水産上重要な魚類

四季折々に食卓に供される魚類はその種の多さと形態の多様さから目と舌を楽しませてくれる有り難い食材である。また、近年、海産魚類に豊富に含まれる高度不飽和脂肪酸であるDHAが健康面で有用であることが知られるようになり、日本人の食生活にはなくてはならないものとの認識が高まって来た。
本県で漁獲される魚類のうち市場に水揚げされる種はおよそ150種前後である。この中 から、水産上重要魚種を中心として分類群別に簡単に主な漁場、漁法、漁期、生態、地方名、料理法等を紹介する。ただし、ここで紹介する地方名についてはかなり昔のものであり、土地の古老しか分からないものが多く、現在は廃れているものが多い。また、標準和名と同じ呼称についてはもちろん除外してある。
なお、ここではスペースの制約があるので、形態に関しての記述は出来るだけ避けることとした。形態については市販されている図鑑類(益田他編,1984)を参照されたい。


メクラウナギ目
ヤツメウナギ目
ネズミザメ目
エイ目
ニシン目
ウナギ目
サケ目
ダツ目
トゲウオ目
タラ目
アンコウ目
キンメダイ目
マトウダイ目
スズキ目
カサゴ目
ウバウオ目
カレイ目
フグ目


メクラウナギ目
メクラウナギ科
  クロメクラウナギ
 本種は日本海、特に深浦沖の沖合で籠漁法により漁獲されるもので、昔は皮を干したものが強靭であることから下駄の鼻緒に用いられた。現在では、漁獲も減り最近まで薫製として販売されていた。しかし、韓国船が近海にやって来て大々的に籠漁法で漁獲するようになってからは殆どとれなくなったという。韓国ではハンドバック、ベルトなどに加工して日本に輸出しているとのことである。
 地方名: メクラウナギ(岩崎)、アナゴ(深浦)


ヤツメウナギ目
ヤツメウナギ科
 カワヤツメ

 晩秋、産卵の為遡上して来たものを河口に敷設した胴網等で漁獲する。生臭いので好き嫌いのあるものであるが、蒲焼風に調理して食用とする。ビタミンAを多量に含有する為夜盲症の薬として用いられたのも昔のこととなった。
 地方名: ヤツ(ヅ)メ(一般)


ネズミザメ目
ドチザメ科
 ホシザメ

 鮫の中では珍しく刺身となる肉質をもち喜ばれる。殆ど底曳で漁獲されるが、近年資源が枯渇状況にある。地方名カノコザメは体側に散在する白点を鹿子模様に見立てた優雅なもの(八戸)、サシミザメはそのものズバリ(下風呂)。


ネズミザメ科
  ネズミザメ

 11~3月の冬場を中心に北海道方面から産仔する為に南下回遊して来たものを漁獲するもので、北洋ではサケ流網にかかったサケを呑食する嫌われものである。本県では次種アブラツノザメとともに重要資源であった。江戸時代に本種を専門に漁獲し、近在に売り捌いた小泊村下前の加藤乙吉さんの名前が津軽での地方名カト(ウ)ザメ、(カドザメ)となったとか。南部ではモウカ(ザメ)である。刺身、照り焼き、味噌漬けと用途は広い。
 明治17年大間の佃栄太郎氏の発明になる流網漁法が普及し佐井村では盛んに行なわれており、冬期の貴重な収入源であった。全長3mに達する大形の魚体で、雌には重さ約6Kgの胎仔が4尾入っており大きな卵嚢を持っている。これをすり潰したものをデンゴ、デゴといい美味なものだそうである。食い過ぎると、頭痛がして「デンゴに酔う」という。肝臓は魚油に、胃、心臓も食用とされた。切り身は鱈とともに津軽、南部ともに正月料理に欠かせないものであった。


ツノザメ科
  アブラツノザメ

 背鰭に鋭い棘が発達しており角鮫である。昔は全県沿岸で漁獲されていた重要資源であったが近年資源は減少の一途を辿っている。主産地は底曳の八戸と三厩である。三厩では津軽海峡の深場で延縄漁法で漁獲する。秋から春にかけての漁である。利用法は殆ど蒲鉾用であり、宮城方面に出荷される。
 肝油からは上等の油が採れ、肝油、化粧品に利用される。本種は成熟まで年数がかかり、懐妊期間が20~22カ月と長いことから資源が悪化して からの回復には時間がかかる種である。
 2~5月にかけて20cm前後の胎児11~13尾を産む。成熟全長は雄で約70cm、雌で約80~90cmとされる。
 本種が大回遊する例として以下の記録がある。
 北米シアトル沖合で放流したものが8年後に本県泊で再捕(体長94cmの雄で8年間1cmも成長しなかった)(三河、1971)。
 カナダの太平洋岸にあるバンクーバー島南岸で1985年7月4日に標識放流されたものが、何と11年5か月後の1996年12月4日に三厩のサメ延縄漁船が北海道福島沖4.5マイルで再捕した例がある。この場合には放流データがはっきりしており、放流サイズは74.8cm、再捕サイズが95cm, 3.6Kgであった (県水産総合研究センタ-資料提供)。
 最近の例では同じくカナダで放流されたものが15年後の2000年2月に戸井町沖水深300mで再捕されているが、これは最長記録であろう。
 なお、放流機関はカナダのバンクーバー島ナナイモにあるカナダ水産研究所生物試験場であり、ここでは長年にわたって本種の標識放流を行なっている。 このように、本種の成長は大形となると極めて緩慢であることが知れる。
 地方名: アブラ、ツノザメ(一般)、カノコツノザメ(龍飛)、ツノジ(牛滝)、ハダカザメ(津軽)。


エイ目
ガンギエイ類

 沿岸性のものはメガネカスベアカエイなどで他は太平洋深海に産する種(マツバラエイ、リボンカスベ、ソコガンギエイ、ザラカスベ、アラスカカスベ、ツムラカスベ、クジカスベ、オナガカスベなど)が多い。日本海深海には大形になるドブカスベを産するが食用とはしない。八戸では食用となる胸鰭部分のみを切り取って切りベラと称して販売する。軟骨魚類特有の軟骨の歯触りと、煮こごりが美味である。
 地方名:カスベ(一般)、カスぺ(八戸)、ヘピ(ビ)タ(八戸)、ベラ(ザラ)(八戸)、アラ(シ)(鰺ケ沢)


ニシン目
 ニシン科の5種と、カタクチイワシ科の1種の計6種が知られる。いわゆるイワシ類である。
ニシン科
  マイワシ

 資源が大変動する魚種であり、本県でも昭和62年には大豊漁で総漁獲量80万トンのうち43万トンもの水揚げがあった。平成元年を境に全国的に資源が減少しており、かつての豊漁時代が嘘のような現状である。近年の漁獲量は数千トンから1万トンを前後している。
 陸奥湾産のマイワシは外海のものと比べて脂肪分が少なく、油焼けしにくいことから特に秋から冬にかけてとれた小羽イワシはカタクチイワシとともに名産「イワシ焼干」に加工される。高級料理屋で蕎麦のダシに用いられる。
 かつて、世界中のイワシを食べ歩いたグルメ俳優の渡邊文雄氏は野辺地産のイワシを食していわく、「陸奥湾のイワシが世界一旨い」と折り紙を付けたとか。新鮮なものの刺身は本当に美味である。
 また、本種の利用法として一風変わった所では、陸奥湾のマイワシはカツオ釣の活き餌として長持ちするという評価が高く、一時期、カツオ船が湾内に買付に来ていたものである。
 湾内奥部では冬場に時として水温が急激に低下し、岸近くでは水温が1℃近くになることがある。平年の表層の最低水温は3-4℃で あるが、青森市内での除排雪で大量の雪が直接海面に投げこまれると、溶けた雪は塩分の薄い軽い水となって表層に広がり潮と南西の風に乗って茂浦方面にやって来る。海岸でカモメが騒いでいれば、それは低温麻痺した大羽マイワシの漂着である。早速、いとも簡単に拾い歩くことになる。しかし、こういうことは毎年あることではない。
 地方名:イワシ、ナナツボシ(一般)、ヒラゴ、ヒライワシ(陸奥湾)。

  ニシン
 江戸時代後期から明治にかけて本県西海岸、陸奥湾、下北沿岸でニシンの漁獲があったことは遠い昔のこととなった。特に西海岸の鰺ケ沢では大豊漁の時代があり、弘前城下に運ぶために道路が開かれたという程であった。
 湾内では大湊の古名である安渡からとった安渡ニシンの名前があった。それが、昭和32年まで続いた本場北海道ニシンの衰退と共に姿を消したのである。本県西海岸でのニシン漁の最後は明治31年であった。
 一方、海ニシンとは違った沼ニシンというものがあり、本県では尾駮ニシンが有名である。太平洋岸では同様に茨城県涸沼ニシンが知られる。尾駮ニシンはむつ小川原開発のための核燃施設用港湾となる運命にあり、すでに漁業権が消滅した。早晩、この貴重なニシンも消滅の運命にある。現在、辛うじて漁獲があるのは太平洋沿岸での底曳漁業と早春の陸奥湾での刺網程度である。
 陸奥湾野辺地漁協では湾内ニシン資源の復活を夢見て昭和61年から平成11年まで、日本栽培漁業協会宮古事業場で生産した種苗を毎春数十万尾搬入し、海面で中間育成して全長10cmまで育てて放流してきた。3~4年で回帰 したものが確認されたが、残念ながら思うような効果が挙げられなかった。
 地方名:カド(イワシ)(八戸)、ニシ(一般)、ヌマニシ(尾駮)。 

  ウルメイワシ
 体が円筒形に近く、目が大きく、潤んでいることからオロメ(下北)、ドロメ(陸奥湾)、マナコイワシ(日本海)、メダマイワシ(日本海)、ノドイワシ(八戸)、ゴドウイワシ(脇野沢)などと呼ばれているが、一番ぴったり来るのがドロボウイワシ(上磯~脇野沢)ではなかろうか?現在のように温暖期に入り、マイワシが不漁になった時、このイワシが獲れるようになるからである。
 まるで、マイワシを駆逐する阿修羅の如き印象を受けるが、実際の魚はおとなしく、価値のあまりない魚である。獲れるのが夏場であるから、すぐに鮮度が落ち不味となるからである。それでも最近のグルメブームに乗って、刺身がいけるという人も。また、一夜干の塩焼きは絶品とも。漁獲量自体は何ほどもない。

  コノシロ
 西海岸では刺網の雑魚として初夏の頃結構漁獲されるものであるが、一般にはあまり喜ばれない。焼くと人肉を焼く匂いがするとか、武家社会では「この城」を焼くに通ずることから嫌われた。
 コノシロの10cmばかりの当歳魚は江戸前の寿司になくてはならないコハダとして重宝される。体側の黒点模様は豆絞りを連想させ、いなせなものであり、幼魚の活発に泳ぐ様も又、江戸っ子の生きのよさを彷彿とさせる。


カタクチイワシ科
カタクチイワシ

 マイワシのような資源の大変動をしない魚種であり、その増減の周期はマイワシとは全く逆である。本種は温暖期に増大し、マイワシはマダラと同じく低温期に増大する。
 魚体は小さく15cm程にしかならない。湾内ではイワシ小定置で漁獲される程度であるが、上磯地方では焼干の原料として欠かせないものである。マイワシが不漁の年はカタクチを、その逆はマイワシをとうまく補う構図となっている。しかし、カタクチで作ったものが本物であり、高価なものである。上磯地方では冬場の貴重な収入源となっている。  干しあげた背中が真っ黒いことから一般にセグロ(イワシ)と呼ばれる。
 湾内では晩秋から春先にかけての寒い時期に、斜路等の浅瀬に狂ったように集団で乗り上げることがある。この時にはカモメが騒ぎ、ザルを持った人達で大騒ぎとなる。一説には大きな魚に追いかけられて逃げ惑う現象と言われる。しかし、冬場に大きな魚といってもネズミザメ程度しか思い当たらず、その正体は依然不明である。
 地方名:セグロ(イワシ)(一般)、ヒシコ(イワシ)、タヅクリ(八戸)、バカイワシ、マルイワシ(下北)、マルゴ(上磯)。


ウナギ目
 本県ではアナゴ科のマアナゴの他はホラアナゴ科、ノコバウナギ科、フクロウナギ科の太平洋深海魚が殆どである。この中で食用とされるのは少ない。
ホラアナゴ科
  ホラアナゴ イラコアナゴ

 太平洋深海水深500-1,000m海域での試験船開運丸のオッタートロールで豊富に獲れたものである。ウナギに比べて体が側偏しており口が大きく裂けている点で異なる。全長1m近くに達する。蒲焼風に食べれば脂が多く、本物のウナギよりも美味に感じた。料理次第であろう。
 地方名:オキハモ、クロハモ(八戸)、カラスハモ(白糠)。


アナゴ科 
 マアナゴ

 一般にハモと称される。標準和名のハモ科のハモと紛らわしいので注意が必要である。 太平洋沿岸での底曳が主で、ドウ籠でも漁獲される。肉食で、少々の障害も何のその、餌があればどこまでも潜り込む貪欲な性格を利用した筒形の籠漁法である。本県では寿命が長いためか、胴回りが茶筒程に成長した巨大なものが偶に漁獲される。
 また、本種の浮遊期の葉形仔魚(レプトケファルス)が5-6月頃、太平洋岸のコウナゴ 棒受網に乗ることがある。透明なもので最大全長13cm位になる。この仔魚が底生生活に移行する頃には体が縮小して全長75mm程の小アナゴに変態することが知られている。
 寿司ネタのアナゴ寿司、アナゴ飯など良いものである。


サケ目
 重要水産資源が多い。いわゆるサケ・マスの他、チカ、アユ、シラウオを含む。
キュウリウオ科
  チカ

 淡水のワカサギを含む科であるが、つい、ワカサギ科としたくなるが正式にはキュウリウオ科である。昔、長崎から青森に来て間もなくの頃、ワカサギは何科かと先輩から聞かれ、ワカサギ科でしょうと答えて苦笑されたことを思い出す。意地悪な先輩の質問であった。
 チカとワカサギの形態は非常に良く似ており正確に識別できれば大変な目利きである。チカは口が小さく上顎後端は瞳孔中央下に達しないこと、腹鰭起部が背鰭起部よりも後方にあること(チカは近くないと覚えると良い)に対してワカサギでは口がやや大きく上顎後端は瞳孔中央下に達し、腹鰭起部は背鰭起部よりも前位か直下にある。体色ではワカサギは飴色、チカは青味がかった銀白色と覚えておけば良い。陸奥湾では両種が分布しており、ややこしい。
 両種の生態で明確に区別されるのは産卵場である。チカは沿岸の開放的な砂浜海岸で産卵し、ワカサギは川を遡って礫底に産卵する。これだけの違いがある。
 陸奥湾に流れ込む河川の中流域で春先に「チカ漁」としてよく報道されるが、これはワカサギが産卵のため河川を遡上してきたものを投網などで漁獲するものであり誤りである。
 チカは本県西海岸には分布しない。陸奥湾から下北、太平洋沿岸である。生物地理区分で明らかにしたように、冷温帯域にのみ分布するのである。早春、刺網漁で子持ちのものが獲れるが、15cm程の大形のものが混じる。これは3-4歳魚である。秋口から、河口、港 内などに成長したものが姿を見せはじめ、釣人で賑う風景が見られる。
 世間では北海道のシシャモを珍重するが、チカはもっと世間に受け入れられてしかるべきと思う。子持ちの塩焼き、天ぷら、唐揚げは淡泊で骨・内臓ごと食べられ栄養的にも最高と思うが。


シラウオ科
 イシカワシラウオ

 八戸前沖から猿ケ森にかけての砂浜海岸の沿岸に産するシラウオの仲間である。シラウオは終生淡水ないし汽水で生活するのに対して本種は海での生活を専らとする。形態はよく似ているが、本種の方が吻が短く鈍いこと、体高が高く全体にズングリしていること、尾鰭に黒点がないこと等で区別できる。分布は、和歌山から本県までの太平洋沿岸であり、八戸沿岸が北限である。
 近くにシラウオを多産する小川原湖があるが昔は小川原湖のシラウオは秋以降海に下り、越冬してから春先に産卵のため沼に入ると考えられていた。しかし、最近の研究でそうではなく種も異なることが分かったのである。小川原湖のシラウオが豊漁を続けているのとは逆に本種の資源は残念なことにここ20年も大不漁が続いている。
 シラウオよりやや小振りで、6-7cmにしか ならない。シラウオのような指と形容されるのはやはりシラウオの方であり、本種は指は指でも美人のそれではなくプクンとした子供の指といった所であろうか?
 12月が解禁で船曳網漁法で獲られるが、産卵期の4-5月には浅い砂浜で目の細かい刺網 で漁獲される。産卵も砂浜で行われる。卵は生み出されると外卵膜が反転して砂粒に付着し、流れに流されないよううまく出来ている (塩垣, 1998, 1999) 。
 地方名:シラウオ、シラオ、シラヨ(八戸)


サケ科
 アメマス、ニジマス、サクラマス、カラフトマス、サケ、マスノスケ、ベニザケと産業価値の高い魚種が多い。この仲間は河川で生れた後、サケ、カラフトマス、マスノスケ、ベニザケを除き河川に残留する型と降海する型があり、複雑な生活史を送る。マスノスケ、ベニザケは本県では珍しいが、その味覚は最上に位置する。
  サケ ( シロザケ
 産業上最も重要なものは本種であり、昭和59年には1万トン近い漁獲があったが、以降漸減し、近年では半減となっている。
明治以来の北海道を中心とした国策に依る孵化放流事業も近年民営化の波に飲み込まれつつある。それとは裏腹に、輸入もののサケ・マスが幅をきかせ、肉質の劣る本種の値段が下落し、沿岸定置網漁業者を嘆かせている。

  サクラマス
 冬から春にかけてのヘラ釣りによる曳釣漁業が盛んで、釣りとしても最も技術を要するもので腕の見せどころでもある。大きいものは特にイタマス(タイコマス)と呼ばれるもので、体高が高く最大10Kgにも達する。これ は遠くロシア海域の河川に遡上する別系統のものであって、本邦の河川に遡上するものはせいぜい5Kg程度にしかならない。イタマスは特に深浦では日本海を北上するものを専門に漁獲している。
 地方名:アオマス(下風呂)、イタマス( 一般)、カラフトマス(深浦)、スギノコ(大畑)、タイコマス(深浦)、ヌケマス(三厩)、ホンマス、マス(一般)、ママス(下北)
写真 サクラマス.
 深浦町産.本標本は「太鼓ます」と呼ばれ,体高が高いのが特徴.



