分析・測定事例3『のぞき見防止フィルムの評価』

2021年11月16日

 タブレットやスマートフォンなどの電子機器や通信環境の進歩により、私たちは気軽に電子機器を屋外に持ち出し、メールの送信や内容確認、動画の視聴、商品のネット購入などに使用しています。電子機器の画面に表示されるプライベートな情報を守るために、画面上に貼り、角度により画面表示を見えなくする『のぞき見防止フィルム』などが市販されています。

 今回は、スマートフォン用ののぞき見防止フィルム(市販品)可視光線(波長380~780nm)の透過スペクトルの角度依存性を測定し、のぞき見防止性能を評価した事例を紹介します。

 

 〇可視光線の透過スペクトルの角度依存性を測定するために、絶対反射率測定ユニットを装着した紫外可視近赤外分光光度計を用いました。

    

 

 ◇のぞき見防止フィルム(市販品、記載:横方向、縦方向ともに視野角度58度)の可視光線の透過スペクトルの角度依存性の測定、評価

 

 1 横方向の透過スペクトルの角度依存性について

 1-1 のぞき見防止フィルムを絶対反射率測定ユニットの試料台にセットします。

 (絶対反射率測定ユニットの試料の最大高さは70mm程度までなので、フィルムの縦方向の長さが70mmになるように切断しています)

 

 1-2 試料台の角度をー85°~+85°まで回転させながら、1°刻みで可視光波長780~380nmの透過率を測定します。

  (本ページの透過率:フィルムに、ある波長の光を光の強さI0で入射し、透過して出てきた光の強さがIになった時、入射した光の強さI0に対する出てきた光の強さIの割合[透過率(%)=(I/I0)×100])

 

 1-3 インターバルデータ解析ソフトで、1-2で測定した可視光の波長380~780nmのデータを解析します。

     画面左:角度(Angle[deg])と波長(Wavelength[nm])と透過率(%T)の3次元グラフ

     画面右上:角度0°(0deg)における波長(380~780nm)と透過率(%T)のグラフ

     画面右下:波長580nmにおける角度(Angle[deg])と透過率(%T)のグラフ

 

 画面左の3次元グラフから、のぞき見防止フィルムは、おおまかには角度-30°~+30°において波長380~780nmの可視光を透過することが分かります。

 画面右上のグラフから、のぞき見防止フィルムは、角度0°において400~780nmの可視光を31%以上透過し、波長400nmから380nmになるに従い透過率が減少し380nmで透過率23%程度になることが分かります。

 画面右下のグラフから、のぞき見防止フィルムは、波長580nmの可視光(橙色~黄色)を、角度ー30°~+30°において2.9%以上透過することが分かります。

 

 下の画像は、波長580nmにおける角度(Angle[deg])と透過率(%T)のグラフに、のぞき見防止フィルム記載の視認角度58°の説明を加えたものです。

 のぞき見防止フィルムは、波長580nmの可視光を視認角度58°(横方向の角度-29°~+29°)において4.3%以上透過することが分かります。

 角度(Angle[deg])と波長(Wavelength[nm])と透過率(%T)の3次元グラフを見ると、波長380~780nmの他の波長においても、同様な傾向であることがわかります。

 

 下の画像は、角度ー29°、+29°における波長と吸光率のグラフです。

 角度ー29°では、最低吸光率は波長380nmの2.5%でした。波長580nmでは4.3%でした。

 角度+29°では、最低吸光率は波長380nmの3.0%でした。波長580nmでは5.1%でした。

 

2 横方向の透過スペクトルの角度依存性について

 2-1 のぞき見防止フィルムを絶対反射率測定ユニットの試料台にセットします。

 (1-1で使用した縦方向の長さ70mm程度に切断したフィルムを、時計方向に90°回転させ試料台にセット)

 

 2-2 1-2と同様に透過率を測定します。

 

 2-3 1-3と同様に、2-2で測定した可視光の波長380~780nmのデータをインターバル解析ソフトで解析します。

     画面左:角度(Angle[deg])と波長(Wavelength[nm])と透過率(%T)の3次元グラフ

     画面右上:角度0°(0deg)における波長(380~780nm)と透過率(%T)のグラフ

     画面右下:波長580nmにおける角度(Angle[deg])と透過率(%T)のグラフ

 

 画面左の3次元グラフから、のぞき見防止フィルムは、おおまかには角度-30°~+30°において波長380~780nmの可視光を透過することが分かります。

 画面右上のグラフから、のぞき見防止フィルムは、角度0°において400~780nmの可視光を31%以上透過し、波長400nmから380nmになるに従い透過率を減少し380nmで透過率22%程度になることが分かります。

 画面右下のグラフから、のぞき見防止フィルムは、波長580nmの可視光(橙色~黄色)を、角度ー30°~+30°において3.0%以上透過することが分かります。

 

 下の画像は、波長580nmの波長580nmにおける角度(Angle[deg])と透過率(%T)のグラフに、のぞき見防止フィルム記載の視認角度58°の説明を加えたものです。

 のぞき見防止フィルムは、波長580nmの可視光を視認角度58°(縦方向の角度-29°~+29°)において4.0%以上透過することが分かります。

 角度(Angle[deg])と波長(Wavelength[nm])と透過率(%T)の3次元グラフを見ると、波長380~780nmの他の波長においても、同様な傾向であることがわかります。

 

 下の画像は、角度ー29°、+29°における波長と吸光率のグラフです。

 角度ー29°では、最低吸光率は波長380nmの3.1%であり、波長580nmでは5.6%でした。

 角度+29°では、最低吸光率は波長380nmの2.3%であり、波長580nmでは4.0%でした。

 

 今回評価したのぞき見防止フィルムは、横方向、縦方向の視認角度として記載されている58°(横方向-29°~+29°、縦方向-29°~+29°)において、波長380~780nmの可視光線を2.3%以上透過し、横方向-29°~+29°、縦方向-29°~+29°以外のー85°または+85°までの角度では可視光線の透過率は2.3%未満にすることが分かりました。

 

 

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