畑園試だよりNo.6






さくらとにんにく

研究調整監  豊川 幸穂


 今年のさくら前線の北上は平年に比べて大幅に早く、本県においても10日以上も早まりました。桜の名所では、ゴールデンウイークに会わせてさくら祭りを開催しているところがほとんどで、関係者は葉ざくらになるのではと心配したことと思います。しかし、幸いに開花後は花冷えの日が続いたため、会期中は十分に楽しめたようです。

 一方、本県特産のにんにくの生育は好天に恵まれ順調に進んでいて、収穫量、品質の面からも期待されています。

 にんにくの栽培では、りん片分化の時期が重要視されていて、4月になると各方面からこの時期についての問い合わせが多くなります。これは、分化時期が早い年は球の肥大がよく収量も多くなることや、りん片分化期は追肥時期を判断するための指標になっていることなどのためと思われます。

 畑作園芸試験場では、りん片分化期間近かになると毎日のように株を掘りあげて顕微鏡で検鏡し、この時期を判定しています。

 さて、私はこのりん片分化時期とさくらの開花の関係について以前から感じていることがあります。それは、さくら(通勤途中の公園のソメイヨシノ)の開花始めとりん片分化期が一致し、またずれてもほとんどが数日以内のことが多いということです。今年は、公園のさくらの開花始めが4月18にちで、畑作園芸試験場のにんにくのりん片分化期も同日でありました。

 私は、海釣り、特に海たなご釣りが好きですが、釣り先輩からはうつぎの花が咲く頃がたなご釣りの時期と教えられ、その時期を待ってよく出かけています。このような事例は多くあると思いますが、さくらとにんにくの関係をみても、自然はよくできていると考えているところです。



主要成果

自然崩壊性マルチのにんにく栽培への適応性
 自然崩壊性マルチは、通常の農ポリと同じように使えて、しかも使用後は、自然界の微生物や分解酵素によって水と二酸化炭素に分解される、“自然に還る”マルチ資材です。このため、廃棄物の処理に際しては、地中への鋤込みが可能で、燃焼させても発生熱量が低く有害物質が放出されることはありません。
 県内のにんにくの作付面積1490ha(平成14年度)の約9割はマルチ栽培で、使用済みのマルチは作付け終了後に業者に持ち込み、有償で処分しているのが現状です。自然崩壊性マルチを使用した場合、①収穫時期のマルチ回収作業の省力化、②環境負荷の低減、という利点があります。自然崩壊性マルチには、崩壊までの期間が異なるタイプがありますが、にんにくの場合秋の植え付けから翌年6月中旬の茎葉繁茂期までうね面を被覆し、それ以降に崩壊が進むタイプのものであれば、農ポリとほぼ同等の収量が得られます。しかし、このタイプのマルチ資材は、収穫作業時にまだ若干強度を保っているので、ハーベスタに破片が絡みつき機械収穫が困難となります。現在試作段階にある抜き取り式にんにく収穫機では、自然崩壊性マルチを除去せずに収穫が可能で、収穫作業によりマルチがさらに断片化するので、ロータリによる鋤込み作業が容易になり利用価値が高まります。

自然崩壊性マルチ被覆における抜き取り式にんにく収穫機(試作機)の作業状況

栽培部  福士 直美

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いちごの夏秋期以降どり作型の開発
 
 品質・食味とも定評のある一季成り性品種を用い、夏期冷涼なやませ気象を利用して、国産いちごの端境期である夏秋期から収穫できる長期どり作型を開発中であり、これまでに次のことが明らかになったので紹介します。
 1 半促成栽培(3月から収穫)の収穫終了後、6月に芽の整理・摘葉等の株の手入れをし、さらに遮光して据え置き栽培することにより7月以降も引き続き収穫できます(写真)。この方法による「さちのか」の株当たりの商品果収量は、7月~10月が150g以上、11月~5は500g以上となり、半促成と合わせると1kg以上となります(図)。
 2 当年苗及び越年苗を準備し、これに8時間日長(8:30~16:30)の短日処理を30~50日程度行うことにより、越年苗利用では7月~10月、当年苗利用では9月~12月に収穫でき、さらに翌年の春にも収穫できます。