 

カラフトマス
 名前の通り、カラフト方面の河川に遡上する群で、日本海で成育した北上群を小泊他で浮延縄漁法で漁獲していた。しかし、この漁法も輸入物のサケ・マスが大量に入ってくるとともに市場価値の低落を見、昭和50年代で廃れてしまった。
 地方名:アオマス(一般)、サクラマス(深浦、下北)、セッパリマス(下北)


ダツ目
 サンマ科
  サンマ
 本県沖合を産卵回遊のため道東海域から南下回遊してくるものを棒受網で漁獲するもので、八戸に水揚げされるものは年間1-2千ト ンに達する。本県沿岸では漁場が形成されず遥か沖合を通過するのみである。
 産卵場は遠く四国・九州であり、道東~三陸ものではまだタップリと脂が乗っており、秋の味覚の代表的なものとなる。昔は塩焼きが定番であったが、近年、刺身やシメサバならぬシメサンマが好まれている。
 昭和30年代には本県日本海沖合の流れ藻に産卵する群が5-6月に多数来遊したものであるが、この群が姿を消して久しく、太平洋系群の独壇場である。


サヨリ科
  サヨリ

 夏の川口では5-10cmに育ったサヨリの幼魚が水面を行列を組んで涼しげに泳ぎ回っているのがよく見かけられる。下顎が頭長大に長く伸び、その先端は口紅を塗った様に紅い。すらりとした上品な姿で、大きなものは全長30cmを越す。刺身に造ると、体側中央部に青味がかった黒い縞がくっきりと入り、銀白色に光る肌との対照が美しく、見た目にも涼感を呼ぶ。まさに夏の魚である。
 県内では昔は陸奥湾でサヨリの二艘曳漁法があり、盛んに漁獲したものであったが、今は廃れて久しい。現在、主産地は何と、小川原湖の高瀬川である。毎春、産卵群が大挙して沼に入ってくる。これを、刺網で獲るが、年間数十トンに上る漁獲がある。


トビウオ科
 
トビウオ類
 数種を含む。一般的には ツクシトビウオホソトビウオと思われる。初夏から盛夏の候、大挙して産卵のため北上してきた群を定置網で漁獲する。昔、大間でマグロ漁が盛んな頃はトビウオを餌にして曳釣したものである。長く伸びた胸鰭を針金で左右にピンと張った形にして用いた。トビウオがやって来ると、同時にシイラが餌として追いかけてくる。盆頃までの漁である。
 茂浦の海では8月頃、南西の風が吹いた後、多数の浮遊物の中にトビウオ類、シイラ、ブリなどの稚魚が紛れ込んでいることがある。トビウオ類は稚魚期のみ下顎に多様な形態のヒゲを蓄えているものが多い。2cm前後のものであるが既に立派な長い胸鰭と腹鰭を持っており丁度アメンボのように鰭を左右に拡げたままで活発な動きをしない。しかし、驚かすと数cmの距離を飛び跳ねることが出来る。鰭を含めた体全体の色調には個体差が著しく黒から黄褐色まで変異に富む。
 あまり市場に出回らないが、湾内の定置網でも結構混獲される。刺身に作った色調が涼しく夏向きである。塩焼きも良い。山陰地方ではトビウオで作ったアゴ竹輪が有名である。
 地方名:トビウオ(一般)、トビオ(北金ケ沢、茂浦)、トビヨ(八戸)


トゲウオ目
シワイカナゴ科
 シワイカナゴ

 陸奥湾でカラハシ(唐箸?)と呼ばれるもので、全長10cmに満たない小魚である。5月頃、ホンダワラなどの藻が生えた岩礁域に産卵群が大挙してやって来る。藻に粘着卵を産みつけるためである。
 体色は黄褐色で、喉の部分に黒斑がある。そのため、脇野沢ではアズキガラ(小豆殻)の地方名がある。
 何ほどの漁獲もないが、平内町では春の風物詩の様であるが最近は漁も食べる習慣も廃れてきた様である。
 昔は名前の通り、分類上スズキ目イカナゴ科としていたが、これは全くの誤りでトゲウオ目に移籍された。


タラ目
チゴダラ科
 チゴダラ

 分類が混乱しており、エゾイソアイナメとチゴダラの異同が未だに解決していない問題の種である。ここではチゴダラとしておく。本県ではドンコと称されており、底曳、底建網、刺網等で漁獲される。全長40cmあまりの白身の淡泊な魚で、好んで味噌汁の具とされる。下北では串刺しにしたものを囲炉裏であぶって焼いて食べるが、串の立て方が普通の魚と違って、口を上に向け、焼く時出る脂を落とさないで食べる。これを、ドンコの逆さ焼と称し、脂を淡泊な身に沁み込ませて味をよくする生活の知恵である。今では囲炉裏がなくなり、こういう風景も見られなくなった。典型的な夜行性の魚で、昼間は岩陰に隠れているが、夜に活動する。

 イトヒキダラ
 太平洋深海底曳調査で売り物になったチゴダラ科の魚は前種と本種のみであった。こちらは全長60cmあまりの大型魚であるが練製品に用いられる位で安価なものであった。
 地方名:トウジン、バケダラ(八戸)


タラ科
 マダラ

 マダラは学名でも大頭の意味であるが、江戸時代の呼び名は大口魚であった。
マダラというと何と言っても陸奥湾の鱈が昔から重宝されてきたものである。
 マダラは日本海、太平洋沿岸でも漁獲されるものであるが、何故陸奥湾産が世上にもてはやされるのか。それは、簡単なことである。マダラの漁期は陸奥湾では昔から冬至10日前に網入れし、節分(2月3日)までのおよそ50日間といわれており、以降は産卵後の棒タラを延縄で漁獲したものである。
 即ち、正月用の魚として間に合うわけで、外海ではその漁期が遅く年明けの1-2月にず れこむのである。陸奥湾が気候の影響を強く受ける内湾であることにより、外海よりも早く水温が下がり、そのため来遊が早いのである。
 陸奥湾にマダラの産卵群の走りが見られる時の表面水温は概ね12℃とされる。その昔、津軽藩と南部藩が反目し合っていた頃のこと。津軽藩では上磯(平舘、蟹田)の漁業者が開発した焼山沖の深い漁場で漁獲した。1番鱈は蟹田に命じた。南部藩では脇野沢の漁師に褒美を出して初鱈を確保し江戸表まで夜通しかけて届けたという。いずれも、産卵前のものであるので、餌につかないことから刺網で獲ったものである。
 その勝負はどうであったかというと、回帰する魚道の先端に優秀な漁場を開発していた蟹田石浜の漁師の漁撈技術が上であり又、交通の便の良かった津軽藩の方に軍配が上がった様である。津軽藩の鱈の評判は良く、延宝3年(1675)鱈5本を 届けたのを皮切りに年々数を増し、最も多く献上した宝栄5年(1702)には163本とある。
 将軍家へ5本、各大名、御老中へ133本、津 軽藩邸へ20本とある。荷姿は口から刃物を刺し込んで鰓、内臓を抜き取った上に、口から塩5升を詰め込み、笹を敷いて丁重に箱詰めとし、役人が早馬で送っている。当時、通常の献上品は江戸表まで30日程かけているが、これでは鮮度に問題があったものか、元禄元年には早馬に切り替え、12乃至16日で届ける様になったという。武家階級には腹を割かない所が大いに受けたという。
 戦後間もなくまで大豊漁が続いたが、昭和22年を境に大不漁時代が30年も続き、昭和50年代後半から又漁が見られる様になった。しかし、昭和63年に約2千トンと戦後の不漁時代以降の最高漁獲を挙げてからは資源が激減し数年前からは100トン前後の大不漁が続い ている。マイワシのところで触れたが、マダラとマイワシの資源の変動はピタリと一致している。地球環境の温暖化と大いに関係がありそうである。
しかし、日本海、太平洋のものは陸奥湾に回帰してくる群とは異なり近年資源が上向きにある。この辺が難しい所である。
 陸奥湾に回帰する群の移動経路については底建網で漁獲されたものの内、元気の良いものを選んで標識をつけて放流したのち、再捕されたものの記録から大体のことが明らかにされている。
 多くは北海道恵山から根室、花咲に至る道東までの海域で再捕されており、1部北海道日本海で再捕されている。このことから、陸奥湾回帰群と道南・道東で漁獲されるものが陸奥湾を起源とした同じ資源であり、サケ同様先獲り問題が浮上し、北海道側との間に同一資源の有効利用ということで資源管理を進めていく方向で検討されている。 北海道恵山町管内では延縄漁法で漁獲しており、2Kg未満の小型個体が殆どであり、資源保護の観点から問題視されているのである。 
 鱈の産卵場は陸奥湾の他、日本海では岩崎沖、太平洋では階上沖にあり、それぞれ底建網、刺網で完熟卵を持ったものが漁獲される。
昔は発達した卵巣を持った雌(子ダラ)が高かったが、何時の頃からか精巣(白子、キク、タツ)が高値を呼ぶ様になり雄(並鱈、白)が高くなった。精力増進用としてモテモテのようである。
 下北の鱈には雌ダラの卵が流れ出ないようにナバリと称する長さ10cm程のヒバの薄板に返しをつけて作った木片を刺し込む習慣がある。これは江戸の昔から、その形態が変わっていない。
 鱈漁で忘れてならないのは、鱈底建網漁法のことである。鱈底建網漁法は明治末年平舘と蟹田の漁業者が協力して開発した漁法とされており、本県人が開発した唯一の漁法として記憶されるべきものである。関係した人として平舘の前田清吉、木村仁佐、蟹田塩越の小川甚作氏の名がある。カレイの夜曳網が岩に引っかかり、そのままにしておいた翌朝の観察からカレイ類が袖網を伝って袋網にたまっていることをヒントに箱形の現在の底建網の原形が構想されたという。
 当初の網は障子網だけの箱網であったが、その後、奥に漏斗の落し網を付けた2段式に改良された。当時、網資材は麻網と藁綱で、船は帆を付けた櫓櫂のものであり、動力は手巻のロクロしかなかった。このような装備で、時化の多い寒の最中に、遠く対岸の焼山沖の深い漁場に網を敷設した苦労は並大抵のものではなかったであろう。この漁場・漁法の開発、共に上磯漁業者の先進的な性格がもたらしたもので、下北の漁業者はその後塵を拝するのみであった。
 それが、皮肉にも戦後の新漁業法の改正で、蟹田、平舘の漁業者は先祖開発の千石場所を締め出され、佐井、脇野沢に譲ったのである。
 地方名:タラ(一般)、バクダン(鰺ケ沢)、ボウダラ(一般)、並タラ、白タラ(雄、下北)、子タラ(雌、下北)


写真 鱈底建網大豊漁の懸額
 蟹田町塩越神社蔵 

 昭和3年旧11月10日の大漁.漁場は佐井村焼山沖の千石場所 乗組員9名・帆走・巻揚げロクロに注目


 スケトウダラ
 一般にスケソウ(助宗)と呼称されるが、正しくはスケトウ(佐渡)である。江戸の昔、日本海では佐渡島周辺が本種の本場であり、佐渡の佐の訓読みが「すけ」であることから来たといわれる。
 昭和30年代以降、北転船による北洋漁業華やかなりし頃のサケマス流網漁業と並び称される花形漁業であった母船式底曳網漁業等により大量に本種の水揚げがあり、昭和47年には最高300万トンにも達した。
 しかし、その初期には商品価値の高い卵巣をとった残りのガラ(殻)の利用法はせいぜい低級水練製品の原料か魚粕程度のもので経済価値がなく、新たな利用法の開発が問題となっていた。丁度その頃には以西もののグチ、ハモ、エソといった高級練製品原料の漁獲減から原料の高騰を呼び廉価な代替原料の開発が強く求められていた。こうした中、北海道ではありあまるスケトウダラを何とかしなければと道水試が中心となって道の蒲鉾業界・中央の大手水産会社等の支援を受けて昭和30年頃から研究に着手したのである。
 苦労の末、昭和30年代半ばに北海道立中央水産試験場の工科研究室西谷喬助科長等が無塩冷凍すり身の技術開発に成功し、西谷名で昭和35年特許出願がなされ、同38年5月遂に 特許登録がなされた。同年12月には道知事に特許権の名義移転登録がなされた。
 この技術の骨子は水晒しによって水溶性蛋白を除去することと、冷凍する前に糖を添加して蛋白質の冷凍変性を防止することにあった。従来の製法では本種の魚肉は冷凍保存して解凍するとスポンジ状になり弾力が失われて使い物にならないというのが一般の評価であったのである。 
 民間における冷凍すり身生産の本格化は昭和41年以降のことであった。西谷等の技術開発と時を同じくして京都大学池内等は加塩すり身製法を独自に開発したが、現在でも西谷等の無塩すり身製法が優位に立っており伝統的に用いられている。
 この技術は洋上ですり身加工する母船式漁業へと大きく発展したのである。最盛期の昭和40年代末以降の国内における冷凍すり身の最大生産量は41万トンにも達し、その殆どはスケトウダラが原料となっていた。北洋を締め出された現在ではアメリカ、ロシア、韓国からの輸入ものに大きく依存している。現在、スケトウダラの冷凍すり身は水産練製品原料としてなくてはならないものものとなっている(竹谷編,1968; 新井・山本,1986)。
 最近の国内ものは、すり身原料としてよりも、厳寒期に漁獲されたもののタラコ(卵巣卵)が辛子明太子の原料として価値を増している。
 本県では専ら太平洋沖合の底曳漁業による漁獲が主体であるが、最近小泊沖合での刺網漁で産卵期のものを対象に漁獲されるようになった。
 稚魚期から幼魚にかけては日本海生れのものが陸奥湾に入り込み、マダラ幼魚と混在する年がある。しかし、本来は本種の最も近い最大の産卵場は噴火湾である。マダラよりも遥かに冷水性が強く、卵はマダラの沈性卵と異なり浮遊卵である。


ソコダラ科
 ヒモダラ

 本科魚類は太平洋深海底曳で8種程の漁獲があったが、この仲間は尾部が糸状に長くなっており、可食部分が少なく殆ど頭と胴体だけのようなものである。全長1mを越すムネダラなどまるで死体が揚がったような錯覚にとらわれあまり良い気持ちがしなかった。その中で市場価値のあるのが本種程度であった。それにしても、深海魚というのは水分含量が高く、加工には不向きな肉質で混ぜ物としての価値しかないものが多い。


写真 ヒモダラ.
 太平洋深海底曵.本科魚類は種類が多いが有用種は少ない.




