青森農研フラッシュ 第3号

青森農研フラッシュ

 

第3号(平成15年11月)

にんにくの周年出荷に向けた低温貯蔵及び乾熱処理との組合せによる萌芽抑制技術(第1報)(畑作園芸試験場)
屏風山地域におけるハウスを利用したそらまめの6月どり(砂丘研究部)
自然崩壊性マルチのにんにく栽培への適応性(畑作園芸試験場)


にんにくの周年出荷に向けた

低温貯蔵及び乾熱処理との

組合せによる萌芽抑制技術

(第1報) 

畑作園芸試験場

 にんにくの萌芽抑制剤が平成14年4月に販売中止したため、15年以降のにんにくの周年供給が難しい見通しとなりました。そこで、薬剤によらない萌芽抑制技術確立のため、青森県農林総合研究センター総合企画室・普及指導室・水田利用部・砂丘研究部・畑作園芸試験場とJA全農あおもり並びに㈱大青工業で構成する「青森県産にんにく品質確保研究推進プロジェクトチーム」を緊急に発足させました。試験では、JA全農あおもりが提供した平成14年産のにんにくりん球を材料とし、にんにくの低温貯蔵及び乾熱処理の経験を持つ大青工業の施設を用いて、12月から4月までの出荷を目指しました。処理の効果判断は、出荷調整に2週間、流通に2週間かかることを想定し、冷蔵庫から出庫したものを無加温の倉庫で1か月間保管した後に行い、萌芽・発根及び障害や腐敗の発生率が見られない場合を有効としました。
 その結果、乾燥終了直後の7月下旬から-2℃及びCA-2℃で貯蔵することにより、11月から3月までの出庫で少なくとも1か月間の萌芽・発根を抑えられること、さらに、数か月貯蔵し出庫後5~8日目に乾熱処理(後乾熱)することで、萌芽・発根抑制効果が高まり、余裕を持った出荷ができることが分かりました。8月下旬からの-2℃貯蔵では、冷蔵のみでは全試験期間において萌芽・発根抑制効果が認められませんでしたが、後乾熱処理を追加することにより12月~2月出庫で有効となりました。
 また、常温保管したにんにくを8月下旬から9月上旬頃に50℃または48℃で6時間乾熱処理する場合にも萌芽・発根を抑制できますが、常温保存では10月に発根、11月には萌芽します。乾熱処理後に冷蔵する必要がありましたので、この処理を前乾熱処理と呼ぶことにしました。この場合は、この期間に-2℃またはCA-2℃の貯蔵で3月出庫まで、0℃の貯蔵で2月出庫まで萌芽・発根が抑制されました。前乾熱処理が9月中~下旬と遅くなることにより効果が劣るだけでなく高温障害(飴色化)が発生するので、処理時期を限定しました。
 このように、萌芽抑制剤を使用しなくてもにんにくを長期出荷できることが明らかとなりました。本年は15年産にんにくを用いて追試を行い、さらに長い期間(収穫後から翌年6月まで)の萌芽抑制技術の確立を目指しています。


にんにくの萌芽(左)と発根(中)、発根部の拡大(右)


 

表 低温貯蔵と出庫時の乾熱処理(後乾熱)による萌芽抑制効果 (平成14年)


 

表 低温貯蔵前乾熱処理による萌芽抑制効果  (平成14年)

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屏風山地域におけるハウス

を利用したそらまめの

6月どり

砂丘研究部

 屏風山地域は砂土という土壌条件からパイプハウスで栽培される品目はすいか、メロンに偏重する傾向があり、生産者からは新しい品目の導入が望まれています。
 そらまめは比較的冷涼な気候を好み、花芽が分化するまでは低温に強い特徴を持っています。そこで、パイプハウスを利用した秋まき及び春まき栽培について検討したところ、6月どりが可能であることが明らかになったので紹介します。

 作型別のは種期、収穫期及び収量性
 秋まきでは10月上旬は種、10月下旬定植とし、冬季間も無加温で管理します。越冬後、4月上旬から開花が始まり、6月上旬~中旬にかけて収穫が可能となります。
 春まきでは2月下旬は種、3月下旬定植で、6月下旬~7月上旬が収穫期となります。
 秋まき、春まき栽培いずれも、総収量で1,200kg/10a程度を確保でき、そのうち2粒莢以上の割合は50~70%が見込まれます。また、両作型を組み合わせることによって、6月上旬から7月上旬まで長期間にわたって収穫することができます。

 栽培の要点
 品種は両作型とも、「ハウス陵西」、「打越一寸」などの市販品種を利用します。
育苗は45~72穴セルトレイを使い、2~3葉期の苗を定植します。
 開花期以降の高温障害(落花、結実不良など)を避けるため、地温低下マルチを利用したマルチ栽培とします。また、開花~結実期にはハウス内の温度が25℃を越えないように換気します。
 施肥は、秋まきでは生育期間が長いため翌春の開花期以降に追肥する体系がよく、春まきは肥効調節型肥料を利用した全量基肥体系とします。

 そらまめの導入によって、屏風山地域におけるハウスの有効利用と、農家収入の向上が図られると期待しており、経営上の参考にして頂きたいと考えています。

 


 秋まき栽培定植直後


5月下旬頃の秋まき栽培そらまめ

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自然崩壊性マルチの

にんにく栽培への適応性

畑作園芸試験場

 自然崩壊性マルチは、通常の農ポリと同じように使えて、しかも使用後は、自然界の微生物や分解酵素によって水と二酸化炭素に分解される、“自然に還る”マルチ資材です。このため、廃棄物の処理に際しては、地中への鋤込みが可能で、燃焼させても発生熱量が低く有害物質が放出されることはありません。
 県内のにんにくの作付面積1,490ha(平成14年度)の約9割はマルチ栽培で、使用済みのマルチは作付け終了後に業者に持ち込み、有償で処分しているのが現状です。自然崩壊性マルチを使用した場合、①収穫時期のマルチ回収作業の省力化、②環境負荷の低減、という利点があります。自然崩壊性マルチは崩壊までの期間がタイプにより異なります。にんにくの場合、秋の植え付けから翌年6月中旬の茎葉繁茂期までうね面を被覆し、それ以降に崩壊が進むタイプのものであれば、農ポリとほぼ同等の収量が得られます。しかし、このタイプのマルチ資材には、収穫作業時にハーベスタに破片がからみつき、機械作業が困難になるという問題点があります。
 しかし、現在、試作段階の抜き取り式にんにく収穫機では、からみつきの問題点が解決されているだけでなく、マルチが断片化され、鋤込みが容易になるので、マルチの利用価値がさらに高まります。

 

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