X線分析顕微鏡による未知材料の元素分析

八戸工業研究所のX線分析顕微鏡((株)堀場製作所製XGT-7200AHT1)は,空間分解能10 μmの微小領域を分析可能な顕微鏡タイプのエネルギー分散型蛍光X線分析装置です.金属やセラミックス等の工業材料や電子部品等の定性分析や,電子基板や樹脂にめっきした部品などのマッピング分析による元素分布および透過観察が同時に可能です.
以下に同装置を用いた未知材料の測定事例を紹介します.
未知材料が直径30 mm程度の棒材であることを想定します.まずは試験槽に入れるため,厚さ数mmに切り出します.なお最大試料サイズは340 (W) × 250 (D) × 80 (H) mmで,一度に分析可能な範囲は100 (W) × 100 (D) mmです.
この試験体を装置に入れ,
測定位置を決めてX線を照射し,発生する蛍光X線スペクトルを収集します.
得られたスペクトルをピーク分離し,対応する元素の質量濃度が得られます.なお,測定可能な元素はナトリウム (Na) からウラン (U) までです.
今回の未知材料は鉄 (Fe) が主成分で,クロム (Cr) が18.4 %, ニッケル (Ni) が8.9 %検出されました.続いて,JIS G 4303(ステンレス鋼棒)を参照します.
オーステナイト系の化学成分 (単位 %)
種類の記号 炭素
(C)
ケイ素
(Si)
マンガン
(Mn)
リン
(P)
硫黄
(S)
ニッケル
(Ni)
クロム
(Cr)
モリブデン
(Mo)
SUS304 0.08以下 1.00以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 8.00 - 10.50 18.00 - 20.00 -
SUS316 0.08以下 1.00以下 2.00以下 0.045以下 0.030以下 10.00 - 14.00 16.00 - 18.00 2.00 - 3.00
以上より,当該材料はステンレス鋼 (SUS) と考えられます.更に,モリブデン (Mo) の量が0.3 %であることから,JIS規格におけるステンレス鋼の種類はSUS304と推測されます.
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