 


アンコウ目
アンコウ科
 キアンコウ

 本県で市場に出るものはほとんどキアンコウである。類似種のアンコウと比べて尾部が長いことにより容易に識別出来る。
 5-6月、センター前の筏周辺に本種の卵塊 が漂着することがある。多くは波浪の影響で細切れになりかかったものであるが、幅1尺ほどの長い寒天質に包まれた卵塊で6角形の蜂の巣のような卵膜の構造をしており中に胚体が動き廻っているのがわかる。陸岸近くで採集されるものの殆どは孵化間近のものである。西海岸では薄い帯のような形態で長いものであることからシャクシロ(ウ)(百尋)という。褌よりも長いということの誇張した表現であろう。
 キアンコウの卵塊から孵化した全長6mmほどの仔魚を飼育してみたことがある。背鰭第1条と腹鰭条が長く突き出し、特に腹鰭は頭長の倍ほどの長い鰭条となっており、孵化したばかりでは水面近くをゆったりと漂っているが日が経つに連れ水槽の底部に移動し、腹鰭をまるで杖のように支えとして殆ど動かなくなる。ワムシ、アルテミア等を与えたが殆ど摂餌せず1週間程で斃死した。何とも変わった習性があるようである。
 厳冬期に底曳で漁獲されたものがアンコウ鍋、アンコウの共和えとして賞味される。5月頃産卵の為浅場にやって来たものでは問題にならない程味が落ちる。
 地方名:アンコ(ウ)(一般)、ゲロ(鰺ケ沢)


キンメダイ目
イットウダイ科
 エビスダイ

 体はどこまでも鮮赤紅色であり、具足のような堅固な鱗に包まれる。この仲間では、最も北方域に進出しているものであるが、採集記録は少ない。それでも、今別、陸奥湾から大畑、角ノ浜まで。あまりに見事な形態であり、大黒様が釣り上げた魚はマダイではなくこの魚ではなかったかと疑いたくなる。
 肉は白身で美味。


アカマンボウ科
 アカマンボウ
 マグロ延縄で混獲されるもので、外洋表層性である。全長2mに達する。体は強く側偏し、各鰭は紅い。胸鰭は普通水平に使うものであるが、本種ではその基底が水平となっており上下に動かす所が特異である。肉色も淡紅色で刺身、焼き物とする。
 地方名:キンタイ、マンダイ(八戸)


マトウダイ目
マトウダイ科
 マトウダイ・カガミダイ

 体は著しく側編し、口が前方に突き出せる構造となっている。両種とも底曳で混獲されるが珍しい位である。
欧州ではサン・ペテロの魚と呼ばれる。聖書にキリストの使徒聖ペトロがこの魚の口から金貨を取り出して貧しい人達に与えたという記述があり、この時、ペテロが魚をつかんだ指の跡が黒斑として残ったといわれる。その為に西欧ではこの仲間を重宝する。これに比べれば日本での扱いはあまり宜しくない。
カガミダイにはこの黒斑はない。
 マトウダイは白身で刺身、鍋料理に良い。
  地方名:カネタタキ(深浦)、ベエベエ、マトヨ(八戸)、両種を区別せずカガミダイ(一般)


スズキ目
ボラ科
  ボラ メナダ セスジボラ の3種が知られている。セスジボラは南方のものであり偶来種である。ボラ、メナダともに陸奥西湾では寒さが厳しい年の冬から春先にかけて低温麻痺しかかったものを浅瀬で見かけることがある。陸奥西湾の冬はボラにとってはギリギリの環境といえる。
 日本中部海域では毎夏、10cm程に成長した子ボラが真っ黒な群れをなして河口に集まり、岸壁に生えた藻類を食んでいるのが風物詩であるが、青森では特に暑い夏の年にしか見られない。
 寒ボラの刺身は頂けるが、その他の季節のものは泥臭く敬遠される。
 ボラは俗に白眼、メナダは赤眼といわれる。ボラには脂瞼があり薄く濁っているが、メナダには脂瞼がなく赤いためである。メナダの方がずっと大きくなる。
 長崎では成熟したボラの卵巣の塩干品である有名なカラスミを製する。本県では成熟しない。
 地方名:ボラ:シロメ(一般)、シロボラ(後潟)、ミョウゲツ(八戸)
      メナダ:アカメ(一般)、アカボラ(後潟)


カマス科
 アカカマス

 8月半ば全長15cm程に成長した幼魚の群れが湾内に入って来る。毛鈎で面白いように釣れたものである。湾内では暑い夏に魚影が濃く、そうでない年には殆ど姿を見せない。もちろん、日本海からの幼魚の来遊である。本県では成魚は殆ど見られない。日本海では定置網によく乗る。全長50cmに達する。
 開いて軽く塩をしたものを一夜干したものの塩焼きが良い。
 地方名:カマス(一般)、オニカマス(牛滝)


スズキ科
 スズキ

 十三湖水戸口など、夏の夜釣りで大物狙いの釣客で賑ったものである。本種は川岸のすすきが白い穂を風になびかせる秋口、河川に入ることがあり、夕暮れ時、川面にジャンプしているのがよく見られる。産卵期は晩秋から初冬と思われるが、本県沿岸で産卵しているかどうかは未確認である。  ハナオ(ハネオ)-ハネゴ-スズキ(日本海)、スナバ-セイゴ-スズキ(八戸)と、出世魚である。
 姿、形が魚の中の魚という意味で現生種の中で最も多彩な分化が見られる分類群であるスズキ目の名前に冠せられる名誉を持つ。釣り上げる最後の瞬間に鰓蓋を大きく膨らませてジャンプして前鰓蓋骨に発達した棘で糸を切ろうとする。これをスズキの鰓洗いと称する。釣マニアにはこたえられない瞬間であろう。
 夏が旬であり、洗いにして良い。有名な奉書焼は宍道湖産を用いた松江の名物料理である。

  オオクチイシナギ
 一般にはオオヨである。全長2mを越す巨魚である。これまでの最大記録は三厩漁協で昭和30年代に釣り上げられた167Kgという。こういう大物は近年見られない。
 日本全国に分布し、南日本では水深500mもの深海に産するが本県では100m程度である。7月、産卵のため水深30-50m程の浅瀬にやって来るが、この時が1本釣の盛期となる。小型のヒラメ、アイナメ、ヤリイカなどの活餌を用意して巨大な鈎に付けて釣り上げるのである。龍飛岬周辺の根が好漁場となっており、大物は船に引き揚げられず、口にロープを通して港まで曳航して持ち帰るという。大物は例外なく雌であり、漁獲されるものの殆どは雌であるという。性転換の可能性も秘めた謎の多い魚である。釣り上げると、鰓蓋を目一杯膨らませ、背鰭、臀鰭の棘を立てて暴れるため危険である。
 稚魚期には体は尾部を除き全身真っ黒であり、砂浜海岸の汀線付近で漂流浮遊物に紛れるという変わった擬態習性がある(塩垣, 2000)。 本県沿岸では8-9月に全長43-89mmに成 長した幼魚が水深10m以浅の沿岸域で桁網に よって採集される。成長は著しく、満1歳で全長20-30cm近くに達する。
 肝臓にはビタミンAが多量に含有されており、多く食するとビタミンA過剰症となるので注意が必要である。昔は、肝油の原料として取引された程である。
 三厩では解体した肉を切り分けて売り捌くが、村民はこれを冷凍しておき、客があった時刺身にして供するという。それ位、資源が枯渇してきた。小泊村では魚の中でこれくらい旨いものはないと評価が高い。
 地方名:イシナギ(一般)、オヨ、オオヨ(一般)、デンボウ(鰺ケ沢)


写真 オオクチイシナギ.
 三厩村竜飛産.
  吊り上げ計測中のオオクチイシナギ.
  7月が漁期でほとんどはメスである.

 

 

 

 

 

 


 アラ、アカムツ
 主に、日本海~太平洋沿岸の底曳、1本釣で稀に漁獲されるものである。何れも大形のものは少ないが刺身で賞味される。
 アカムツ(地方名:口内奥部が黒いことからノドグロ)は日本海での高級魚の1つである。


キントキダイ科
 チカメキントキ

本科に属するキントキダイはごく稀なものであるが、本種はやや普通に産する。全長30cm以下のものが殆どであるが、東シナ海では60cmにも達する。体は側偏し赤く、眼が著大で吻端に近い。腹鰭は大きく腹鰭膜は漆黒色で、腹部と鰭膜で繋っており、扇形に開く。 煮つけ等にされるが、本県ではあまり利用されないようである。
 地方名:キンメ(三厩、牛滝)


 キス科
 シロギス

 日本海の砂浜海岸で夏の投釣りの好対象魚である。夏場には陸奥湾にも入って来る。
 体は円筒形で吻が長く、口は下位で小さい。砂地の小エビ、ゴカイ類など底すれすれを群れをなして索餌している。背面は砂地に似て薄い飴色、腹面は銀白色であり、潜ってみなければその存在はわからないほど、砂地に適応した魚である。全長25cmに達する。単にキスと称する。
塩焼、天ぷらなどで賞味する。三枚に卸した中骨を唐揚げにするのも良い。
 地方名:カマス(鰺ケ沢)、キス(一般)


アマダイ科
 アカアマダイ
 体は側偏し、吻が長く口は下位で、眼は高位。眼と口が著しく離れており、四角張った特異な風貌をしている。体色は黄色がかった赤で優美な色彩である。外国ではタイルを連想させるのかtilefishである。本種はアマダイ科の中で最も北にまで分布する種で、本県日本海南部が北限に相当するが稀に牛滝でもとれることがある。岩崎、深浦では漕刺網という一風変わった漁法でとる。本種が泥底に縦穴を堀って穴居生活を送るという変わった習性から考案されたものである。全長40cm。
肉は柔らかく、上品な白身であることから、吸物、塩焼、味噌漬、粕漬などで賞味される。特に、上方の京、大阪では重宝される。
 地方名:アマダイ(日本海)


アジ科
 本県沿岸で21種もの多くのアジが知られている。この中で産業的価値を有するものはブリを第1に、ヒラマサ、カンパチ、マアジが挙げられるが後の3種は量的には僅かなものである。

 ブリ
 ソッコ(ショッコ)-フクラゲ-イナダ-ワラサ-ブリと続く出世魚である。南日本で生れたものが流れ藻に付随しながらモジャコとなって北上を続け、全長10cm前後のもの(ソッコ)が初夏の頃、本県日本海に姿を見せる。北上しながら成長し、晩秋とともに南下回遊を繰り返す。有名な産卵場は長崎県沖合の東シナ海に浮かぶ男女群島で、ここでは4月にブリ落し網で産卵のため来遊した大ブリがとれる。大戸瀬、深浦の定置網では初冬に南下中の寒ブリの大漁があり濱が大賑いする。この寒ブリは北陸、関西では正月用の高級魚であるが、本県ではあまり高値がしないのは残念である。本種の天然稚魚であるモジャコを養殖したものがハマチである。
 刺身、塩焼、照焼、煮つけ何でも良い。

 ヒラマサ
 体はブリより一回り側偏しており、体側中央を縦走する黄帯が鮮明である。また、上顎後端背縁はブリで直角に近く鋭いが、丸みを帯びる。ブリほど多くはないが、夏が旬である。旬が夏の魚は少なく、その意味で貴重である。

 マアジ
 アジ科の中では最も普通の魚種である。ゼンゴと称する固い鱗が側線全域に発達しているところから容易に区別出来る。 成魚では全長40cmにも達するが、本県沿岸ではせいぜい10数cm程度の当歳魚しかとれない。近年の温暖化により、夏から秋にかけて定置で漁獲されるようになったが、イワシの代用品として焼干に利用される位である。


シイラ科
 シイラ
 盛夏の頃、トビウオがとれだすと、シイラも姿を見せる。側偏した黄色の体に、眼も覚める青緑色の斑点を散らした美麗な魚であるが、死ぬと色が褪める。額が広く、特に雄ではオデコである。本県では大きくても1m程度であるが、南日本では全長1.8mもの大物 となる。山陰沖ではシイラ漬漁といって、孟宗竹で組んだ筏を浮かべて、陰に集まった群れを巻網で一網打尽に漁獲する勇壮な漁法がある。夏から秋にかけて、サバ釣の外道として曳釣によくかかる。
 鮮度の良いものは刺身で食べるが、長崎では生臭みを消すため唐辛子を用いる。一度焼いたものを煮つけとするのも良い。
 地方名:シラ(下北、八戸)、シェラ(三厩、脇野沢)、シイラ(一般)


タイ科
  チダイ、ヒレコダイ、マダイ、クロダイ、キチヌ の5種が知られるが、重要資源としてはチダイ、マダイ、クロダイの3種である。
 
 チダイ
 マダイに良く似ており一般の人は区別しない。しかし、マダイに比べて体高がやや高く、後頭部から始まる体背縁のカーブがマダイのようになだらかではなく、やや突出する。体色はマダイより明るい朱色で、特に鰓蓋の上半部は血のように赤い。最も簡単な区別点は尾鰭後縁部が黒くないことである。
産卵期は秋とされ、初夏のマダイより遅い。
 日本海から津軽海峡西部沿岸に普通であるが、マダイよりも産額は少ない。料理法はマダイと変わらないが、最大全長35cmとあまり大きくならない。
 地方名:ハナダイ(日本海~牛滝)

 マダイ
 近似のチダイとの違いは既に述べたが、体背縁のなだらかな曲線といい、タイ類の中ではやはり品格がある。図鑑等には記述が見られないが、臀鰭後縁から尾鰭後縁下部にかけては青白い。胸鰭は頭長よりも長く、これを左右に伸ばしてブレーキをかけたり上昇・下降の舵の役目に用いる。 平年であれば、日本海から陸奥湾、大間までしか分布しないが、近年の温暖化により分布域が拡大し、下北でも見られるようになった。特に、陸奥湾では初夏の頃から魚影が濃く資源が上向きとなった。
 一般の人は海の中でもタイは赤いと思っているようであるが、実は赤い色は水中では水深とともに急速に衰え、深さ10m位でも、砂 色となり体側の瑠璃色の斑点はただ白く見えるだけである。海中では目立たない保護色となっている。
 最大全長1mを越すが、本県で見られるも のは大きいもので50~60cm前後である。 タイの銘柄は通常の特大、大、中、小以外に1.5Kg未満の小型のもので細かい規格があ り所によって呼び名もまちまちである。それだけ、小型のものでもそれぞれの用途があり、区別する必要があるのである。ササダイ、スズタイ、半1、半2などと称する。
 マダイはその姿が良いことから姿焼きが好まれ祝いの膳用として欠かせない。刺身、塩焼き、酒蒸し、鯛茶漬け、ちり鍋、鯛ご飯、潮汁など多彩である。
 マダイで特記しておく必要があるのは昭和59年の春先、全国的な異常冷水騒ぎがあり、養殖カンパチ10万尾の大量死(高知)、瀬戸内では養殖マダイの仮死状態(香川)、養殖シマアジの凍死(白浜)など2月頃平年の水温を2℃前後低下したためである。この年3-4 月に、 津軽海峡に面する龍飛漁協から今別東部漁協にかけて、海面に浮上して仮死状態となったマダイが漂流しているのが発見され、漁業者はタモ網ですくい取ったものである。建網で漁獲されたものと合わせて4月だけで計5トンの漁獲となり時ならぬタイ漁に浜は沸いたものである。主体は1.5-3Kgの中タイ であった。
 この時の表面水温は平年で7℃のところ、2℃低い5℃であった。マダイは7-8℃以下で低温麻痺し、浮袋が膨れて浮上するのである。この事件で、海峡深部に越冬するマダイがいることが実証されたといわれたものであるが、実際の所、本県日本海で越冬中のものが弱って海峡に入ってきて浮上した可能性もあり、どちらが正しいか難しい問題である。この時、海峡沿岸部でマダイの外に被害に遭ったものはエゾアワビ、サザエがあった。特にサザエは全滅状態となり、回復まで年数を要した。

 クロダイ
 チダイ、マダイに比べて吻が短く、鋭く尖る。全身銀白色に輝き、赤いタイとはまた違った気品が漂う。
釣マニアの中でもクロダイ好きはその魅力にのめりこんだ釣キチである。その技術の難しさと釣果の少なさがますます虜にするのである。他のタイと異なり、用心深い性格からか、建網でも、まとまってとれることはまずない。陸奥湾では夏、大物が群れをなして浅所に来遊する。クロダイは20cm以下で雄として機能し、25cm以上で雌となる性転換魚として有名である。全長50cmに達する。
 料理法はマダイと同様。
 地方名:カワダイ(日本海)