図1 据え置き栽培における時期別収量


写真1 盛夏期の着果状況

栽培部  岩瀬 利己




新規課題

新 規 課 題 の 紹 介
 平成16年度から新しく取り組む研究課題の概要を紹介します。

 ・ながいも産地再生のための高品質栽培技術の確立 平成16~17年度

  本県のながいもは全国一の出荷量の誇る特産作目ですが、近年、「曲がり」や「ボリュウム不足」など、A品規格の生産が低下しています。これらの状況を改善するため、新たな観点から高品質栽培技術の確立に向けた研究を行います。

主な研究課題
①植付時期、種子の種類がながいもの生育、収量、品質に及ぼす影響
②追肥方法の違いがながいもの生育、収量、品質に及ぼす影響

担 当 : 栽培部


 ・新用途小麦・大豆品種の高品質多収栽培技術の確立 平成16~17年度

  水田の高度利用を進めるうえで重要な小麦、大豆においては、販路の拡大と価格の安定化が大きな課題となっていて、本県ならではの特色のある品種の育成、高品質多収技術の確立、加工適正の把握が急務となっています。このため、パン・中華めん用として有望な小麦の品 種・系統、納豆用極小粒系統大豆の高品質多収栽培技術を検討するとともに、加工適正の把握等を行います。なお、この研究は農林総合研究センターと共同で実施します。

主な研究課題
①新用途小麦の高品質多収技術の検討
②納豆用ダイズ品種の好適栽培技術の検討
③現地実証試験
④加工適正の調査

担 当 : 作物改良部


 ・特産野菜病害虫の生物農薬等を組み入れた防除体系の確立

  近年、多くの微生物・天敵等の生物農薬が開発されていますが、これらは効果が不安定であったり、使用方法が難しいなどの問題があります。このような中で、化学合成農薬に代替 えするものとしての地位を確立し、野菜病害虫防除技術の総合化・安定化を図るため、本県の野菜栽培に即した使用方法を明らかにします。

主な研究課題
①野菜の病害虫防除における化学合成農薬削減技術
 ・微生物・天敵農薬による病害虫防除
 ・対抗植物利用による土壌線虫防除技術

担 当 : 病害虫防除室



人のうごき
1、転出者 (平成16年3月31日)
職 名 氏  名 転 出 先
研究調整監 熊谷 憲治 ふるさと食品研究センター農産物加工指導センター所長
病害虫防除室長 藤村 建彦 農林総合研究センター 病害虫防除室長
総括研究管理員 桑田 博隆 農林総合研究センター 研究調整監
作物改良部長 今 克秀 農林総合研究センター 水稲栽培部長
研究管理員 庭田 英子 中南地方農林水産事務所 黒石地域農業改良普及センター 主幹
主任研究員 西舘 勝富 農林総合研究センター りんご試験場 県南果樹研究センター 主任研究員
主事 寺嶋 篤史 河川砂防課 主事 癒されないアロマテラピー

2、転入者 (平成16年4月1日)
職 名  氏 名 旧 所 属
研究調整監
(作物改良部長事務取扱)
豊川 幸穂 農林総合研究センター 研究調整監
病害虫防除室長 福士 協二 構造政策課 総括主幹
主 幹 米内山淳一 団体経営改善課 主幹
研究管理員 山下 一夫 農林総合研究センター グリーンバイオセンター 総括主任研究員
総括主任研究員 鎌田 直人 中南地方農林水産事務所 弘前地域農業改良普及センター 総括主査
技 師 古川 尊仁 東地方農林水産事務所 青森地域農業改良普及センター 技師
技 師 村上 卓司 上北地方農林水産事務所 十和田地域農業改良普及センター 技師


トピックス
幼稚園児・小学校児童が農作業を体験学習
 5月10日には、いちい幼稚園・春日台保育園園児148名が、11日には六戸町立大曲小学校児童142名(1~6学年全員)がジャガイモの植え付け作業を実際に体験しました。両日とも天候に恵まれ、体験学習を無事終えることができました。

児童に対しての寺田場長講話


小学校児童


幼稚園児

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16年度畑園試の菜の花
 畑作園芸試験場では、種子生産のため、なたねを約1ha栽培しています。4月30日頃から開花が始まり、5月10日頃に満開となりました。なたねの花は、3週間程度楽しめました。




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