青森農研フラッシュ 第11号

青森農研フラッシュ 第11号(平成17年11月)

  土壌還元消毒によるトマト萎凋病の被害軽減 農林総合研究センター 病害虫防除室
  りんごのゲノムタイピング -DNAで見る品種の違い- 農林総合研究センターグリーンバイオセンター
                                     遺伝子工学研究部
  春播小麦及び初冬期は種技術の地域適応性 農林総合研究センター畑作園芸試験場 作物改良部
  ソリダゴの露地栽培における作期拡大技術 農林総合研究センターフラワーセンター21あおもり
                              栽培開発部
 

土壌還元消毒によるトマト萎凋病の被害軽減 

農林総合研究センター 病害虫防除室

  土壌還元消毒は北海道道南農試で開発され、施設栽培で発生するいくつかの土壌病害を対象に、農薬を使わない土壌消毒法として全国的に普及しつつあります。この消毒法は、① 100kg/aのフスマまたは米糠、②ほ場容水量以上の水、③30℃以上の地温の3つの条件を揃えることで、①を分解する土壌微生物の急激な増殖・酸素消費によって土壌を急速に還元化(酸欠状態)させ、病原菌の死滅や増殖抑制を可能にするものです。さらに、還元化の過程で生成する酢酸などの有機酸や、微生物どうしの競合も、土壌消毒効果に複合的に作用していると考えられています。
  そこで、土壌還元消毒の有効性の検討にあたり、トマト萎凋病を対象に、本県の特色を生かして①の代わりに「りんご搾りかす」を利用しました。その結果、500kg/a投入することにより、フザリウム属菌の菌密度が激減し、本病の被害も軽減されることが明らかになりました。なお、本県で、「30℃以上の地温」を確保して土壌還元消毒を実施できる時期は限られ、概ね6月上・中旬から8月下旬までとなります。

 

  
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りんごのゲノムタイピング -DNAで見る品種の違い-
 

農林総合研究センターグリーンバイオセンター 遺伝子工学研究部

  りんごは17対の染色体で構成されていますが、その中身(DNA配列)を比較すると品種間で違う部分が多数あります。このようなDNAの違いを識別するものをDNAマーカーといいますが、多数のDNAマーカーから得られた情報を集約すると、各個体のDNA全体(ゲノム)の構成をおおまかに把握することができます(ゲノムタイピング)。
 現在当センターでは、りんご試験場が保有する約300種類の品種・系統についてゲノムタイピングを進めており、品種間のゲノム構成の違いと形質との関連性を解析することによって、食味などに関与するDNA領域の特定を目指しています。また、ゲノムタイピングはDNA情報で作った各品種のプロフィールでもあり、これを活用することによって、環境に左右されず客観的に品種を識別できます。当センターでは交配親を確認する目的に利用し、交配親の組み合わせに疑いが生じた数品種については、正しい親の推定を行っています。


 

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春播小麦及び初冬期は種技術の地域適応性

農林総合研究センター畑作園芸試験場 作物改良部

  麦類は単品目としての生産だけでなく、土地利用型作物・野菜類との畑輪作や水田の有効利用を推進するうえで重要な品目の一つです。
本県の小麦は秋播小麦(9月は種、翌年7月収穫)のみであり、作期の制約上他作物との輪作には組み入れがたい品目となっています。一方、春播小麦(4月は種、8月収穫)は輪作への組み入れの点では有利ですが、過去に試験に供試した品種は収量・品質の面で本県への適応性が低いことが明らかになっています。
  しかし、近年北海道では新たな春播小麦品種が育成されており、さらに収量・品質を安定させる技術として初冬期(11~12月の根雪前)は種技術が開発され、普及してきています。当場でこれらの品種・技術の本県における適応性について予備試験を行ったところ、春播小麦品種(「ハルユタカ」「春よ恋」)の春期は種で42~43 kg/a、初冬期は種では34~42kg/aの収量が得られました。また、倒伏もほとんど見られなかったことから、は種量を多めにすれば増収の可能性を見出すことができ、品種・技
術とも適応性があるとの結果が得られました。
  今後は、土地有効利用と多収・高品質を両立する生産
技術開発に取り組んでいく予定です。


 

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ソリダゴの露地栽培における作期拡大技術

農林総合研究センターフラワーセンター21あおもり 栽培開発部

 ソリダゴの露地越冬栽培では、採花期が7月に集中します。また、採花後の株から伸長した芽は9月に開花しますが、ボリュームが乏しく品質が劣ることが問題となっています。そこで、品種「タラ」での台刈り・電照が採花期及び品質にどのような効果があるかを検討しました。
 その結果、台刈りを5月中旬から7月中旬にすると8月上旬から9月中旬に商品性のある切り花が採花できました。また、7月下旬以降の台刈りでは品質が劣るため、台刈りと同時に6週間以上電照することで品質が向上しました。更に電照期間が長いほど採花期は遅れ、9月中旬から10月下旬まで採花ができました。

 

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