イシダイ科
  イシダイ、イシガキダイの2種を産する。
 しかし、いずれも幼魚あるいは未成魚のみであり、産業的価値は低い。日本海沿岸では秋頃、定置網に時として10-15cmの幼魚が大量 に乗網し投棄されることがある。岩崎~鰺ケ沢では、全長25cm程度の未成魚が見られるが少ない。夏、泳いでいると黄色地に派手な縞模様の5cm程の若魚につつかれた経験を持つ人もあろう。好奇心が強く、また、気が強いため水槽で他の魚と一緒に飼育すると、いじめ殺してしまうので注意が必要である。 イシダイは一般にシマダイと称されるが、岩崎でカタコ、日本海沿岸でカタビラ、下北でシロダイともいう。 イシガキダイはイシダイよりも少ないが珍しくはない。 牛滝ではイシダイとイシガキダイとの天然交雑魚と考えられるものが漁獲されている。体の縞模様が両種の中間的なものとなっている(1988年1月13日漁獲、全長175mm:塩垣 ,1990)。


ウミタナゴ科
 ウミタナゴ、オキタナゴの2種を産する。
 
 ウミタナゴ
 湾内では未成魚しか生息せず、外海の魚である。オキタナゴより体高が高く、全長30cm近くになる。ガラモ場など浅海で群泳し、アミ類など小甲殻類を捕食している。
 初夏、深みから浅場に乗り込んで来た頃の岩場での磯釣の好対象魚である。磯釣はタナゴに始まると言われるほどである。  通常の遊泳では尾鰭を全く動かさず胸鰭のみを用いて、滑るような泳ぎ方をする。この点で、スズメダイ類やベラ類と似ている。初夏ないし夏に5~6cmの幼魚を30尾余り産仔す る。懐妊期間中は不味となる。肉質は柔らかで、塩焼きを最上とする。
 地方名:マルタナゴ(深浦)、ススケタナゴ(下北)、タナゴ(一般)。

 オキタナゴ
 晩秋の頃、生れて3-4カ月にしかならない 10cmほどの当歳魚が群れて餌をついばんでいる時、2尾が体を寝かせながら重ね合わせ、一瞬キラリと光らせて別れるのが見られる。交尾行動である。黒っぽく、尾鰭上葉が長く伸びたものが雄で、この時、雌はまだ成熟していない。早春を待って受精した後、母体から栄養分を補給されながら5cm近くなるまで育つのである。
 地方名:イナゴ(砂ケ森)、トウグチ、トクジ、トグチ(下北、八戸)、ナガタナゴ(深浦)、ニシャータナゴ(牛滝)、ホソタナゴ(牛滝)、クデ(龍飛)、クチボソ(脇野沢)


ベラ科
  コブダイ、オハグロベラ、ササノハベラ、ホンベラ、キュウセンなどを産するが、食用としてはコブダイ、キュウセンの2種である。
 
 コブダイ
 大形のベラで、全長1mに達する。成熟した雄では前頭部が瘤状に丸く突出し、異様な面相を呈する。日本海に多い。丈夫な歯で巻貝や、甲殻類を噛み割って食べる。あまり美味とは言えない。
 地方名:カンダイ(一般)

 キュウセン
 コブダイとともに温帯域に適応した種で、本県で最も普通のベラ類である。群れをなして生活しているが、縞模様がくすみ全体に青っぽいのが雄であり、群れのリーダーである。雌は赤っぽく黒い縞模様がはっきりしている。群から雄を取り除くと、群れの中の大きいものが速やかに雄に性転換する。
 三厩では籠に割ったウニを入れて群れを誘い込み、集まったところで蓋を閉めて漁獲する変わった漁法がある。ウニが大好物である。上磯では、煮干とし蕎麦などのダシ用に用いる。砂礫地を好み、夜間は体全体を砂礫中に潜らせて眠る変わった習性がある。水槽で飼ってみると、夜昼関係なく潜って休息するものもある。全長30cmに達する。 
 地方名:アオベラ(龍飛)、(アオ)ゲンパ(日本海)、デンパジ(鰺ケ沢)、シマメグリ、シマヨ、スナメグリ(上磯)、ネズミウオ(ヨ)(下北)


ハタハタ科
 ハタハタ
  秋田県男鹿半島に続く西海岸の岩崎から鰺ケ沢にかけてが本県の本場である。岩崎では色とりどりのブリコが海岸に打ち上げられたものであるが、昭和50年代後半から極端な不漁となった。
 実は三厩、牛滝、陸奥湾などでも多くはないが漁獲されていた時代がある。現在でも、孵化直後の仔魚が陸奥湾内で採集されることがあり、どこかで密かに産卵されているものであろう。
 昭和40年代には定置網を主体に1,000トンレベルの漁獲があったが、50年代に入り急激に減少した。近年は増加傾向にあり、平成15年の漁獲量は前年の2倍以上の579トンとなった。


イカナゴ科
  イカナゴ
 4-5月、湾口部、白糠などの沿岸浅所で夜 間電気を点けてシラス魚群を集め、棒受網で漁獲する。漁期初めの3cm未満の仔魚はチリ メンと称し最も高値を呼ぶ。成長にともない、値段は下がる。5cmくらいに成長したコウ ナゴはイワシ定置の袋網に細かい目合の網をかぶせて漁獲する。
 昭和40年代は佐井では電照棒受漁法の導入と共に大豊漁が続き、一名コウナゴ組合と称された程である。漁獲されたものは直ちに釜煮してから干燥させて製品にする。大漁の後は寝る暇もない程の大変な作業であったという。最近は、佃煮用に生出荷もされる。
 現在は資源が横ばい状態であるが、昔は沖に出ると他の大形の魚に追い上げられた魚群が密群となり海面から盛り上がって、容易にタモですくい取られたという。ダマと呼ばれた。ヒラメ釣に欠かせない活き餌として重宝された。現在、このようなダマは殆ど見られなくなったという。
 冷水性の魚で、本県でも夏場は砂泥中に潜って夏眠するといわれる。
 煮干、佃煮用の他は、大形魚は養殖魚等の餌料としての需要が大きい。
 小型のものからチリメン-コウナゴ(小女子)-メロウド-ナガヨ-オオナゴ(大女子)と呼ばれる。佐井では親魚をカマスと称す。


マカジキ科
  バショウカジキ、マカジキ、クロカジキ、シロカジキ の4種を産するが、バショウカジキを除き他は全て太平洋だけに分布する。次種メカジキは別科メカジキ科に属す。
 昭和40年代頃までは突きん棒漁法で盛んに漁獲されていたが、最近廃れたようである。長さ5m、重さ4Kgの銛を船首に付けた突き台の上から投げ込んで仕留める原始的な漁法である。カジキ類は旗魚とも書くように、海面すれすれのところを遊泳する習性がある。種により、背鰭、尾鰭を水面上に出す出し方が異なっており、また、鰭の形態から種を判別出来るという。魚影を発見したら、全速力で近づき、銛を打てるだけ近づいて打ち込むのである。揺れる船上から正確に打ち込むには熟練を要した。マグロ延縄でも混獲される。
 バショウカジキを除き何れも全長4mに達する。八戸地方で最も多いのはマカジキである。肉色の鮮やかなマカジキを最上とする。
 地方名:マカジキ:マカ、オカ(八戸)
      バショウカジキ:バショウ(八戸)、トビウオ、トビシイラ(陸奥湾)
      クロカジキ:クロカワ(八戸)
      シロカジキ:シロカワ(八戸)


メカジキ科
 メカジキ
 マカジキ科とは、腹鰭を欠くことと、剣状の上顎断面が扁平で著しく長い点及び尾柄隆起が1条である点で異なる。第1背鰭は高く鎌状を呈する。肉は白っぽく脂肪分に富む。肉を薄く切って塩漬けとし、後で酢をかけて食べる「切り漬」は八戸地方の名物で、口に入れるとトロリとして絶妙な味という。カジキ類中最大で全長4.5mに達する。
 地方名:メカ、アブラボウ(八戸)


サバ科
 サバ、カツオ、クロマグロなどを含む重要資源である。

  マサバ ゴマサバ
 ゴマサバはマサバよりも暖海性で体の断面が丸く、側偏するマサバと区別される。本県では太平洋沿岸での旋網による漁獲が大であり、定置網等でも漁獲される。
 昭和40~50年代がサバ漁の最盛期で、昭和53年には八戸で約45万トンもの史上最高の漁獲があり、旋網漁業の全盛期を築いた。漁場は道東海域から岩手県北まで魚群を追いかけて船団が移動して漁獲する。 八戸で漁獲されるサバは殆どマサバで、しかも、脂の乗った秋鯖であるところから極めて好評を博した。
 しかし、昭和59年以降、漁獲量は数万トンと資源の低迷が続いている。加工業者は北欧産大西洋サバを輸入してしめサバ等の加工原魚としている。塩焼き、味噌煮、煮つけ、しめサバ、サバ寿司など。
 地方名:マサバ:ツツサバ(大型)、ヒラサバ、ホンサバ(八戸)
      ゴマサバ:マルサバ(八戸)

ヒラソウダマルソウダ、ハガツオ
 ソウダガツオ類で丁度マサバとゴマサバの関係にあり、ヒラソウダは側偏形、マルソウダは円筒形である。夏の定置網に良く乗る。しかし、サバよりも鮮度が落ちやすく生き腐れとなるため魚価が安い。しかし、氷じめとして持ち帰ったものは充分刺身で賞味出来る。マルソウダは血合肉が多く、鰹節の代用品となる。何れも全長40cmほど。
 ハガツオは多くはない。体背面に多数の縦縞があり、名前の通り、両顎歯、口蓋骨歯は強い。
 地方名:ヒラソウダ:ヒラアジ(平舘)
      マルソウダ:ガズ(鰺ケ沢、龍飛)、カツ(下北)、ソウダンポ(八戸)
      ソウダガツオ類:フグラ、フグラッコ(八戸)、カツオ(平舘、下北)
      ハガツオ:キツネガツオ(八戸)

 カツオ
 黒潮に乗って北上してきた群れは8月中旬から9月にかけて本県沖合に姿を現す。その後尚も北上を続けるが、親潮の南下と共に10月末には本県沖合から姿を消す。昭和の初め頃までは本県沖合でも1本釣で漁獲されていたが、その後群れが薄くなり今は廃れてしまった。
 カツオと言えば初カツオがもてはやされてきたが、北の海で十分に脂を蓄えた戻りカツオ(下りカツオ)こそ本来のカツオの味であろう。南方で漁獲される脂の少ないものが大量に鰹節に加工されるのである。
 地方名:カズ、ホンガツオ(八戸)

 クロマグロ
 一般にマグロと称される。名の由来は体が真っ黒であるところから来ている(真黒)。日本列島沿岸に産する唯一の大形マグロ類であり、また最も美味である。全長3mに達する。
 明治30年代から大正時代にかけて本県沿岸ではマグロ大謀網で大盛況を呈した。最初に大謀網が成功したのは宮古の人福士喜伝治氏の尽力によるもので尻労と大畑の佐助川沖合に建て込まれたものであった。下北では大豊漁の記録があり、それを記念した碑が大畑佐助川と尻労に現存している。
 近年では、大物を狙う海峡での一本釣漁や沿岸の定置で小マグロがとれる程度で往年のにぎわいはない。近年の大間沖でのマグロの最高値は平成12年12月29日漁獲の202㎏、1本2,020万円であった。この記録は史上最高値であり、今後も破られないであろう。近年の最大個体は平成6年12月釣獲の440㎏である。


写真 クロマグロ
 
 津軽海峡産.
 大間町漁協に水揚げされた300㎏あまりの大物.


写真 大畑町佐助川の鮪大豊漁記念碑(八大龍王).
 漁の神様として現在も尊敬されている.裏面に碑文がある.

「八大龍王碑文」
 佐助川ハ最良無比ノ鮪漁場、宮古ノ人福士喜伝治ノ撰定ニ繋ル、初メ山崎卯之助、河野栄蔵ノ使嘱ニ応シ、探険百万此地ヲ相シテ業ヲ開ク、時維明治三十二年陽春吉祥日也、爾来年次大漁ヲ累ネ、地方克ク其沢ヲ受ケヌ、亦永ク応ニ極リナカルヘシ、噫是斯業ニ熱中シテ造詣深ク、独特ノ妙見アルニ因ルト雖、亦洵ニ竜神殊恩ノ無量ノ致ス処、茲ニ恭シク奉祭シテ、長ヘニ加護ヲ仰クト云爾.
 明治四十年五月樹也

 「尻労鮪萬本祝碑文(八龍神 石碑)」
 嗚呼偉ナル哉、尻労大謀網ノ豊漁ヤ実ニ山崎卯之助、村田鉄蔵、河野栄蔵ノ共同事業タリ、明治三十年之ヲ角網ニ首メテ次年大謀ニ更ム、福士喜伝治謀主タリ、福士氏ハ宮古ノ人夙ニ斯業ニ名アリ、某ノ来タルヤ字小歌沖ニ創設シ、再三流亡ノ厄ニカカリ、三十三年狐崎ニ移シ、苦心惨憺更ニヒヤ島ニ転シ、三十五年大漁ニ大漁ヲ累ネ、五月一日萬本ノ慶ヲ祝スルヲ得タリ、佐助川ソノ他最良ノ漁場ハ何レモ氏ノ撰定セル処ニシテ、本郡大謀ノ元祖ト謂ヒツヘシ、時維征露ノ大軍連戦連捷シ、吾等又連年ノ萬獲実ニ一国一家ノ大慶事、以テ大イニ誇ルニ足ルヘシ、茲ニ刻シテ氏ノ功業ヲ伝フ  征露二年五月(明治四十年)


タチウオ科
 タチウオ
 日本海沿岸で夏から秋にかけて定置、夜釣り等で混獲される程度である。また、本県でとれるのはせいぜい40~50cmの小型のもので ある。成魚では全長1mを越す。夏の夜、イカ釣などで沖に出た時、背鰭を波状に波打たせて体を垂直に立てて索餌している様子を観察出来ることがある。口は大きく、犬歯状の鋭い歯をもつ。体は扁平で無鱗である。昔、体表の銀白色の色素を模造真珠づくりに用いたという。
普通の魚と違って背鰭をよく動かすため背鰭基底の直下に血合肉がある。刺身に卸す際は皮つきとする。皮は固いが美しい造りものとなる。関西では、塩焼、ムニエル、焼きなます、煮つけなど好まれる。
 地方名:カ(ガ)タナ(一般)、カタナバ(陸奥湾、下北)、ヨラリ(大間、鮫)


 イボダイ科
 メダイ
 幼魚は浮遊物に付随する習性がある。30cmくらいから生活圏を次第に底層に移し、底曳網、鱈刺網、延縄等で漁獲されるようになる。本県では日本海で秋頃よく混獲されることがあるがやや稀である。肉は白身で脂が乗り刺身で美味である。
 地方名:アブラボ(ウ)(鰺ケ沢)


ハゼ科
 ハゼ科魚類は本来熱帯性であり、温帯に適応したもののみ本県に分布する。種数は多く、39種(内、淡水性5種を含む)を数える。この内、食用とされるものは少なく、マハゼ、アカハゼ程度である。全長10cm以下の小型種が殆どである。
 食用とはならないが、第1背鰭を消失した退化傾向の強い小型のハゼでミミズハゼ属魚類について特記しておく。
  コマハゼ、ミミズハゼ、オオミミズハゼ、ヤリミミズハゼ、ナガミミズハゼ、ナンセンハゼおよびカワリミミズハゼの計7種を算し、これらは殆どが本県日本海、佐井が北限となっている。カワリミミズハゼを除き潮間帯に生息するもので、中でも干潮時には空中に露出する上部潮間帯を好んで生息するものがある。オオミミズハゼ、ヤリミミズハゼ、ナガミミズハゼなどで、龍飛、牛滝の大荒川、茂浦などの波あたりの強い玉石が堆積した海岸の礫間で発見されている。皮膚呼吸が発達しているものであろう。

 アカハゼ
 内湾の泥深い処に生息するやや大形のハゼで20cm近くになる。シャコの刺網で混獲される。油川方面で「グンズ(ジ)ガサエビ集ばったて何出来るだば」という言葉がある。昔はグンズ、グジ(アカハゼ)、ガサエビ(シャコ)は沢山にとれ、市場価値があまりなかったことからものの役に立たないものという程の意味で用いられたという。ガサエビは現在花見に欠かせぬ必需品であるが昔はそれほどの価値あるものではなかったようである。

 リュウグウハゼ
 食用に供されるものではないが、陸奥湾では水深10m以浅の転石がある岩礁地帯に多産する。普通のハゼと異なり、海底近くを遊泳していることが多い。透き通るようなピンク色の地肌に黒色の5横帯がくっきりと入っており北のハゼの中では最も優美なものである。陸奥湾以外では生息水深は深く(40~80m) 、岸壁等で簡単に釣り上げられるのは陸奥湾位のものである。平成7年8月18日、しんかい2000で潜航した際、小泊沖西津軽堆の着底地点(水深81m)で1尾確認出来た。
 早春に、転石の下に産卵し、真っ黒に二次性徴を現した雄親が孵化するまで守る。冬の間は、転石の下で身動きせず長い冬を冬眠状態で過ごす。
 似たものにキヌバリがあるが、横帯は7本と多く、生息場は更に浅い。日本海、龍飛から湾内上磯~大間に見られる。
 キヌバリの地方名:ゴダロ(龍飛)、ワッカ、ワカ、アカヒャク(砂ケ森)、ハチマキ(牛滝)、ゴマヨ、トモヨ(佐井)


写真 リュウグウハゼ.
 平内町茂浦産.陸奥湾ではごく浅い転石帯に多く見られる.優雅なピンクの体色は名前にふさわしい.

