青森農研フラッシュ 第13号

青森農研フラッシュ 第13号(平成18年5月)

◇掲載内容◇

 ○りんご枝物の生産技術の確立に向けて 農林総研 フラワーセンター21あおもり 栽培開発部

 ○やまのいもの新形質品種の作出     農林総研 グリーンバイオセンター 微生物工学研究部

 ○カラムナータイプりんごの育種の現状   農林総研 りんご試験場 育種部 

 ○不耕起等播種技術を導入した水稲・小麦の新しい作付体系化技術  農林総合研究センター 水田利用部

 ○基幹種雄牛「第1花国」産子の効率的な肥育技術  農林総研 畜産試験場 繁殖技術研究部

 ○高齢者向け木製玩具の開発        農林総研 林業試験場 木材加工部

  

 

りんご枝物の生産技術の確立に向て

農林総合研究センターフラワーセンター21あおもり 栽培開発部
 

  フラワーセンターでは現在、観賞用りんご枝物の生産技術の開発に取り組んでいます。
枝物は低コスト・省力生産が可能な露地品目であり、施設栽培とも競合しないという利点があります。また、本県はりんごの主産県として生産技術や生食用品種、受粉樹など多くのりんご資源を有することから、りんごの枝物を「あおもりブランド」として売り込んでいく新たな品目の一つに位置付けたところです。
  県内においては、イベントなどで剪定枝を利用した開花調節等の取組みが行われていますが、花部の品質、日持ちなど解決すべき課題が多く残されており、枝物生産に向く品種や仕立て方法なども明らかにする必要があります。
  現在、りんご試験場や農業者グループ、市場等関係者の協力を得ながらクラブアップルなどから枝物に適するマルス属の品種・系統を選抜し、これまでに花物用8、実物用12の有望な品種・系統に絞り込みました。今後、さらに実際の生産に向けた仕立て方法の検討、花持ち・実持ち向上技術の確立などに取り組んでいくことにしています。

○クラブアップル:ヨーロッパやアメリカの野生種を交配して作られた観賞用のりんご品種。庭木や街路樹等に用いられている。


         花物用候補系統                    実物用候補系統
                                     

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やまのいもの新形質品種の作出

農林総合研究センターグリーンバイオセンター 微生物工学研究部

  青森県のながいもは全国一位の出荷量を誇り、国内流通量の約4割を占めています。しかし、近年は競合産地である北海道が出荷量では急追しており、単収・A品率では本県を上回っています。また、平成16年産から2年連続にわたっての豊作により市場価格が低迷し、日本一のながいも産地の崩壊が懸念されています。
  そこでグリーンバイオセンターでは、青森県独自の特色のあるやまのいもの開発を目指し、つくねいも×ながいも間の交配による新品種開発に取り組んでいます。これまでに、ながいもよりも粘度の高い系統や糖度の高い系統など5系統を選抜しており、いもの形状、品質の安定性や加工適性を調査した後、優良系統の品種登録を目指します。

 

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カラムナータイプりんごの育種の現状

農林総合研究センターりんご試験場 育種部

  カラムナータイプとは、側枝や節間の長さが普通の栽培品種に比べて極めて短く、極細円筒形(棒状)の樹形に成長する特性を持った系統のことです。1960年代始めにカナダで「旭」の枝変わりとして発見されました(品種名:ウィジックマッキントッシュ)。その後、イギリスの研究所がこの品種を親にして精力的に品種改良に取り組み、そこで開発された品種の一部が現在、我が国でも販売されています。
  カラムナータイプは、その成長特性から省力栽培に向く樹として注目されておりますが、最大の問題は「旭」の血を強く引くためか、食べておいしい品種がまだ開発されていないことです。そのため、今のところカラムナータイプの利用は授粉樹や観賞用(庭木)に限られています。
  りんご試験場では、食味の良好なカラムナータイプ品種を育成するために、平成11年から平成13年にかけてカナダ、アメリカ、オーストラリアに出張し、各国で開発された食味が比較的良いカラムナータイプと日本の優良品種との交配を行い、約1000本の実生を育成しました。これまでの調査では、全実生のうち28%がカラムナーの成長特性を示し、平成17年から結実し始めた22系統の中に、カラムナー性で食味がやや良いものも1系統見つかっています。今後、これらの実生の多くに果実が成るようになれば、有望系統も増えることが期待されます。




 

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不耕起等播種技術を導入した水稲・小麦の
新しい作付体系化技術

