青森農研フラッシュ 第10号

青森農研フラッシュ 第10号(平成17年8月)

  施設栽培の土壌実態と今後の管理方策 農林総合研究センター 環境保全部
  インターネットを活用した水稲の生育予測 農林総合研究センター 藤坂稲作研究部
  ぶどう「スチューベン」の果房整形法 農林総合研究センターりんご試験場 県南果樹研究センター
  経膣採卵・体外受精を活用した優良牛の生産 農林総合研究センター畜産試験場 繁殖技術部
  スギ間伐材を利用した植生基盤製造技術の開発 農林総合研究センター林業試験場 加工技術部
 

 

施設栽培の土壌実態と今後の管理方策 

農林総合研究センター 環境保全部

  施設栽培は、作物の作期拡大や品質の向上につながるなど栽培面で有利な点が多くあります。しかし、周年栽培が行われたり、多肥栽培の傾向にあることから、肥料成分の集積や養分バランスの崩れによる生理障害の発生がみられています。県内の施設土壌の実態調査では、
①硝酸態窒素の残存量が多いこと
②可給態りん酸の蓄積が多いこと
③土壌がアルカリ化の傾向にあること
など肥料成分の蓄積している圃場が多くみられます。
  このような施設土壌では、pHや電気伝導度(EC)だけでなく、石灰などの塩基類や硝酸態窒素などの養分状態に基づいた土壌改良を行うとともに、過剰施肥にならないよう施肥管理に努めることが重要となります。
  このため、当センターでは、トマト栽培における土壌環境の適正管理に役立てるため、「葉柄汁液中の硝酸濃度」に基づくトマトの樹勢診断や追肥の要否判定など生育診断技術の確立に取組んでいます。
 

  

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インターネットを活用した水稲の生育予測

農林総合研究センター 藤坂稲作研究部

  気象変動が大きい中で良食味・高品質米を安定して生産するためには、生育状況を見極めた適正な栽培管理が必要となります。そこで、本県の主力品種である「つがるロマン」と「ゆめあかり」を対象に、穂肥や病害虫防除の適期を判定する上で重要な指標となる幼穂形成期、出穂期等と良質米生産の刈取適期を予想する水稲生育予測式を作成し、予測情報をインターネットから生産者に提供できるホームページを作成しました。
  利用方法は、生育ステージについては、移植日と移植苗の葉齢を入力すると穂首分化期、幼穂形成期、障害不稔最危険期、出穂期の予測日が表示されます。刈取適期については、出穂期と㎡当たり籾数、不稔歩合を入力すると刈取始期と刈取晩限が予測されます。
  水稲生育予測情報は、※青森県農業気象情報ネットワーク(http://aomnadv.wni.co.jp/)の「水稲生育診断」で利用できます。
※現在ホームページは廃止されています。水稲生育予測はアップルネット(http://www.applenet.jp/)の「水稲生育予測でできます」(2011/8/23)

 


 

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ぶどう「スチューベン」の果房整形法

農林総合研究センターりんご試験場 県南果樹研究センター

 津軽地方で栽培されている「スチューベン」は、糖度が高く貯蔵性に優れていることから11月以降の端境期に販売され、県外市場から高い評価を受けています。
 「スチューベン」の円筒形密着果房は商品性が高く、選果や荷造り時の脱粒及び軸折れが発生しにくいことから、この果房を生産するための簡易でかつ正確な果房整形法を確立しました。その方法は以下のとおりです。

1)開花前頃(6月中旬)の摘心時に岐肩を摘除する(図の①)。
2)果粒が小豆粒大時(7月上旬)に果房の先端を1cm切除する(図の②)。次に残す果房長を12~13cmになるように果房上部の枝梗を切除する(図の③)。さらに長い枝梗を切りつめて幅6cm程度にする(図の④)。
3)小豆粒大時以降、無核小粒果を摘粒する。  
4)下から1cmの位置に線を引いた縦13.5cm、横6cmの型紙を果房にあてがうと正確にできる(写真)。




 

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経膣採卵・体外受精技術を活用した優良牛の生産

農林総合研究センター畜産試験場 繁殖技術部

  和牛の改良には、能力が判明した優良雌牛から、いかに多くの子牛を生産するかが重要となります。しかしながら、牛の能力を表す育種価成績が判明するには長期間を要するため、優良雌牛であることが判明した時にはすでに高齢で、繁殖能力が低下したり、通常の過排卵処理では受精卵の確保が出来ない場合も少なくありません。
  経膣採卵・体外受精技術は、超音波画像診断装置を用いて卵巣を観察しながら卵巣内に存在する未成熟卵子を吸引装置で採取し、体外受精により受精卵を作出する新しい技術です。畜産試験場では、この技術を利用して、すでに高齢で不受胎となっている第1花国の母牛(あおはな号)から雌雄2頭の産子を得ることに成功し、雄子牛は今年度直接検定候補牛(種雄牛候補)に選抜され、雌子牛についても繁殖素牛として高能力牛・高品質牛の生産に期待が寄せられています。
 今後、本技術を実用化することにより、種雄牛の造成及び
繁殖雌牛群の改良に大きく貢献するものと期待されます。  


 

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スギ間伐材を利用した植生基盤製造技術の開発

農林総合研究センター林業試験場 加工技術部
 

  スギ間伐材の小径材、曲がり材、黒変材等を粉砕して得られたオガ粉を原料とした植生基盤の製造技術を県内企業と共同で開発しました。これは蒸気を熱源として空隙率を高めて成型するという新しい製造方法で、県内企業と共同特許を出願しています。現在、「プラム・エコ」という商品名で八戸市の㈱プラム・エコ・プロジェクトが、屋上緑化用資材として都市圏を中心に販売しています。
  鉱物繊維系や石油系に替わる資材として、農業資材や断熱材などへの幅広い分野への応用が期待されることから、品質・性能面やコスト面について更なる研究を重ね、安心・安全な技術の確立に努めていきます。


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