 

 


 マハゼ
 ハゼの中では比較的大形となる。全長20cm。 内湾や川口の汽水域に見られ、秋口に釣の対象となる。冬場に泥底に掘ったU字形の穴の中で産卵する。
東京湾でのハゼ釣りは有名で本種である。
 天ぷらで賞味する。


タウエガジ科
 本科魚類は北方系のもので18種が知られる。しかし、食用となるものは少なく、練製品の材料となるナガヅカ程度である。本科魚類の最大の特徴は背鰭が1基であり、軟条が退化して総て棘条からなる点にある。ダイナンギンポ属など例外的に後端に軟条を持つものがあるが、この点は型的なスズキ目魚類とは全く逆の配置となっており、棘条が軟条に先祖帰りしたものと考えられる。この特徴は本科を含むハダカオオカミウオ科、ニシキギンポ科、オオカミウオ科、ボウズギンポ科などのゲンゲ亜目魚類に共通する共有形質とされる。また、冬場に産卵し、産み出した卵を体で巻つけたりして大卵塊とし、雌雄が、多くは雌親が孵化するまで体で巻いて保護する習性がある点も著しい特徴となっている(塩垣、1993; 写真18, 24)。

 ハナジロガジ
 全県沿岸のガラモ場、コンブ林、アマモ場等に生息しており、胸鰭を用いて海底から泳ぎ上り葉体上の小甲殻類を捕食する。
 本種の属するオキカズナギ属魚類は背鰭後端部のもののみ強い棘条であるが他は柔らかくしなやかな棘条からなる。型的なスズキ目魚類では背鰭前部に棘条が、後方に軟条が発達するが本種では全く逆の造りとなっている。和名は吻に馬の鼻面のような白斑があることから命名された。
 陸奥湾では田植が終った頃、藻場を曳く藻曳網で本種が多獲される。食用の外、昔は湾内でのスズキ延縄用の活餌としても利用された。全体に骨が柔らかく、塩焼、天ぷら、唐揚げで骨ごと賞味される。蓬田では本種の塩焼は湾内の魚で最も旨いとの評価がある。全長20cmに達する。
 陸奥湾では本種に似たものにガジ、オキカズナギがあるが稀である。
 地方名:アブラガジ(湾内一般)、モガズ(ジ)(後潟、茂浦)


写真 ハナジロガジ.
 陸奥湾産;上下ともメス.吻背面に白斑があり馬の鼻を思わせる.オキカズナギ属魚類はほかのギンポと異なり胸鰭を用いて泳ぎ上がり,体を立てて藻上の小甲殻類を摂餌する習性がある.湾内藻場に最も普通.

 

 


ニシキギンポ科
 本科魚類は体が著しく側扁し、腹部が長く肛門が体のほぼ中央に位置する。著しい特徴は第4腹椎骨以降の腹椎骨の左右の肋骨が癒合して血管棘となっている点である。腹腔が長く消化管は真直ぐである。背鰭の棘は著しく強く手が切れるほどである。

 ギンポ
 ギンポと名のあるものに系統を異にする2分類群がある。1つは、熱帯を起源とするヘビギンポ科、イソギンポ科、コケギンポ科などのグループであり、2つには亜寒帯ないし寒帯起源の北方系ギンポ類である。名前がギンポと付いていることから一般の人には同じ系統の魚と思われがちであるが実は大違いである。
 そもそも、ギンポは漢字で書けば「銀宝」であり、戦前までは東京方面でギンポウと呼んでいた。何故、「銀宝」であるのか?それは、その産卵生態にある。北方系のギンポ類は例外なく卵膜に粘着性があり、産み出された卵塊を雄あるいは雌親が体で巻きつけて1つの球状の大卵塊に整形し、孵化するまで守り続ける習性がある。発生が進んで発眼したものは全体に銀白色を呈する所から、親魚が身を挺して守り抜く卵塊を「銀の宝物」と見立てたものである。このことからも、昔の人は自然をよく観察していたことが知れる。
 全県沿岸に産する。陸奥湾では沖合のホタテ養殖籠の中に初夏の頃よく入っており、味噌汁にぶつ切りを入れて食べる。通常は海底に潜って生活しているが、餌となる付着物の多い養殖籠はお気に入りで、深い海底から泳ぎ上りチャッカリ住家としたものである。
 太平洋沿岸では12月頃、産卵のため平磯の岩場の穴に入っている処を夜潮が引いてからヤスで突きとる。この時、球形の乳白色の卵塊も発見されるがこれをガタの握り飯という(白糠)。全長30cmを越す。漁獲物は煮干しとし、保存しておいて蕎麦のダシに用いられる。
 江戸前では有名な天ぷらだねとされるが、活魚でなければ味が落ちるという。旬は桜の花時という。
 地方名:ガタナ(階上)、ガタ(白糠)、ガズナギ(一般)


写真 ギンポ.
 陸奥湾産.全県沿岸に産するが,成長すると沖合に出る.陸奥湾では沖合のホタテガイ養殖籠をえさ場・すみかとしている.

 

 


 タケギンポ
 ギンポに酷似するが尾鰭後縁が白くないこと、背鰭の黒色斑が台形であり、三角形ではない等により区別出来る。生息場はギンポより浅く水深5m以浅の藻場や岩場であり、陸奥湾至る所で見られる。全長20cmと小型である。本種とギンポはシーボルトのファウナ・ヤポニカの記載以来、日本では約100年間混同されてきた。
 食用としない。
 和名の由来は体色が竹の皮を連想させる所から来ている。

 ハコダテギンポ
 本種は前2種とは退化的な1棘からなる腹鰭が全く消失している特徴がある。藻が繁茂した岩場に生息しており、特に緑のスガモ間に生息するものは全身鮮緑色に、褐藻類間に生息するものでは赤褐色と体色の2型を載せている図鑑が多い。
 しかし、冬場の産卵期には雄では目から頬にかかる銀白色の帯が消失し、背鰭前部に眼径大の1個の瑠璃色の斑紋が現れることは知られていない。


ゲンゲ科
 本科に15種が知られるが、殆ど深海魚である。

 タナカゲンゲ
 日本海深海に産する。全長1m近くになる大形のゲンゲである。本県では余り利用されていないが、山陰地方ではババアといい、鍋料理に用いられる。
 地方名:ゴンダラ(岩崎)

 ノロゲンゲ
 日本海の底曳で混獲される。皮膚が寒天質で厚くぶよぶよしているが肉は白身で淡泊である。前種同様、本県ではあまり賞味されることはないようである。全長40cmあまり。
 しかし、山陰地方ではズワイガニ漁で混獲され、冬の鍋料理には欠かせない(醤油仕立て)。鳥取でドギ、兵庫でトウロといい、寒天質の皮膚の独特の味わいは忘れ難いものである。


カサゴ目
フサカサゴ科
 ソイ、メバル類を含み、26種が知られる。多くの有用種を含む。

 ハツメ
 日本海、太平洋の底曳で漁獲されるもので特に日本海に多い。全長30cmに達する。体は黄色がかった朱色で、肉質は柔らかい。メバルの中では評価が低いようであるが煮つけ、塩焼が良い。
 本種は青森県産標本によって大正4年に新種記載されたもので、4個体の標本はアメリカのカーネギー財団博物館に保存されている。ただし、産地は青森とあるだけで、詳細は不明であるが恐らく日本海の底曳ものであろう(Jordan and Thompson,1914)。
 地方名:ウグイス(鰺ケ沢、小泊)、キンギョ(深浦、鰺ケ沢)、ハチメ(鰺ケ沢)、アカスイ(八戸)

 ヤナギノマイ
 ハツメよりも体高が高く、体色も紫がかった赤黒でドギつい。日本海沿岸の200m以浅の岩礁域で主に1本釣で漁獲される。地元ではドギつい体色のためか敬遠され評価は低い。しかし、煮つけで美味である。全長30cm。
 地方名:ヤナギ(龍飛、鰺ケ沢)、ヤナギノメ(鰺ケ沢)

  エゾメバル
 地味な黒褐色の体に、微小な青白点を散らす。沿岸性が強く、昭和40年代には陸奥湾でもごく普通種であったが、今では珍しい位となった。地方名のガヤは釣れ出すとうるさい位に釣れることからという。肉質は柔らかく、煮つけで美味。全長25cm。
地方名:ガヤ(陸奥湾、下北)、カスリガヤ(牛滝)、ミノガサ(岩崎)、ゴモゾイ(小泊)、 ムギマ(鰺ケ沢、小泊)

 メバル
 沿岸性で、全県沿岸に産する。体色は変異に富み、黄褐色から黒褐色を呈する。全長30cm近くになるが、本県ではあまり大きくならない。夏から秋にかけての夜釣りの好対象魚である。肉質はよく締り、刺身、塩焼、煮つけと美味である。
 地方名:ガサ(鰺ケ沢)、ガヤ(日本海~陸奥湾、八戸)、クロガサ(深浦)、コダルマ(八戸)、ソラフキ(脇野沢)、メハチ(下北)

  ウスメバル
 全県に産するが、小泊、下前沖の水深100m前後の岩礁地帯が主漁場である。刺網、1本釣で漁獲され、昭和50年代初頭までイカ釣漁業に並ぶ重要な資源であった。刺網の許可期間は産仔後の6~8月の3カ月間であり、夏場 の漁である。最盛期には西海岸だけで1千トン近くの漁獲があったが近年では資源が低迷しており、主に1本釣漁で数十トン程度と激減した。
 築地市場では小泊のメバルは海峡メバルのブランドで有名である。東京市場では赤メバルと称する。全長30cmを越す。
 肉質は固く締っており、刺身、塩焼、煮つけで美味。
 地方名:アオマナコ(白糠)、アカガサ(深浦)、アカガヤ(茂浦)、アカスイ(八戸)、ツキ(鰺ケ沢、今別、牛滝)、ツキゾイ(下北)、テリ(岩崎)、テンカラ(小泊、尻労))、メガラ(八戸)
 県統計では平成8年までヤナギメバルとなっているのは本種のことであるので注意を要する。


写真 ウスメバル
 増養殖研究所で生産したウスメバル稚魚.飼育して約3ヶ月で全長は50mm,すでに親と同じように体側に5本の横帯が形成されている.

 

 

 

 アコウダイ
 バラメヌケの若魚に似るが、頭部背面に暗色横帯がないことと、眼窩下縁の前後に棘があることにより区別される。全身鮮紅色を呈する。全長60cmに達する大型魚である。太平洋深海に産する。
 地方名:アコウ(八戸)

 バラメヌケ
 太平洋での底曳、延縄で普通。メヌケ類の中では体高が最も高く肥厚する。全長40cmに達する。刺身、煮つけで美味。
 マダイ、チダイなどタイ類を殆ど産しない南部地方では体色が鮮紅色のメヌケ類は祝儀魚として重用される。
 地方名:ガマ、ガマサガ、ガマス(八戸、白糠)、バラ(サガ)(下北)、バラメヌケ(八戸)


写真 バラメヌケ(太平洋底曵).
 オオサガよりも小振りであるが本種もキチジと並ぶ赤物の祝儀魚.

 

 

サンコウメヌケ
 太平洋沖合での底曳、延縄で漁獲される。 メヌケ類の中では体高が最も低く、体は金色がかった鮮紅色を呈する。漁獲量は最も少ないが、味は最高とされる。全長50cm。
 地方名:キンサガ(キンメヌケ)(下北、八戸)、サンコウ(サンゴメヌケ)(下北)、ヒカリサガ(下北、八戸)

 オオサガ
 メヌケ類中最大で全長60cmを越す。水深千mもの太平洋深海に進出しており、底曳、立延縄等で漁獲される。水産試験場の深海漁場開発試験では小川原湖の沖合にある小川原断層の斜面をうまく曳くと本種が多くかかり、浮袋が膨らんで浮力がつくため、袋網が音を立てて浮き上がったものである。目玉も殆どのもので飛び出す。 刺身、鍋料理、粕漬、味噌漬など。
 地方名:オオサガ、オッコ、オオッコ、オッサガ(八戸)、オオメヌケ(下北、八戸)、コウジン(下北、八戸)


写真 オオサガ
 太平洋深海底曵.太平洋沿岸での赤物の代表的なもの.

 

 


 タケノコメバル
 沿岸性のもので、体の地色が黄色がかっている点に特徴があり、暗褐色の斑紋を多数持つ。筍の皮を連想させる処から来た和名と思われる。通説では旬が筍の出回る頃であるからという。南日本のものである。
 陸奥湾でも昭和40年代には結構とれていたものであるが、最近は殆ど見かけない。
 地方名:キゾイ(野辺地)、キリゾイ(陸奥湾)、デクロゾイ(陸奥湾)、モガラス(脇野沢)、モゾイ(今別、野辺地、牛滝)

 クロソイ
 一口にソイ・メバルというが、その違いは漠然としている。しかし、一般的にはメバルは体が側偏形であり、頭部にある棘の発達が弱いが、ソイ類は体幅が中庸に肥大しており、頭部によく発達した棘をもち、粗雑な印象を与える。しかし、この呼び名は厳密なものではなくキツネメバルのようにソイ類としなければならないものにメバルと名づけているものもあるので注意を要する。
 産業上重要なソイ類は本種とキツネメバルの2種である。本種は幼期には地色は黄緑色がかった明るい色であるが、成長に連れ体色が全体に黒くなる。全長50cmを越す。幼魚期には浅海の岩礁地帯や藻場等で過ごすが成長にともない深みに去る。晩秋に交尾し、5月に産仔するため浅海に来て6-7mmの仔魚を産 仔する。この頃の雌親の腹部ははちきれんばかりに膨れ、卵巣は発眼した仔魚で充満しており最も不味の時期である。稚魚期から全長5cm位までは沿岸を漂流する流れ藻に付随する。
 旬は冬場とし、三枚に卸してぶつ切りにしたものにさっと塩をふり、野菜と共に塩仕立てで煮込んだ鍋は最高の味である。クロソイを刺身に卸す際、筋肉中に黒い胡麻粒状のものが多数埋まっていることがあり、消費者から苦情が持ち込まれることがある。これは寄生虫(へん形動物門吸虫綱ジスト マの類)の後期幼生(メタセルカリア)で最終宿主は海鳥のヒメウという。魚の筋肉中に寄生した幼生は魚の異物反応によってメラニン色素で覆われて黒くなる。寄生虫そのものは人体には何等影響しないものであるが、見た途端に食欲をなくしてしまうものである。不思議にクロソイで発見されることが多い。時期的なもので、夏から秋にかけての期間に見られる。なお、この寄生虫は北海道、青森の日本海産のもので多く見られ、大平洋産では殆ど問題とならない。
 地方名:スイ、スイカラ、スイコ、スガラソイコ(八戸)、ナガラ(ゾイ)(一般)、ネゾイ(陸奥湾)、ハマオトコ(むつ)、モガラス(陸奥湾)、ワタリゾイ(岩崎、鰺ケ沢、茂浦) 

写真 クロソイ
 5~6月ころ流れ藻に付随する稚魚期のクロソイ.

