ヤリイカ漁獲実態
青森県水産試験場 研究報告 第2号 ( 2002 )
Bull. Aomori Pref. Fish. Exp.Stn.,No.2:1-10
我が国におけるヤリイカの漁獲実態
Present Status Fisheries of Loligo bleekeri(Cephalopoda : Loliginidae) in Japan
伊藤 欣吾
Kingo Ito
ヤリイカLoligo bleekeri(Keferstein,1866) は単年生であり,朝鮮半島から日本近海にかけての沿岸域に広く分布する(奥谷ほか,1973).本種は,漁業対象種として利用されている.しかし,ヤリイカの漁獲統計に関しては,国の漁業生産統計年報で「その他イカ類」に区分されているのをはじめ,各都道府県の統計資料においてもヤリイカとして集計されているものは少ない.そのため,日本海西南海域(北沢,1990),青森県日本海側の海域(涌坪,1988),北海道日本海側の海域(石井・村田,1976)など,限定された海域の漁獲量をまとめた報告はあるものの,全国的に漁獲実態をまとめた報告はない.そこで,全国の水産研究機関を対象にヤリイカの漁獲実態に関するアンケート調査を実施し,我が国におけるヤリイカの漁獲量,漁期,漁法などを明らかにしたので,その結果を報告する.
要 約
我が国におけるヤリイカの漁獲実態を明らかにするため,都道府県の46水産試験研究機関に対しアンケート調査が行われた.ヤリイカは沖縄,瀬戸内海および北海道東部を除く,我が国の広い海域において漁獲されていた.近年における,我が国のヤリイカの年間漁獲量は8,186~9,794トンと推定された.ヤリイカ漁業の最盛期は1月~3月の海域が多かった.また,ヤリイカは底曵網と定置網による漁獲が多くを占め,釣や棒受網によるヤリイカだけを狙った漁業も成立していた.これらの他に,ヤリイカが漁獲されるほとんどの海域において,産卵していた.また,ヤリイカの漁獲変動が気候のレジームシフトと符合している可能性が示唆された.