地方農林水産事務所木造地域農業改良普及センター 主査
技 師 泉 幸一郎 北地方農林水産事務所五所川原地域農業改良普及センター技師

3、転入者 (平成15年4月1日)
職 名  氏 名 旧 所 属
場 長 寺田 吉廣 グリーンバイオセンター 次長
研究調整監 熊谷 憲治 畑作園芸試験場 次長
総務管理監 鳴海 光秋 農産物加工指導センター 次長
総括研究管理員 石谷 正博 畑作園芸試験場 総括研究管理員(作物改良部長事務取扱)
作物改良部長 今 克秀 畑作園芸試験場 研究管理員
栽培部長 木村 利幸 農業試験場 研究管理員
技 師 佐藤 正和 新採用

4、昇任者 (平成15年4月1日)
職 名  氏 名 旧 職 名
主任研究員  細田 洋一 技 師


このページの
先頭へ戻る