外敵一覧


海の中にはホタテガイの天敵がいます。ここでは、そのうちの特にホタテガイに害を与えるものを紹介します。

ヒトデ
【ヒトデによる食害】
 ヒトデの多くは貝や魚を食べる肉食性で、さまざまな海の生き物が被害にあっています。陸奥湾にはキヒトデ、ニッポンヒトデ、イトマキヒトデ、ニチリンヒトデなど何種類かのヒトデがいますが、キヒトデやニッポンヒトデは、海底に生息しているホタテガイを食べたり、養殖の篭に入り込んで食べてしまったりもします。また、ホタテガイ採苗器に付着してホタテの稚貝も食べるので、漁業者には嫌われていて駆除されています。

キヒトデ
キヒトデ
一般的にヒトデと呼ばれているものがこれです。

ニッポンヒトデ
ニッポンヒトデ
中央にあるオレンジ色の点と白っぽいトゲが特徴です。
ヒトデの卵
ヒトデの卵。見かけはウニに似ていますが、食べると舌がしびれます。
 
【体の特徴】
ヒトデの口は体のうら側の真ん中にあり、肛門は背中側にありますが、排泄物は口から出すことが多く、肛門はあまり使われません。ものを食べるときはまず胃をからだの外に出し、相手を消化してからまた胃を元に戻します。移動するときは、管足という管状のものを使います。
 
【ヒトデのからだ(電子顕微鏡写真)】

ヒトデの口
ヒトデの口

管足という管状の足
管足という管状の足
 
【ヒトデの発生】

ヒトデの未受精卵
ヒトデの未受精卵。大きさは約140μm。

受精して約4時間後の4細胞期
受精して約4時間後の4細胞期。約200μm。

受精して24時間後ののう胚
受精して24時間後ののう胚。約300μm。

受精2週間後のビピンナリア幼生
受精2週間後のビピンナリア幼生。約700μm。

ブラキオラリア幼生
受精4週間後のブラキオラリア幼生。約2400μm。

受精4週間後の稚ヒトデ(うら)
受精4週間後の稚ヒトデ(うら)。
 
【名前の由来】
形が人の手に似ているためと言われていて、浜ではヤスデと呼ばれています。

ウミセミ

【ウミセミによる食害】
ウミセミはホタテガイ養殖の採苗器に入り込み、ホタテガイの稚貝を殻ごと食べてしまいます。1匹あたり1日平均で約100~200個を食べることが飼育試験からわかりました。このほか、養殖ワカメを食べるという報告もあります。

ウミセミ成体
ウミセミ成体

ウミセミ幼生
ウミセミ幼生
 
【体の特徴】
体調はオスで約20mm前後、メスでは12mm前後で、セミのような外見をしています。生まれたばかりの子供(幼体)は1~2mm以下で、えびやかにの仲間なので脱皮を繰り返して成体になります。つかむとダンゴムシのように丸くなります。腹を上にして背泳ぎのようにして水中を移動し、口には鋭い歯があります。
 
【脱皮】

ウミセミの脱皮
ウミセミの脱皮
周りに散らばっているのが殻です。

ウミセミの口
ウミセミを電子顕微鏡で観察すると、鋭い歯があるのがわかります。
 
【名前の由来】
 陸奥湾に大量に見られる種類は正式な名前をニホンコツブムシといいますが、その外観がセミに似ていることからウミセミと呼ばれています。

ホタテエラカザリ

ホタテエラカザリ
写真中央に見えるオレンジ色のものがホタテエラカザリ。
中央に出産孔がありホタテガイの皮膜で覆われている
中央に出産孔がありホタテガイの皮膜で覆われている
 
【体の特徴】
  ホタテエラカザリの成熟した個体は黄色から橙黄色の体色を示し、平柿形をして体側部は花びらのように5葉に分かれています。体表面は付属肢を欠き、背面に1個の出産孔があり、最大個体は体幅が8mmに達します。小型個体(体幅2mm未満)は球形で、まだ出産口を閉じています。この寄生虫のユニークなところは、雌が370~500μmの雄を体内に1~数個抱えています。名前の示すとおりホタテガイの鰓の表面に寄生して、ホタテガイの血液を吸って生きていることです。

【名前の由来】
 ホタテエラカザリは学名をPectenophilus ornatusといい、Pectenophilusは「ホタテガイを愛するもの」、ornatusは「鮮やかな体色」を意味します。和名のホタテエラカザリは、ホタテガイの鰓を飾る美しい寄生虫であることから名づけられました。

【食べても大丈夫?】
 ホタテガイの殻をとると、鰓にいくつかついているのが見られることがありますが、基本的には食べても害はありません。ですが、気になる場合は取ってください。

ポリドラ(マダラスピオ)

【貝殻への穿孔】
ポリドラは浜ではハリトオシなどと呼ばれていますが、その名のとおり貝殻に針を通すように穴を開けて住みつきます。これを穿孔(せんこう)といいます。ポリドラが穿孔すると貝殻の内側が黒っぽく変色し、数が多くひどくなると穴が開いてしまうこともあるので、貝の見た目が悪くなってしまいます。また貝殻がもろくなり、漁獲時に殻が壊れやすくなり、商品価値を低下させ、成長阻害またはへい死させるなどの影響を与えることもあります。しかし、ポリドラがホタテガイの軟体部を食害するということはありません。ポリドラはホタテガイの貝殻を住みかとしているようです。今のところホタテガイではポリドラの駆除は難しいですが、泥場の漁場で多く穿孔する傾向があり、成長が悪く貝殻形成の遅いホタテガイに多く穿孔する傾向があるので、泥場の漁場を避けて、成長を促進させるような方法を採ることが重要です。

貝殻から頭部と尾部を出しているポリドラ
貝殻から頭部と尾部を出しているポリドラ
ポリドラ(マダラスピオ)の成虫
ポリドラ(マダラスピオ)の成虫
ポリドラに多数穿孔された貝殻
ポリドラに多数穿孔された貝殻
 
【体の特徴】
 体長1.5~33mm、体幅は最大で1.6mmです。雌雄異体で、主な産卵は夏から秋にかけて行なわれます。卵は貝殻に産み付けられ、幼生は遊泳生活を送り、冬になるとホタテガイへ穿孔し始めます。体前部に2本の触手があり、これを海中に漂わせて海水中の懸濁物をとって食べています。
 

 

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