 

 

 

キツネメバル
 クロソイとは体色が小豆色ないし暗紫色を呈し、体側に幅広い2暗色横帯を持つこと、眼前骨に棘が発達しないこと(クロソイでは3棘あり)等で容易に区別される。クロソイよりも少なく、また高価である。
 稚魚期にはクロソイのように流れ藻に付随することは少ない。幼魚期には体側に幅広い黒褐色の2横帯がはっきりしている。
 肉質はクロソイよりも柔らかく刺身で賞味される他、鍋、塩焼もよい。
 地方名:アズキゾイ(岩崎)、クラカケ(龍飛)、ネゾイ(鰺ケ沢、平舘)、マゾイ(一般)


写真 キツメメバル
 小泊村産.マゾイと称されクロソイよりも喜ばれる.

 


 ムラソイ
 黒褐色の地肌で、胸部、腹面に小褐色班を散在させたムラソイは南日本に見られる型で、北日本では黄褐色斑型のオウゴンムラソイ、赤色斑型のアカブチムラソイと3亜種の扱いをされてきた。本県ではムラソイは少ない。
 浅海岩礁域に産するもので、岩の下に生息する甲殻類のカニダマシ類を専食しており、釣り上げるとすぐ水分の多い糞をすることから名づけられた地方名が多い。浅い岩場での刺網で漁獲される。全長20cm前後。惣菜魚。
 地方名:クソガサ(鰺ケ沢)、クソッピリ(脇野沢)、クソビジ(今別)、ビチクソ(佐井)、ゴソ(陸奥湾)、ハジガラ(ハチガラ)(龍飛、三厩)、ビッキゾイ(小泊)、ボッケゾイ(龍飛)、モッケゾイ(牛滝)

 イズカサゴ
 日本海、太平洋の底曳で漁獲されるが多くはない。全身赤く、頭部は縦偏している。全長35cm。惣菜魚。
 地方名:アカドク、ドク(岩崎、深浦、鰺ケ沢)、カサゴ(三厩、今別)、ハナオコゼ(赤石)

 キチジ
 全身朱赤色を呈し、身は柔らかいが背鰭、頭部の棘は鋭い。船上の作業員はこの棘に刺されるのを恐れる。太平洋深海の最重要資源である。底曳水揚げ収入の殆どは本種に依存しているといっても過言ではない。全長30cm余り。
 白身であるが独特の肉質であり、脂分が多く塩仕立ての吸い物、煮つけ、塩焼、鍋物など何でも良い。
北の海の幸の逸品であり、遠来の客があった際には是非奨めたい一品である。
 地方名:キンキン(一般)、キンギョ(10cm未満の小型魚)(八戸)


写真 キチジ
 太平洋深海底曵.脂肪が多い独特の肉質で鍋物・塩焼きとなんでもよい.北の海の幸の逸品である.太平洋底曵の最重要魚種である.
 

 

 


オニオコゼ科
 オニオコゼ
 全身にボロをまとい、岩か、海藻の切れ端に化けたか?実にうまい隠れ忍術の使い手である。環境の色に合わせ、黄色から赤、黒までさまざまに変身することができ、また、砂礫に潜り、頭部の一部だけ出していることもある。胸鰭の下端2鰭条は遊離して、まるで足の如くはい回ることも出来る。
 背鰭には毒針と化した棘条が17本、戦艦の高射砲よろしく右に左に狙いをつけて近寄る外敵に向けられている。目は丸く突き出しているが、前後はひどく凹入しており、口はほぼ垂直に上を向いた異形の相。何も気づかないで近寄った小魚をパクッとひと飲みにする。日本海ではやや普通であるが、本来南日本の魚である。異形の相、背鰭の毒等、怖いもの見たさの心境と相まって人気を呼び、特に冬から早春の頃、トラフグ並みの超高級魚扱いである。近年、刺身、唐揚げ、味噌汁いずれも高級料亭でなければ味わえない代物となった。そのため、養殖物も出回るようになった。
 地方名:オコジ(ズ)、オコゼ(一般)


アイナメ科
 クジメ

 体の地色は暗褐色で、目より大きい淡色円斑を散らす。次種アイナメに似るが鱗が大きく粗雑な感じがある。
 潮下帯の藻の多い浅い岩場に多く、大物がよく潜んでいる。波に揺られて体をリズミカルに左右に傾けている様は、まるで岩を枕に昼寝を決め込んでいるようなユーモラスさがある。この生態から地方名イシテグラ(石手枕)が出たものと思われる。浅い所で簡単に見つかることから、海辺で育った子供には魚突きの良い獲物である。
 味は磯の香りが強く、癖があるが、味噌田楽で賞味される。全長30cm。
似たものにスジアイナメがある。こちらは側線が多いことから区別できる。多くはない。
 地方名:アオドコ(陸奥湾、下北)、アグトク(鰺ケ沢)、アブラッコ(日本海、八戸)、アミドコ(下北)、イシテグラ(八戸)、イソテナ(下北)、ハマドコ(下北)、ハゴトコ(陸奥湾)

アイナメ
 クジメより大形になる。特に北日本では大形となり全長50cmを越す。南日本ではせいぜい30cm程度にしかならない。
 クジメとアイナメの区別点として、側線が5本とあるが、実際には側線を見定めるのは難しい。しかし、腹部のものは見やすいのでまず腹側を観察すれば良い。
 晩秋に岩の窪み等に粘着卵を塊状に海草等に絡ませて産卵し、黄色の婚姻色を現した雄親が孵化するまで保護する習性がある。クジメと違って、大形魚は産卵期に浅場に来るが、その他の季節には相当深みに移動する。
 本科魚類の幼期には青色適応といって体背面が青く、側腹面が銀白色を呈し、海の表層部を生活の場とする習性がある。全長5cm程で急激に体色が褐色に変化して底生生活に移行するのである。
 陸奥湾では油目籠という籠をホタテの養殖施設の下に設置してソイ・メバルなどと共に漁獲する。本種の物陰に隠れる習性を利用した簡単な漁法である。 
 冬から春までは不味であり、旬は夏である。刺身を最上とする。醤油漬、照焼も良い。
 地方名:アブラコ(アブラッコ)(下北)、アブラメ(一般)、ワタリアブラメ(龍飛)、キロキロ(八戸)、シンジュ(深浦、鰺ケ沢)
 なお、地方名アブラメはもともと関西方面の呼び名であり、アイナメは東京近辺の呼び名である。

ホッケ
 全県沿岸に産するが主産地は北海道である。幼期には表層生活をするが全長20cm前後から水深100m程の深味で着底生活に移行する。従って、底曳網漁法が主なものである。春先3月頃のものは脂が乗って赤ボッケと呼ばれ旬の魚である。小型のものはロウソクボッケと呼ばれ、脂がなく不味であるが、養殖用の餌として利用価値がある。北海道では大形の背開きは、焼き魚として酒場で欠かせないものである。塩焼の外に、醤油漬、すり身の汁も旨い。


コチ科
 本科魚類にはメゴチ、イネゴチ、コチの3種が知られる。この中ではコチが最も普通種である。

 コチ
 頭部から尾部にかけて背面を押しつぶした典型的な縦偏形であり、側面から見ると誠に頼りない。背面観は、頭部が扁平であるためワニかトカゲを連想させる。しかし、この形態は砂浜浅所で砂に潜る習性があることから、潜砂するのによく適応しているといえる。尾鰭後半部の白く縁どられた3黒斑が著しい特徴である。全長1mに達し、コチ科魚類の中では最大種である。
 本県沿岸では日本海に多く、太平洋では稀である。岩崎では全長50cmのものも稀ではない。白身でやや硬く癖のない味から刺身、洗い等で喜ばれる高級魚である。旬は夏。
 本県でコチと称する魚は本種ではなく、多くは釣の外道でかかるネズッポ科のセトヌメリ、トビヌメリなどを指すので注意を要する。


ケムシカジカ科
 本科にはケムシカジカ、イソバテング、ホカケアナハゼ、オコゼカジカの4種が知られるが、食用価値のあるものは次種のみである。
 
ケムシカジカ
 本県全沿岸に分布する大形のカジカである。背鰭の様子はオニオコゼによく似ており、各棘間の鰭膜が深く切れ込んでいる。体は全体に粗雑であり、ザラつく。全体にうす汚れた茶褐色を呈するが腹面は青緑色を呈し、飽食しているためか大きく膨らんでいる場合が多い。
 刺網、底曳等で漁獲される。産卵期以外は水深100m前後のかなり深い所にいる。産卵期は晩秋で、岩礁域の波打ち際の浅い所にやって来て、直径4-5mmの赤橙色の大形卵を 岩の隙間等に産み付ける。卵は相互に付着して卵塊をなす。この頃、夜、明かりをつけてヤスで突きとるのを楽しみにしている処も多い。
 皮を剥いでぶつ切りにし大根と共に煮た味噌汁は旨い。肝臓からは良いダシが出る。卵巣卵、身共に飯鮨に、また、卵をサケ卵のように醤油漬として利用する。本県のカジカの仲間では最も重宝される魚である。全長35cmに達する。
 地方名:サゴカジカ(牛滝)、サルカツカ(八戸)、トウベツ(カジカ)(一般)、モカジカ(陸奥湾)


カジカ科
 北日本に多い種で、本県でも34種の分布が知られる。殆どは全長15cm以下の小型種であり、食用となるものはギスカジカ、トゲカジカ、ニジカジカくらいのものである。この内、ナベコワシとも称されるトゲカジカは北海道が本場で八戸沖底曳で稀に漁獲される程度である。オニカジカはケムシカジカと共に刺網で漁獲されるが、前鰓蓋骨の長大な逆とげのある棘は刺網から外す際の邪魔となり、食用としての価値はなく顧みられない。
 海産カジカ類で体内受精することが初めて明らかにされたのはアサヒアナハゼ(塩垣・道津、1974)であり、その後、多くの種で卵胎生の習性を持つことが知られている(アサヒアナハゼ、アナハゼ、サラサカジカ、ニジカジカ、 イソバテングなど(宗原・三島, 1986;Munehara,1988)。
 イソバテングでは卵は卵巣内で精子と会合しており、精子は卵門管内まで侵入しているが受精には至らず、産卵されて海水中に放出されて初めて受精する。それまで受精が抑制される機構があるものと考えられている(Munehara, H., K. Takano and Y. Koya, 1991)。
 アサヒアナハゼにおける交尾行動の水槽内での観察では雄の生殖突起は自在に動かすことが出来、雌の体の側面に近寄り体を90度回転して腹面を雌の体側に付け、その姿勢で生殖突起の先端を雌の生殖口に瞬間的に挿入する(塩垣、未発表)。交尾を終えた雌は岩盤(ニジカジカ、ベロ、オニカジカ、)、マボヤの体腔内(アサヒアナハゼ、アナハゼ、サラサカジカ)、カイメン組織内(イソバテング)、岩の間隙、管棲ゴカイ類群体間(ケムシカジカ)等に粘着卵を産み付けることが知られている(宗原、1999)。しかし、まだ多くの種の産卵習性は未解 明のままであり、残された興味深い分野といえる。

 ギスカジカ
 前鰓蓋骨に3本の棘をもち、最上棘が最大、腹部に大きな白色円斑を持つ。頭が大きく丸く、水底に座った姿は石に化ける魚である(英名Stone fish)。環境に合わせて、得意 の隠れ忍術を使い、石のように不動の姿勢を崩さず、餌が近寄ればパクリの忍法である。全長30cmに達する。食味はケムシカジカより劣る。
 地方名:ギス(一般)、ギスアタマ(龍飛)、サケノミカジカ(階上)

 フサカジカ
 地味な色合いの多いカジカの中にあって、本種の体色はまるで絹織物にしっとりとした色付けをした着物のような優美なものである。龍飛、三厩の岩礁海岸の藻が多く着生している浅い所に生息しており、全長5cmほどの小型のもので食用としての価値はない。しかし、十分に観賞魚としての価値はあろう。


写真 フサカジカ.
 三厩村産.岩場の藻類が繁茂する間に生息する小型種.優美な体斑紋も偽装のため.


 

 

ニジカジカ
 日本海、太平洋底曳で混獲されるもので、余り大きくならない。全長20cm前後。昔は全く相手にしなかったものであるが最近市場に出回るようになった。体は無鱗で体表から粘液を出すため、ヌルヌルしている。
 本種でも胎内受精型であることが確認されている。普段は深い所にいるが、北海道噴火湾臼尻では産卵期は5月頃で、沿岸浅所の岩礁地帯で岩盤の上に一層の密な卵群を産み付ける。本種では産卵と同時に交尾が行なわれるという(宗原・三島,1986)。
 食用としての価値は低く、せいぜい吸い物種になる程度である。
 地方名:シスコ、ススコ(牛滝)

 ムツカジカ
 本種はコラムでも紹介しているように、八戸市鮫で得られた2個体の褪色した標本によって新種記載がなされたものである。以来、多くの研究者が新鮮な成魚標本を得るべく努力してきたが、その存在は謎に包まれたままであった。
 小生が三厩・今別担当の水産業改良普及員をやっていた昭和57年10月23日、三厩村の鳴神の岩礁地帯の、いつも白波が立っている水路のような岩礁の裂け目で潜水採集をした所、多数の本種標本を得た。体腹面には白い泡に擬装した多数の白色円斑がある。このような特殊な環境にしか生息しない理由が納得できたものである。新鮮な標本を得て、それまで殆ど斑紋といえる程のものはないとされていた本種の派手な斑紋を正確に報告できたのは幸いであった(Shiogaki, 1987)。

 
写真 ムツカジカ. 
 三厩村産.体腹面に多数の小白色円班を散らす.人を寄せつけない波が岩を噛み常に泡立つような岩礁域に生息する.
 

 

 

 アサヒアナハゼ
 湾内藻場に優占する種で、雄には立派な軟骨質の突起を持った交尾器がある。魚食性が強く、ホンダワラなどの繁茂している所で藻の上に乗って獲物が近づくのをじっと待ち伏せしている姿をよく見かける。全長15cm。
 湾内の蓬田では昔、藻場での藻曳網でハナジロガジ、アイナメなどと共に大量に混獲され、煮干として利用されていたが、ホタテ養殖が盛んとなった現在、藻曳網漁は禁漁となって昔懐かしい味を味わえなくなった。
 本種と似たものにアナハゼがあるが、アナハゼは全長30cmにもなり幼魚期を除いては深味にいる。生殖期の雄は全身真っ黒となる。
 産卵生態については前述したが、交尾を済ませた雌はマボヤの出水口に長く伸びた産卵管を挿入して1-2秒で産卵を終了するという 。湾内に多産するマボヤの胎内の、しかも出水口側を利用するとは何ともうまくできている。間違って、吸水口側に産卵すれば孵化した仔魚がうまく脱出できないのであろう。
 地方名:ゴモヨ(牛滝)、バカアオドコ(三厩、今別)、ヘチョナガ(臍長の意)(蓬 田)


トクビレ科
 トクビレ

 本科には13種が知られるがこの中で食用とされるのはトクビレのみであろう。コラムでも紹介したように本種の模式標本は本県陸奥湾産のものである。県物産陳列場に干燥標本となって展示していた全長240mmの雄の1標本を貰い受けて本国に持ち帰り記載している。
 硬い鱗が骨板となって4縦列をなし体を覆う。体の断面が八角形をなすことから後述の地方名ハッカクが出た。吻が長く尖りヒゲを蓄えること、雄では第2背鰭と臀鰭が異常に高く伸び団扇のように広がるなどの特徴を持つ。日本海、太平洋の底曳で漁獲される。
 雄で大形となり全長40cmを越す。外観に似合わず肉は白身で上等。刺身や背開きにしたものに味噌を添えて焼く軍艦焼は珍味。
ジョルダンが来青した明治33年頃には青森でサチと呼ばれていたのであろう。種小名はsachi となっている。
 地方名:トビオ、トンビ、ハッカク(八戸)


写真 トクビレ. 
 ジョルダンとスナイダーが新種記載したトクビレ.オス、体長24㎝の乾燥標本(Jordan and Snyder,1901)
 

 

 