農林総合研究センター 水田利用部

  平成19年産からスタートする国の「品目横断的経営安定対策事業」では、対象品目となる水稲・小麦・大豆等を作付けする場合、集落営農組織や担い手による水田の効率的・総合的な利用が一層求められています。
  現行の水稲・小麦作付体系では、小麦の播種期が水稲の収穫作業と競合するため、翌年9月の播種となり、1年遅れの生産となります。しかも、夏そば等の前作物の収穫後は、小麦の連作となるため収量・品質が低下する等多くの問題点があります。
  そこで、本年度から小麦の連作及び小麦播種と水稲収穫作業を回避した合理的な水稲・小麦の新作付体系を確立するため、小麦の10月播種技術の開発に取組みます。
  この作付体系の確立により、水稲との作業の競合回避や畑作雑草の発生抑制のほか、晩播大豆の導入など収益の向上が期待され、水田の効率的・総合的利用に大きく寄与できます。





○圃場の表面排水を促進させる簡易な耕起法と不耕起播種機の利用
  チゼルプラウなどを利用して水田を爪で引っ掻くように起しながら、稲わらや刈り株を鋤込み、土壌の表面排水と乾燥を促進させます。その後、水稲直播用の不耕起V溝播種機で播種作業を行います。



○耐雪性に優れた小麦「ゆきちから」の導入
  10月播種による減収を避けるため、耐雪性に優れ、越冬後の茎数確保に優る「ゆきちから」を導入します。


 

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基幹種雄牛「第1花国」産子の効率的な肥育技術

農林総合研究センター畜産試験場 繁殖技術研究部

  「第1花国」は、畜産試験場和牛改良技術センターで実施している種雄牛選抜事業で作出された種雄牛であり、平成11年に基幹種雄牛として指定され、本格的な供用が開始されました。「第1花国」産子の肥育牛は、全国レベルでの枝肉共励会で上位入賞するなど産肉能力は高く評価され、このため青森県家畜市場の子牛価格は全国でも上位に位置し、肉牛農家の生産意欲向上の弾みとなっています。しかし、子牛の発育特性は父である種雄牛により異なり、特徴があるので、肥育方法にも工夫が必要となります。今回は低コストで牛肉を生産するために、『「第1花国」産子(去勢)の肥育期の飼料給与が肥育期間と産肉性に及ぼす影響』について検討したところ、産肉性が劣ることなく肥育期間の短縮とコストの低減が図られたので、この内容を紹介します。

1 肥育期間と飼料給与方法
  本県における黒毛和種去勢肥育牛の平均出荷月齢である30か月齢肥育を慣行区とし、27か月齢肥育を試験区としました。飼料給与方法のうち試験区では10~12か月齢時に、給与飼料中の粗飼料の割合(粗濃比)を30%とし、慣行区では肥育前期に粗濃比を20%としました。その後は両区とも濃厚飼料及び粗飼料を飽食としました。

2 結果の概要
 1)体重は終了時点で試験区が3か月肥育期間が短いにもかかわらず慣行区とほぼ同等でした。
 2)試験、慣行両区の枝肉成績は統計的に有意差はなく、また各肥育段階において試験区の飼料摂取量は多かったものの、肥育期間の短縮により最終的な生産コスト(飼料費)は低減しました。
 
 今回の成果は平成18年度の県の指導参考資料に選定されましたので、積極的に現地での指導に利活用していただきたいと考えています。




 

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高齢者向け木製玩具の開発

農林総合研究センター林業試験場 木材加工部

  これからの高齢者社会に向けて、老後を楽しむ手段の一つとして玩具の有効性が認められています。そこで、当場では、高齢者の嗜好や身体機能の低下に配慮した、遊ぶ楽しさを持つ高齢者向け玩具を開発しています。高齢者が玩具を使用することにより、副次的効果として認知症防止やリハビリ効果に加え、木の持つ癒しにより高齢者の健康維持に貢献します。
  開発するに当たっては、過去に子ども向け製品の開発を促進するために木製玩具の開発を行いましたので参考にして進めました。子ども向け玩具の開発では、玩具の精密化と電子化が進む中、古くから親しんできた木製玩具の良さを消費者に理解してもらい、また本県の林産資源と木工企業の持つ技術を活用するために、特徴のある木製玩具を目指しました。
  写真1は子ども向けに開発した木製玩具でブロックを自由な形に組み合わせることができる「自在ブロック」とベースに動物組木を乗せる「バランスアニマル」です。  
  高齢者向け玩具のほとんどが子ども向けの玩具であり、老人福祉施設では高齢者向けの玩具の必要性を感じています。そこで、高齢者施設ではどのような玩具を望んでいるか調査を行い、その結果をもとに「難易度や遊び方を複数設定する」というコンセプトで幾つかの試作品を製作しました。現在、試作品は短期入所生活介護施設(ショートステイ)と滞在型施設の二箇所の施設でモニター調査を行っております。
  写真2は、文字が描かれたキューブを並べてしりとりをする「しりとりキューブ」の試作品を使って遊んでいる様子です。




 

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