青森農研フラッシュ 第15号

青森農研フラッシュ 第15号(平成18年11月)

◇掲載内容◇

 ○モモシンクイガ加害りんごを見逃すな!   農林総研 りんご試験場 病虫肥料部

 ○籾がら袋培地を利用した水田野菜栽培 農林総合研究センター 水田利用部

 ○アルストロメリアの有望品種の紹介   農林総研 フラワーセンター21あおもり 普及技術部 

 ○検定済種雄牛の活用及び検定待機牛の紹介  農林総研 畜産試験場 和牛改良技術センター

 ○スギ・ヒバ複合集成材の開発 -断面構成の検討-  農林総研 林業試験場 木材加工部



 

モモシンクイガ加害りんごを見逃すな!

農林総合研究センター りんご試験場 病虫肥料部
 

  モモシンクイガの幼虫はりんごの果実内部を食害するため、被害果は生食用のみならず、加工用にも適さなくなります(写真1)。誤って被害果が流通すると、消費者のりんごに対するイメージダウンは避けられません。また、台湾など本種が生息しない国にりんごを輸出する際の検疫対象害虫となっているため、万が一、輸出果実の中に生きた幼虫が発見された場合には、輸出停止などの事態を引き起こします。
  従来、幼虫は‘ふじ’などの晩生品種の収穫期までには、越冬のために果実を脱出すると考えられてきましたが、最近の当場での調査結果から、一部の幼虫は収穫時期になっても果実内に残っていることが明らかになりました。幼虫が脱出していない果実は、表面に脱出口がないため、被害果であることが分かりづらい場合があります(写真2、3)。
  そのため、りんご試験場ではモモシンクイガの被害果を見分けるための研修会などを通じて、生産者や選果技術員の被害果診断技術向上に取り組んでいます。



                                               

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籾がら袋培地を利用した水田野菜栽培

農林総合研究センター 水田利用部

 本県の水田経営面積が小さい兼業農家は、排水不良等の理由により転作作物を作付けしないで、休耕田にしている例が多くみられ、水田利用率が低くなっています。一方、野菜は、地産地消を図るため地域毎に密着した少量多品目生産が要望されており、また、夏場は高温のため端境期となります。
 そこで、休耕田を有効利用するため、水田用水の冷却機能を利用し、夏場における野菜の安定生産を目的とした籾がら袋培地栽培技術の開発に取り組んでいます。水田条件下での野菜栽培の事例は、水生植物であるセリ、ジュンサイ、クレソン等がありますが、その他の一般的な野菜では事例がありません。
 ここで紹介する水田野菜栽培とは、籾がらを袋に詰めて水田に並べ、それを培地とし、用水を利用して水田状態で野菜を栽培しようとするもので、栽培作目としてはセルリー、リーフレタス、エンダイブ、チンゲンサイ等の葉菜類が中心ですが、試験年次を重ねながら栽培可能な作目を選定していく予定です。肥料は、被覆肥料等を数種混合してパックに入れて、籾がら培地の植穴に局所施肥しますが、試験では肥料の種類や減肥栽培の検討も行います。また、籾がらの保持材の選定では、網袋、ポリ袋やナガイモコンテナ等を利用して、野菜の生育・収量や生産コスト、作業性等について総合的に検討します。
 試験初年目の中間成績ですが、リーフレタスやエンダイブは順調に生育し、夏場を中心に数回収穫しました。また、水稲除草剤等を含んだ用水が直接入り込む水系では、野菜の品目によっては生育・収量に影響することを確認しました。  
 用水路の水で野菜の根部を冷やすため、夏場に弱い野菜栽培には有利で、特に、用水がきれいで冷たい山間地ではより適していると思われますので、これら地域の休耕田などに導入できればと考えています。

    

 