ホウボウ科
 ホウボウ
 日本海、太平洋沿岸での底曳、刺網で稀に漁獲される。次種カナガシラとは鱗が細かく肌が滑らかであること、胸鰭の内面は淡緑色で目も覚めるような美麗な瑠璃色の小円斑を散らす点で容易に区別される。この仲間は浮袋を振動させて鳴くことで有名であり、その擬音ボウボウが名の由来のようである。全長40cmに達する。
 胸鰭下端の3本の鰭条が遊離して足の働きをする。おまけに、その先端には味覚を掌る器官が発達しており、底泥に隠れている餌を探し出す芸当をやってのける。
 頭が固く鎧兜を付けたような丈夫な魚であることにあやかって、昔、子供の産まれた家では次種カナガシラとともに慶賀の膳に用いたとある。
 肉は白身で上品な味であり、刺身、塩焼、煮付け、吸い物などに利用され高級魚である。旬は冬である。
 地方名:キミオ、キミヨ(君魚のなまったもの、西海岸)、キンミョウ(龍飛)、コトブキ(西海岸、下北)などとめでたい名が多い。

 カナガシラ
 全身朱赤色を呈し、ホウボウよりも赤味が強い。胸鰭内面は多少黒ずんでいるが斑紋はない。昔は全県沿岸の底曳、刺網、延縄等で多獲され庶民の魚であったが、昭和50年代以降魚影が極端に薄くなった。冬から春先が漁期である。市場では金頭(かながしら)から「イロハかな」のかしらである「イ」とかキントの符牒が用いられている。
 本県ではぶつ切りを味噌仕立ての鍋で食べることが多い。他に、塩焼、味噌煮。戦前の上磯地方では正月料理に塩焼を出したという。漁があった時は、延縄の餌としても用いられた。全長30cm。 旬は早春。資源の悪化が著しい。
地方名:イ、イジルシ、キント(一般)、キントン(八戸)、ニンベン(八戸)、ギミ(深浦)、ダンカ(脇野沢)、ススボ(鰺ケ沢)


ダンゴウオ科
 冷水性のもので、本県では深海に産するものが多く5種が知られる。この内、最も大形となり食用とされるのはホテイウオのみである。

 ホテイウオ
 骨質の突起物を欠き、体表は滑らかである。腹部に腹鰭が変形した腹吸盤が大きく発達しており岩などに吸着できる。普段は深い所にいるようであるが産卵期の冬に浅い岩礁域に産卵のためやって来る。この時が漁期である。岩崎では2月頃、刺網やヤス突により漁獲される。味噌汁とする。これは、函館の名物料理の1つとなっている。
 卵は粘着卵で岩の隙間とか海草などに産みつけられ雄親が保護する習性がある。抱卵雌は発達した卵巣が大きく膨れて、まるで布袋様のようであることからホテイウオの和名が出た。北欧に分布する近縁種にLumpsuckerがあるが、この卵巣卵はキャビアの代用品となる。
 地方名:ゴッコ(一般)


クサウオ科
 本科魚類も殆どが深海魚であり、食用となるものは少ない。12種が知られている。

 クサウオ
 本科魚類の中では最大で全長50cmに達する。腹吸盤は小さい。陸奥湾では冬場に外海から入ってきて定置などに乗るが少ない。
 漁家では軒先などにぶら下げてカラカラに乾燥させて保存食とする。市場に出ることはない。
 近縁種にエゾクサウオがあるがクサウオよりも小型で、背鰭後端と尾鰭の癒合する部分が小さく尾鰭がはっきりしている点で区別出来る。
 地方名:ゴンダラ(一般)、ボンダラ(牛滝)

 アバチャン
 深海魚。皮膚が寒天質でブヨブヨしている。体に派手な斑紋のないものが殆どであるが本種は例外で、夏向きの水玉模様を連想させる。


ウバウオ目
ネズッポ科
 体は無鱗で体表から多量の粘液を出すため、ネバネバする。口は小さく、斜め下方に大きく伸出できる。前鰓蓋骨に逆鈎を備えた独特の棘が発達しており、釣り上げた際、これで痛い目にあった人も多かろう。一般にコチと呼ばれているもので本県に8種が知られる。岸壁等からの投げ釣りで外道として釣りにかかるものは殆どセトヌメリかトビヌメリである。また、陸奥湾中央部の深みには第1背鰭が糸状に長く伸びたハタタテヌメリを多産する。
 本県では食用としないが、東京では江戸前の天ぷらダネとして重宝される。
 地方名(総称):キス(油川)、コチ(一般)、ススコ(牛滝)


カレイ目
 ヒラメ、カレイ、ウシノシタ等の魚類は体の左右が全く違うため異体類とも呼ばれる。本県には32種を産するが北方系のカレイ類の種が多い。


ヒラメ科
 目が体の左にあるカレイ類で、右目が左に 移動するため右目の視神経は常に背側に位置する。ヒラメ、タマガンゾウビラメ、ガンゾウビラメ、アラメガレイの4種を産するが、ヒラメ、アラメガレイの他は少ない。カレイ科よりも諸種の点で原始的とされる。

 ヒラメ
 全県沿岸に産し、浅海から水深200mの沖合まで分布する。漁法も多彩であり、刺網、定置網、底建網、底曳、1本釣等で漁獲される。雌は全長40cm(満3歳)前後で成熟し、6~8月の産卵期には浅所に入ってきて長期間に わたって産卵を続ける。冬場は深みに降りて越冬する。全長1m近くに達する。ヒラメ類中最も美味。津軽の人は「タイとヒラメは殿様の魚」と言ったものである。

 本県ではヒラメの資源増大計画が平成2年度から実施され効果を上げている。種苗の大量放流と漁獲できる魚体の全長制限(35cm以上)、刺網の目合等の漁具規制、幼稚魚保護 区域の設定等の資源管理を組合せたもので、種苗生産と5~8cmの放流サイズまでの中間育 成、放流効果調査等は階上にある県栽培漁業振興協会が実施しており、年間200万尾以上 の種苗が放流されている。昭和62年に、県の魚に指定されている。平成8~14年には7年連続で漁獲量は千トンを超え、全国一の漁獲量を誇ってきた。
 晩秋から早春が旬で、脂分の少ない白身であるが濃厚な味わいである。筋肉中に遊離アミノ酸の1種であるタウリンを非常に多く含有しており甘味成分となっている。活魚で扱われることが多く、刺身、寿司ネタを最高とする。縁側と称する背鰭・臀鰭を動かす筋肉には脂が多く特別扱いされる。また、鱗を確り落した皮をさっと湯通しして、氷じめとし、細く切ってレモン汁をかけたものは酒のさかなとして逸品である。

 地方名:ヒラメは出世魚であり大きさによって呼び名が変化する(小から大へ)。
  津軽:テノヒラ-アオバ又はテックイ
  南部:ユノミ-ヘイガリ-アオバ-テックイ
     また、大ヒラメのことをオヒョウ(鰺ケ沢)、オオショウ(龍飛)という。

 アラメガレイ
 全長10cm未満の小型魚で、日本海七里長浜の水深15m以浅の浅い砂場に生息するが、一 般には知られていない。体高が高く、鱗が大きい特徴がある。食用にはしない。


カレイ科
 多くの有用種を含む。22種が知られる。

 アブラガレイ
 太平洋深海に産する。日本海には少ない。全長1mに達する。
名前の通り、肉に脂が多く煮付けなどにすれば溶けてしまい折角の魚が台なしになる。そこで生れた地方名オカダボンダシ(オカダは嫁、ボンダシは追い出しの意)は本種の料理法を知らなかった可哀想なお嫁さんのことから来ている。
 側線は胸鰭上方の湾曲部がなく、油を流したように滑らかである。カレイ類の中ではカラスガレイと共に口が大きく、目の後まで大きく裂けており、魚食性が強い。昔は脂を肝油の原料とした。多くは練製品の原料となる。普通には不味。しかし、刺身や、蒸して脂を抜いて食べる法がある。
 近縁種にカラスガレイがあるが、本種よりも更に北方型であり、多くない。
 地方名:オカダボンダシ、トケガレイ、トロ(八戸)、キバガレイ(白糠)

 オヒョウ
 本県太平洋沿岸に産するが、多くはない。全長2.5m(250Kg、30歳以上)に達する世界最大の異体類である。稀に1m以上の大型魚が漁獲されることがあるが、多くは小型のものである。
 カリフォルニア以北の北太平洋に多く、カナダ、アメリカで共同の資源管理を実施していることでも有名(北太平洋オヒョウ条約)。
 尾鰭が大きく、イルカのように湾入しており、遊泳力が大きいことを示している。英名halibut はholy(神聖な)とbutte( カレイ類)の合成語で神聖な日(holiday)に食べられたことから来ているという。
 大西洋には近縁種がおり、冷水域でも成長の速いことからノルウェーでは種苗生産された種苗から養殖が盛んに行なわれている。
 刺身が良い。欧米ではステーキに用いられる。

 アカガレイ
 カレイ類は魚市場では白い裏を表にして並べられるがアカガレイはすぐ分かる。内出血したように赤いからである。カレイ類の中では口は大きい方である。全長45cmに達する。 水深200m以深の泥底に生息し、甲殻類、クモヒトデ類を食べる。日本海、太平洋底曳網、刺網で漁獲される。日本海に多い。
 刺身、塩焼、干物、煮付けなど。冬が旬である。

 ソウハチ
 左目が完全に体の右側に移動しておらず、頭の背面正中線上に位置している点が特異であり、裏返しになっていても前種同様容易に区別できる。日本海、太平洋沿岸での底曳網で漁獲される。独特の臭みがあり、干物、塩焼とする。全長40cmになるが、本県沿岸では大きいものは少ない。
 地方名:ソウハジ(チ)(一般)

 ムシガレイ
 体側に褐色に縁どられた淡色円斑が6個背腹に規則正しく並ぶところから虫食いまだらの虫鰈とされる場合が多い。しかし、本当は蒸鰈が正しい。本朝食鑑(1697)に、「鰈<略>采鮮鰈多子者、以塩水蒸之、令半熟而取出、陰干数日、号曰蒸鰈」とある。
 全県沿岸に産するが、日本海に多い。底曳、底建網、刺網、1本釣など。産卵期は初夏であり、この頃には浅い沿岸に来る。全長40cm。
 このカレイも裏を見るだけで区別出来る。他のカレイと異なり、白い部分が少なく、鰓蓋部と腹部に限られ、体が半透明に透けて見えるからである。この特徴から多くミズクサとかミズガレイと呼ばれることが多い。しかし、肉は締り刺身も良い。京、大阪では昔から若狭カレイと称し、塩干ししたものが喜ばれる。高級魚である。旬は冬である。
淡泊な味であることから南部地方では妊婦に食べさせていた(サントガレイ)。
 地方名:サイベ(陸奥湾)、サイバ(陸奥湾、八戸)、サントガレイ(鰺ケ沢、八戸)、サンバメ(八戸)、ミズガレイ(一般)、ミズクサ(日本海~下北)

 ホシガレイ
 次種マツカワと同属のもので、よく似ているが、鰭の模様が異なる。本種では円形の模様であるのに対してマツカワではスジ状となっている。鱗が大きく粗雑な感じがするため松の皮を連想させるところから松皮である。両種ともに無眼側に小黒点が散在する。全長60cmに達する。体高が高く肉厚であるが骨格も骨太であるため肉の歩留は他のカレイに比べて落ちるという。産卵期は冬で、卵は直径1.6mmとかなり大きい。雄は無眼側が黄色味 を帯びるが雌は白い。雌が大形となる。
 東北以南東シナ海まで分布し、マツカワに比べて南方種と言える。マツカワ同様、栽培漁業対象種として種苗生産研究がなされているがヒラメのように水槽内で自然産卵による採卵ができず、卵を産んでも未受精卵がほとんどであり、採卵技術に問題のある種である。浮遊生活期の稚魚は尾部を除き全身真っ黒で、イシナギのように浮遊物に擬態する習性がある。カニ類を専食する変わった食性を示す。
 資源は非常に悪化しており、ヒラメよりもかなり高価な高級魚である。刺身、煮付けなど。
 地方名:タカノハ(深浦)、マツカワ(岩屋)、ワシガレイ(深浦)

 
写真 ホシガレイ.
 階上町産.カニが好物の変わった食性である.全長60㎝を超す.
 

 

 

  マツカワ
 ホシガレイよりも大形となり全長70cmを越す。三陸沿岸から北海道に多く産するが前種同様資源は枯渇状態にある。岩手県、北海道では栽培漁業の有望種として技術開発中である。
地方名:タカノハ(陸奥湾、鰺ケ沢)、タンタカ(八戸)、マスガレイ(陸奥湾)、ムギガレイ(八戸)、ワキガレイ(北金ケ沢)

  メイタガレイ
体高が高く体は菱形をなす。目は吻端近くに位置し、著しく前位で大きい。全県沿岸に産する。底曳網、刺網、底建網などで漁獲される。全長30cmに達するというが、本県ではせいぜい25cm程度にしかならない。南日本のカレイである。表皮に独特の臭気があり、松葉、ヨードの匂いがするというが、本県では横浜でタバコガレイという。そのため、料理は皮をはいでからというのが魚の通である。小さいので、唐揚げにすることが多く、美味。
地方名:スズメ(鰺ケ沢、尻労)、タバコガレイ(陸奥湾)、タマゴガレイ(陸奥湾、下北)、ビッキガレイ(陸奥湾)、マメガレイ(深浦)、メダカ(茂浦)、メダマガレイ(深浦)

  アサバガレイ
主側線の外に後頭部に分岐した副枝を持つ点が顕著な特徴となる。体高は高い。全県沿岸に産す。底曳網、底建網、刺網等で漁獲される。特に産卵期の冬場の子持ちカレイは美味。全長30cmに達する。煮付け、塩焼など。
地方名:アサバ(一般)、ウスガレイ(陸奥湾、八戸)、サントガレイ(八戸)、ダルマガレイ(八戸)、マルボン(深浦)

  スナガレイ
 吻が鋭く突出しており、頭部背縁が窪み特異なことと、無眼側の背腹縁に沿って濃黄色帯が広域に走る点で区別は容易である。冷水性が強く、全長30cmに達するが、本県では全長15cmほどの小型のものしか見られない。浅海の砂地に生息し、体色は砂色に似ている。不味であるが唐揚げ、煮付けなど。
地方名:キクバガレイ(陸奥湾)、キハダ(龍飛、陸奥湾、下北、上北)

  マガレイ
 次種マコガレイとの区別は一般の人には難しいであろう。マコガレイとの識別点は、まず鱗が大きく、粗雑な並び方をしていること、目と目の間(両眼間隔域)は狭く鱗がないこと、体の丸味が少なく撫で肩で女性的であること(マコガレイでは丸みが強く男性的)、無眼側の背腹縁に添って黄色帯があることなどである。しかし、黄色帯はないものもあるので注意が必要。以上述べたことは、ほぼ同サイズの標本を並べて比較することでよく理解される。ぜひ試して貰いたいものである。
 全県沿岸に産する。産卵期は初夏で、この時期には浅場にやって来る。卵は浮遊卵で、マコガレイの沈性粘着卵とは大いに異なる。陸奥湾で4-5月に船釣りで釣れるカレイは殆 ど本種である。全長40cmに達する。
底曳、底建網、延縄、刺網など。煮付け、唐揚げ、塩焼など。美味。
地方名:アカガシラ(陸奥湾、鰺ケ沢)、アカガレイ(青森、網羅、深浦)、クチボソ(深浦、下北)

  マコガレイ
 体は肉厚で、がっちりした男性的な感じがある。鱗は細かく、眼隔域に数列の鱗がある点でマガレイと区別出来る。大分県日出の城下鰈は有名であるが本種のことである。前種同様、全県沿岸に産する。全長45cmに達する。産卵期は海域によってかなり異なり、秋以降早く水温が低下する陸奥湾で最も早く11~12月、日本海で3~4月である。卵は直径0.8mmとかなり小さく、また、卵膜には強い粘着性があり他物に付着する。
 背鰭、臀鰭にはっきりした黒色条紋を持ったものをクロガシラガレイとして別種扱いであったが最近マコガレイと同一種であることが確認された。産卵前の子持ちガレイは煮付けで美味である。日出の城下ガレイは刺身とするが、醤油に肝臓をすり潰したものを加え、ゆずを添えて食べる。地方名にマガレイと称するところがあり、本当のマガレイとますます混同しやすい。
地方名:クキガレイ(陸奥湾)、クチボソ(深浦、脇野沢)、クロガシラ(陸奥湾、白糠)、マガレイ(日本海沿岸、陸奥湾、牛滝、下風呂)、モガレイ(陸奥湾)、モバガレイ(岩屋)


写真 マコガレイ.
 野辺地町産.有名な大分県の城下ガレイは本種のこと.九州では食用となるカレイの種類が少なく珍重する.

