青森農研フラッシュ 第12号

青森農研フラッシュ 第12号(平成18年3月)

 水稲新品種「まっしぐら」の特性と栽培法 農林総合研究センター 水稲栽培部・水稲育種部・環境保全部
 卵養鶏へのホタテ貝殻の利用 農林総合研究センター畜産試験場 養鶏部
 「松くい虫」に抵抗性のあるマツの開発 農林総合研究センター林業試験場 育林環境部
 消雪の遅れによるりんごの生育への悪影響とその軽減対策 農林総合研究センタ-りんご試験場 栽培部

水稲新品種「まっしぐら」の特性と栽培法 

農林総合研究センター 水稲栽培部・水稲育種部・環境保全部

  「まっしぐら」は、平成17年3月に県の奨励品種に採用され、平成18年から津軽西北地帯や南部平野内陸地帯を中心に農家での栽培が始まります。これに対応するため、農林総合研究センターでは、平成11年から「あおもり米優良品種選定試験」などで品種特性の検討を行ってきたほか、平成16年から良食味・高品質米生産の栽培マニュアル策定に向けた試験や指導拠点ほでの解析を実施してきたので、その主な内容を紹介します。なお、成果の詳細は、県の指導奨励事項にとりまとめたので参考にしてください。

(1)品種特性
 ①食味;「ゆめあかり」よりやや優る「上中」で、県内の品種では「つがる
       ロマン」と並びトップランクに位置します。
 ②収量;「むつほまれ」をやや下回る程度です。
 ③いもち病抵抗性;葉いもち・穂いもちともに県内の主要品種の中では
       強い「強」で、有機栽培等への活用も期待されます。


(2)栽培のポイント
 「まっしぐら」の特性を十分発揮させるためには、品種に適した栽培管理
が重要です。このため、窒素施肥量(基肥+追肥)は、「ゆめあかり」・「むつほまれ」と同様に地帯別の施肥基準量を順守します。追肥は、幼穂形成期の生育量と葉色値に基づき、表2の栄養診断基準を参考に実施します。また、刈取適期は、「ゆめあかり」・「むつほまれ」に準じ、出穂後積算気温で960~1,200℃、出穂後日数で45~60日となります。

 

  
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卵用鶏へのホタテ貝殻の利用
 

農林総合研究センター畜産試験場 養鶏部

  ホタテ貝殻の主成分は、炭酸カルシウムであることから、卵用鶏へのカルシウム給源としての利用が考えられますが、鶏への利用は、塩分を含むことから今まで行われていないのが実情でした。しかし、野外堆積により塩分が除去されることが判明したので、一般的なカルシウム給源である石灰石及びカキ殻を給与した場合と比較試験を実施しました。
  その結果、産卵率及び飼料摂取量等の生産性は石灰石及びカキ殻と差はなく、卵重及び卵殻強度等の卵質にも差はみられませんでした。また、ホタテ貝殻は石灰石より価格は高いもののカキ殻よりは安いので、卵用鶏のカルシウム給源として十分利用できることを明らかにしました。
  実際に利用する際は、飼料中のカルシウム含量が3.03~3.33%になるようにホタテ貝殻を配合します。カルシウム給源がホタテ貝殻だけの場合、飼料中に約9%配合します。
  なお、ホタテ貝殻の入手先は以下のとおりです。
 
 (有)ふるさと物産 ℡017-728-8600


 

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「松くい虫」に抵抗性のあるマツの開発

農林総合研究センター林業試験場 育林環境部

  マツ林に甚大な被害を与えるマツ材線虫病(通称「松くい虫」)が北上し、本県への侵入の危険性が高まっています。その対策として、当試験場では抵抗性マツを作出する「抵抗性育種研究」を実施しています。松枯れ被害の発生が早かった西日本では、被害林からの生残木の選抜・接種試験によって抵抗性マツが開発されましたが、西日本産抵抗性マツは東北地方の海岸部では気象条件が悪く生き残れません。このことから、本県の気候に適し、抵抗性を持つマツを作出するため、本県産のクロマツに抵抗性マツやアカマツ(注)の花粉を人工交配することにより抵抗性マツの作出を試みています。
  平成13年に交雑した6系統の苗を用いて接種検定・海岸植栽試験を実施した結果、抵抗性が高く、海岸での生存率も高い系統が見つかりました。今後は継続調査や他の交雑苗による試験を行い、実際に植栽できる抵抗性マツの早期作出に取り組むことにしています。

(注)クロマツとアカマツの雑種は抵抗性が高いとの報告がある。


 

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消雪の遅れによるりんごの生育への悪影響とその軽減対策

農林総合研究センターりんご試験場 栽培部

  平成17年1~3月の大雪は、県内のりんご樹に甚大な被害を与えました。さらに、りんご園の消雪も遅れたことから、①同一樹において、雪に長期間埋もれていた下枝(発出部が地上高90㎝以下)の開花が、埋もれていなかった上枝(発出部が地上高160㎝以上)よりも遅れる、②下枝での果実肥大が上枝の果実より劣り、上枝と下枝とで果実の大きさの揃いも悪くなるなどの悪影響が観察されました。しかし、融雪促進剤を散布してりんご園の消雪を早めた場合、同一樹の上枝と下枝で開花が揃い、下枝での果実肥大が良好となり、収穫果の大きさや揃いも良くなりました。
  これらの結果から、消雪の遅れによるりんごの開花や果実肥大への悪影響を軽減するためには、3月上旬になっても下枝が雪に埋まっている場合、3月中~下旬に融雪促進材(土、くん炭や市販の融雪促進剤)を2~3回程度散布して、りんご園の消雪を積極的に早める必要があることを明らかにしました。                                     
 


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