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アルストロメリアの有望品種の紹介

農林総合研究センターフラワーセンター21あおもり 普及技術部

 アルストロメリアは南米大陸原産で、低温条件下(最高地温17℃)で年中採花できる、球根切り花です。球根代が高価でパテント料もかかるため、初期投資は大きいですが、色調も豊かで、病気も少なく、比較的栽培しやすい宿根性の花です。
 フラワーセンター設立以降は、種苗の選定が経営上大きなウエートを占めるという点に主眼を置いて、品種の特性を調査し、紹介してきました。
 平成9~10年に「ビクトリア」、「ラパーズ」を、平成11~12年に「バージニア」、「レベッカ」、「サニーレベッカ」、「ベリンダ」、小輪系の「リトルスター」を、平成14~15年に「アマレラ」、「アモール」、「オルガ」、「コシナ」、「サクラ」、「ロレナ」を選定しており、生産現場にこれら品種が導入されています。
 今回は平成15年に種苗メーカーから発表された新品種について、本県における切り花品質や収量性が明らかになったので紹介します。

○有望品種とその特性
  平成15年7月11日に定植し、2年間の切り花を調査した結果、有望と判断した品種とその特性は表のとおりです。

   

○利用上の注意事項
(1)年次や地域あるいは夏期の温度経過によって収穫本数、品質に差が出ます。
(2)すべての品種は4年間の栽培契約となります。

    
    「メイフェア」        「バレンタイン」        「マンゴー」         「キッス」 


 

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検定済種雄牛の活用及び検定待機牛の紹介

農林総合研究センター畜産試験場 和牛改良技術センター

●検定済種雄牛「北福12」、「第2花幸」の活用について
  これまで県基幹種雄牛に指定された種雄牛は「雪国」、「第1花国」、「福安」、「照神12」、「国栄97」の5頭ですが、県内生産者の利用は「第1花国」に集中しています。これは全国的にその能力が評価され人気が沸騰したことによります。また、最近、検定を終了した種雄牛の中から期待できる種雄牛も誕生していますが、その利用は殆ど進んでいない状況にあります。「第1花国」も検定時の成績より、その後の農家での肥育成績で評価が高まったことを考慮すると、これらの検定済種雄牛も現場での利用を促進しデータ数を増やして基幹種雄牛に組み入れできるかどうか判断していく必要があります。そのため、肥育奨励事業(平成19~20年度)を実施する予定であり、現在、生産者に協力をお願いしているところです。

  

    
          「北福12」号                   「第2花幸」号


●検定待機牛の紹介
1.平成19年度検定終了牛
 「第1勝平茂」と「丸良」は父、母ともにそれぞれ気高系、兵庫系の純系であり純粋繁殖産子として期待されます。また、「第2花国」は全兄妹同士の交配であり、近交は高いものの楽しみな交配です。

  


2.平成20年度検定終了牛
 「第6平茂花」は父が「平茂勝」、母が「第4はなくに」で「第1花国」の全兄妹です。「第3花国」は前述の「第2花国」の弟にあたります。また、「徳藤」は全兄弟の兄が全農枝肉共励会で最高賞の栄誉に輝いており期待されます。

  


 

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スギ・ヒバ複合集成材の開発 -断面構成の検討-

農林総合研究センター林業試験場 木材加工部

 今後、大量供給が予想される青森県産スギについて、当場では、特産のヒバ材と組み合わせることにより、付加価値が高く、強度性能も十分な異樹種構成集成材(以下スギ・ヒバ複合集成材)の開発を行ってきました。最近、各地のスギ集成材工場において、その低い歩留まりが大きな問題となっていることから、本研究では、より多くのスギ材が使用可能な製造方法について検討し、さらに、それらの強度性能を評価することとしました。
 まず、スギ丸太から得られる集成材用ひき板(以下ラミナ)の出現傾向を調査して、それに合わせた断面構成(スギ5層)を設計しました。その結果、JASに準じた断面構成に比べ、約2倍ものスギ材が使用可能となりました。このスギラミナ5層の外側に、ヒバラミナを1枚ずつ積層して、スギ・ヒバ複合集成材(7層)を製造しました(図)。
 次に、これらスギ・ヒバ複合集成材の曲げ試験を行いました(写真)。その結果、製造したA-type、B-typeとも、JAS規格品と同等の強度性能が認められ、構造材として十分な実用性を有していることが分かりました。

  

  


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