 

 

ヌマガレイ
 目のある側が「左ヒラメの右カレイ」の大原則を破る例外中の例外である。このような例外はヒラメ科のウロコメガレイ、カリフォルニア産のヒラメの1種などで知られている。
 本種は北太平洋全域に分布しているが、本邦産で100%が体の左に目があり全くの逆位となっている。しかし、逆位の割合は北アリュウシャン列島で68%、アラスカ南岸で58%、カ リフォルニアで55%となっており、地理的な 変異があることでもよく知られている。
 ここで面白いのは、ヒラメ科、カレイ科のそもそもの区別が目の位置にあることはカレイ目の所で既に述べたが、更に突っ込んで言うと、視神経交差の状態にある。
すなわち、脊椎動物の視神経は目と前脳(視葉)の間で必ず交差しており、硬骨魚類ではどちらの視神経が上になっているかは決まっておらず1:1の関係にある。
 しかし、ヒラメ科では目は本来の右目が左に移動して行くがこの際移動する目の視神経が必ず上(背側)に位置するし、カレイ科では逆になる。本種のようにカレイ科であって逆位の場合でも、この原則は変わらず、本来左目が右に移動するので目が左となっても左目の視神経が上になっており、その先の方の視神経がねじれている(松原、1955)。このことからも、本種がカレイ科であることが支持されるのである。
 何故逆位が生じるのかを含めて、この問題は非常に難しく、我々が種苗生産してできたものには天然界における逆位よりも非常に多くの割合で出現する。ヒラメでは逆位は少なく0.1%程度、マコガレイでは10~20%の高率で出現する。また、表は着色し、裏は白いのが普通であるが、体色異常といって表がまだらに白くなったり、裏に色素が出たりすることが多く、この問題解決のため多くの機関で悩まされている。
 本種は目の位置の点でも、又、淡水域に侵入する点でも特異であり、カワガレイとも言われる所以である。体表には鱗の変形した星状突起が多数並びザラザラしている。水っぽく肉が柔らかであるが、煮付けなど。全長40cm。 産卵期は冬で、海に下って産卵する。
 地方名:タカノハ(龍飛、陸奥湾、下北、八戸)、ネコマタギ(龍飛)、ボケナスガレイ(陸奥湾)、カワガレイ(一般)

  イシガレイ
 体は両面共に無鱗で滑らかであるが、表の背腹中央部に2縦列の結石状の鱗板があるのが本種の特徴である。小さい内は目立たない。産卵期は前種同様厳寒期であり、浅海に来て産卵する。前種との天然交雑魚の存在が知られ、昔、北海道忍路産のものをオショロガレイと新種記載されたくらいである。1cmくらいに育った稚魚は初夏に1m前後の浅い砂浜海岸で育つ。
 全長40cmに達し、東京では刺身を重宝するが味には癖がある。
 地方名:イシカレ(一般)、イシモチ(陸奥湾)、セーダ(ガレイ)(下北、三沢、八戸)、セタ(セダ)(陸奥湾)、センダ(ガレイ)(陸奥湾、下風呂)、ヘダガレイ(龍飛)、ヘンダ(牛滝)

  サメガレイ
 前種同様、鱗はないが表には粗雑な結石状の骨板を密布する。鮫肌を連想させる所から起こった東京近辺の呼称である。裏は暗紫色を帯び粘液に富む。太平洋沖合の深海に産し、底曳網で漁獲される。
 深海底に多産するクモヒトデ類を専食する。口裂は無眼側のものが大きく有眼側の2倍ある。この点もクモヒトデを摂餌するのに都合よくできている。
皮を剥いで惣菜用とする。全長40cm。
 地方名:サメハダ(八戸)、セェダ(八戸)、ゾセガレイ(八戸)

  ヤナギムシガレイ
 ムシガレイの名があるが、ムシガレイとはかなり縁は遠く別属である。体高が著しく低く、細長い。頭も小さい。次種ヒレグロの幼魚に似るが、本種では頭部の無眼側に粘液腔がなく、鰭の縁辺は黒くない。
 全県沿岸に産するが、特に日本海に多い。底曳網で漁獲される。余り大きくならず、全長20cm未満のものが殆どである。産卵期は真冬で子持ちガレイは特に珍重される。
 身が薄く、普通塩干しにされる。山陰地方では小さなものは身を多少重ねて一枚板のように干しあげる。日本海沿岸における最高級カレイである。
 地方名:アブラガレイ(蟹田)、オイラン(深浦、鰺ケ沢、陸奥湾、下北)、ササヤガレイ(六ケ所)、ジベ(シベド)(鰺ケ沢)、ソウコ(ガレイ)(岩崎)、ヤナギ(ガレイ)(一般)、ヤナギッパ(深浦、鰺ケ沢)

  ヒレグロ
 体表から粘液を出し、ヌルヌルする。頭部無眼側の背部に数個の浅い窪み(粘液腔)がある。全ての鰭が黒く、無眼側も淡褐色を呈する。全長40cmを越すというが、本県産のものは未成魚で全長20cm以下の小型が殆どである。三陸沿岸で成長したものは南千島海域で成熟して初夏に産卵するという。
 日本海、太平洋沿岸の底曳網で漁獲される。
 身は薄く、塩干しに適する。大きいものは煮付けも美味である。
 地方名:オイラン(深浦、蟹田、尻屋、野牛、八戸)、オキオバ(八戸)、タイショウ(ガレイ)(鰺ケ沢)、ナメタ(ガレイ)(深浦)

  ババガレイ
 口は小さく、唇が肥厚する。身は肉厚で、体は粘液に富む。無眼側は白いが暗褐色の小斑紋を持つものが多い。日本海各地沿岸、北海道から本州中部太平洋沿岸に産する。太平洋産のものは12月頃北海道沿岸から南下を始め三陸沿岸で3~4月に産卵する。春先刺網な どで漁獲されるものは産卵親魚である。全長60cmに達する大形のカレイである。 八戸では産卵前の子持ちガレイを特に重宝し、煮付けとして正月魚とする。太平洋岸での最高級カレイである。
 地方名:ウバ(オバ)ガレイ(八戸)、オオバガレイ(八戸)、ナメタ(一般)、ババ(一般)、マンクロ(ウ)(鰺ケ沢)


ウシノシタ科
 本科魚類は南のもので本県にはクロウシノシタとゲンコの2種を産すのみ。ゲンコは日本海底曳で混獲されるが小型で利用されない。
 ウシノシタ亜目に目が右にあるササウシノシタ科と左にあるウシノシタ科の2科を産する。この関係はカレイ亜目のカレイ科とヒラメ科のそれと同様である。

  クロウシノシタ
 吻が異常に発達して口の下まで長く伸び、頭部前縁を丸く形づくる。
 西洋料理で舌ビラメのムニエルとして用いられるものは南日本産のアカシタビラメ、イヌノシタが代表的なものであるが本種も全長35cmと大形となり漁獲量も多いことから代用品として用いられるようになった。
 砂浜海岸の浅所に分布しており、産卵期は夏で、この時期に刺網でまとまって漁獲される。冬期間は深所に移動し、底曳網で漁獲される。
 地方名:ウシノシタ(一般)、ウスババ(陸奥湾)、セキ(ギ)タガレイ(鰺ケ沢、今別、陸奥湾、牛滝:履物の雪駄からか?)、ゾウリガレイ(鰺ケ沢)、ナベナゴリ(陸奥湾)、ベ(エ)ゴノシタ(八戸)、ベロ(八戸)


フグ目
 8科29種が知られる。熱帯起源のもので、本県では殆どの種が偶来種からなる。水産上重要種はカワハギ科とフグ科に多い。


カワハギ科
 カワハギ

 本県沿岸では成熟しない。南日本で生れたものが稚魚期に流れ藻に乗って北上し、夏から晩秋まで成長して全長10cm程になる。南日本では全長35cmにもなる。肝臓を珍重し、高級魚扱いである。
 水槽で飼ってみると、胃袋に吸い込んだ水を小さい口から勢いよく吐き出して底の砂礫を吹き飛ばして餌を探す習性がよく分かる。
 カワハギ科では棘条の第1背鰭、退化しつつある腹鰭がまだ残っているが、フグ科ではこれらのものは完全に消失し、尚かつ、腹部の肋骨も退化し、胃に水を一杯飲み込んで腹を大きく膨らませるのに都合よく進化している。これも、カワハギのような習性がさらに発達する過程でできたものであろう。
 魚釣をしているとすぐ集まってきて、口が小さいため鈎にかからず、餌取りの名人である。
 地方名:ギハギ(八戸)、テッテ(鰺ケ沢)

  ウマヅラハギ
 昭和50年代末から60年代にかけて、全国的に資源が増大し、定置網漁業者は本種が大量に乗網するので、ヒラメ、マダイといった高級魚に背鰭の棘が突き刺さり傷つけて商品価値を下げること、選別に手間がかかること、本種そのものは肥料にしかならず全くの嫌われものであった。しかし、それも平成に入ってから少なくなった。
 殆ど全長20cm以下の小型主体であるが早春に時として30cm前後の大形魚がとれることがある。刺身用として高値を呼ぶ。小型魚は頭をとって皮を剥いでから出荷される。
 皮は第1背鰭のつけ根の直後から刃物を下にいれ、腹部に達した所まで切り、そこで頭を引っ張ると内臓と共に皮が簡単に剥ける。
 塩煮、煮付け、唐揚げなど。癖がなく白身で美味。瀬戸内では刺身で重宝する。
 地方名:チュッチュ、セッセ、テッテ、バクチなど(一般)

ウスバハギ
 全世界の温~熱帯海域に分布するが、本県では夏場、定置網に全長40cm未満の小型魚が乗網する。成魚では全長1mに達する。
 生時には濃褐色の角形の焼き印を押したような複雑な斑紋を有するが、死魚では微小な斑紋のみが残り、全体に灰白色を呈する。
強く側偏し、下顎部が強く突出しており、特異な形態である。
 刺身、ちり鍋等。美味である。
 地方名:タイショウ(平舘)、マヅラ(北金ケ沢)


フグ科
 11種を産するが、食用となるのは以下の5種である。
「フグは食いたし、命は惜しし」という言葉があるように、フグには毒があること味は魚類の中で最高という人もあるくらいで昔から恐れつつも食べてみたい魚であった。
 一般の魚類とは相当な違いがある。まず、歯は上下2枚ずつ合わせて4枚が鋭い嘴状になっておりペンチのように固いものをかみ切ることが出来る。フグ科のTetraodontidaeは4枚の歯の意である。カワハギの所でも言及したように、腹部を膨らませるため腹鰭はもとより、それを支持する骨盤(腰帯)も完全に退化消失しており、肋骨も欠く。体を左右に動かすための体側筋が退化し、代わって背鰭、臀鰭を動かす起伏筋が著しく発達している。背鰭、臀鰭は体の後方で対在しており、主要な運動器官となっている。両鰭は左右に同方向に動かす。
 毒は特に肝臓、生殖腺(卵巣、精巣)、皮膚に蓄積され、肉には殆どない。いわゆるフグ毒(tetrodotoxin TTX)であるが、水には難溶性の神経毒であり、種類、季節により猛毒から無毒まで様々といわれる。一般には産卵期に毒性が強まるといわれる。この毒はフグの好餌であるトゲモミジガイ、巻貝などの腸内細菌が産生するもので食物連鎖によって濃縮・蓄積されるという。フグ自身も一定量以上毒を蓄積すれば危険であり、皮膚を通して排出して調節するという。
 フグを食べるには全て猛毒があると考えることが肝心である。ある種は無毒であるとか、白子は弱いとか知ったかぶりをしてはならない。同一種でも、毒量には個体差が著しく、当たらなかったといっても、別の個体に猛毒がある可能性がある。これ故、フグは鉄砲といわれる(鉄砲は数打てば当たるの意)。
 料理する際には後頭部背面から包丁を半分くらい入れ頭と共に内臓を引き出し、内臓を傷つけないようにし、皮を剥いで、肉のみを用いる。よく水洗いすることが肝心である(古諺にフグ一匹に水一石)。内臓は絶対に食べてはならない。また、筋肉にもまれではあるが強毒を持つことがある(ヒガンフグ)ので、量を過ごさないことが肝要である。

  トラフグ
 フグ科の中で最も美味であり、フグ料理の最高級魚である。また、全長70cmを越し、食用フグの中では最大となる。北海道以南東シナ海まで。
 本県では最近、日本海で延縄漁法により11-12月に漁獲されるようになった。小泊を中 心に1トン前後の漁獲であるが、下関の有名なフグ市場である南風泊市場に活魚で空輸しており、キロ1万7千円の値がつく。平均4-5キロという。
 200海里時代となってからは、東シナ海、 朝鮮沿岸での漁業が締め出され、天然物の漁獲は減る一方である。そこで、養殖物の生産が急増し、最近では天然物の量を上回っている。日本海では福井県まで養殖が盛んとなった。養殖物は無毒という。
 平成12年には中国産養殖物が大量に日本市場に出回るようになり、国内ものの市場価格の下落が心配されている。
 絵皿に花びらのようにきれいに並べられた刺身は薄く、皿の絵模様が透けて見えるという。フグチリ、フグ鍋など。冬場を除いてはあまり顧みられない。

  クサフグ
 浅海性が強く、子供の釣の外道でよくかかる。豆フグとも呼ばれ、最大全長15cm程にしかならない。6月の大潮の干潮時に大群で砂利の多い海岸に押し寄せて体を空中に露出させながら産卵する習性がある。卵膜には強い粘性があり石の表面に付着する。この頃、横浜では夜、明かりを持って浅所に集まったフグをヤスで突き取る漁法がある。
 小さいが、頭をとって皮を剥いだものを一夜塩干して焼いたものは酒の肴になる。
 地方名:コメフグ(鰺ケ沢)、スナフグ(陸奥湾)、ナシロフグ(陸奥湾)、マメフグ(後潟)


写真 クサフグ.  鰺ヶ沢町産. 
 15㎝程度の小型のフグであるが、皮をはいで一夜干したものの焼いたものはこたえられない.5~6月の大潮の満潮時、磯海岸に集団で乗り上げて産卵することは有名.

 

 

 

 ゴマフグ
 頭が小さく、フグの中では全体にスマートである。体背面は青味がかって、小黒点が胡麻を振ったように密布する。産卵期は6月頃でこの頃、昭和50年代には横浜の定置に次種マフグと共に大量に乗ったものであるが、ここ二十年ばかり大不漁が続いている。浅い砂底に粘着卵を産出する。漁があった頃には金沢に陸送されていた。全長40cm。剥きフグとして販売される。塩焼、汁物など。 
 地方名:アオフグ(横浜、野辺地)、サバフグ(脇野沢、横浜)

  マフグ
 体は全くの無鱗であり、滑らかである。ゴマフグと共に資源は悪化したままである。全長40cm。 日本海の大戸瀬などの底建網には冬期に小型のものが乗るが、この時期のものは刺身、フグ鍋として美味である。冬場の南シナ海産の大形魚はトラフグの代用品となるという。
 地方名:ナメラ(フグ)(一般)

  ヒガンフグ
 春彼岸の頃、産卵期を迎え最も味が良くなることから付いた名前であろう。もっともこれは九州、三崎方面のことであり、本県では産卵期は遅れて5~6月である。皮膚は瘤状の小突起で覆われ、棘はない。目が赤い。茶褐色の地色に眼径大の黒褐色の円形斑が密布する。余り大きくならず全長30cm前後となる。
 岩礁性の藻が多い所に多いがまとまってとれることは少ない。本県ではトラフグを除き最も味が良いとされる。
 地方名:ショウサイ(フグ)(北金ケ沢)、トラフグ(脇野沢、陸奥湾)、目アカ(フグ)(風合瀬、牛滝)、モフグ(今別、平舘)


マンボウ科
 マンボウ

 全世界の温・熱帯域に分布する。体は側偏し、明瞭な尾鰭がない。体は丸く、ここから学名のMola(石臼)が出た。全長3mにもなり、背面に長い背鰭を出していたり、体を横に浮いていることがある。クラゲを食べる。本県では主に太平洋、陸奥湾などで偶に漁獲されるが市場には現れない。肉は白く柔らかい。酢味噌で食べる。
 地方名:キナンポウ(脇野沢)、キナンボウ(牛滝)(何れも空骨病みの意)

このページの
先頭へ戻る