青森農研フラッシュ 第6号

青森農研フラッシュ 第6号(平成16年8月)

美味しい鶏卵のデビューを目指して 農林総合研究センター畜産試験場養鶏部
ぶどうの有望品種「サニールージュ」 農林総合研究センターりんご試験場栽培部
-調理飯や玄米食に向く小さくて丸いお米-極小粒うるち米水稲品種「つぶゆき」  農林総合研究センター水稲育種部  
雪の冷熱エネルギーを利用した野菜生産技術  農林総合研究センター水田利用部
 

美味しい鶏卵のデビューを目指して 

農林総合研究センター畜産試験場養鶏部

  卵の栄養価や美味しさは、卵黄の大きさに依存していることから、畜産試験場では、1984年から卵黄重も考慮した卵重の改良に取り組んでいる。その結果、改良前に卵重61.5g、卵黄重17.5g、卵黄割合28.5%であった卵が2001年には卵重64.2g、卵黄重19.2g、卵黄割合29.9%となり、卵黄重で1.7g増量された。参考までに、写真で1.2g違う卵黄を比較してみると大きい違いがあることがわかる。改良された鶏は昔の鶏並みに卵黄割合が高い卵を産み、しかも大卵実用鶏として通用する系統であり、県産緑色卵鶏「あすなろ卵鶏」の卵重改良素材として使用している。
「あすなろ卵鶏」は緑の殻をもつインパクトのある卵を産むが、ただ卵殻色が珍しいだけでは飽きられるため、この鶏種は卵黄の大きい、美味しい卵を産む鶏として改良を継続している。その卵黄割合の改良目標は昔の卵を超える33~35%で、これは卵が非常に美味しいホロホロ鳥やキジ等野鳥における卵黄割合に相当する。当場では帯広畜産大学と共同で卵黄割合が高い「あすなろ卵鶏」親系統を作出しており、高い卵黄割合をもつ美味しい「あすなろ卵鶏」が出現するのも近いものと期待している。
重さが1.23g違う卵黄を比較している画像

 


写真 放牧育成での別飼い状況

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ぶどうの有望品種「サニールージュ」

農林総合研究センターりんご試験場栽培部

 ぶどうに対する消費者の嗜好は、果粒が大きく、糖度が高く、無種子の品種に移行しつつある。
 りんご試験場では、本県に適した新品種を検討してきたところ、いくつかの有望品種を選抜することができた。その中から、旧農林水産省果樹試験場が「ピオーネ」に「レッドパール」を交配し、育成した「サニールージュ」の特性について、紹介する。
露地で栽培すると、収穫時期は9月中下旬であり、耐寒性も強いので、「キャンベル・アーリー」に代わりうる品種である。また、無加温ハウスで栽培すると、お盆前の出荷をねらうことができる。ただ、自然状態では、果房や果粒が小さいので、ジベレリン処理が必要であり、無核果粒の結実促進と果粒肥大のため、2回処理すると、1粒重が6g程度、房重が350 g程度の果房を安定して生産できる。また、果粒は赤褐色の短楕円形となり、見た目にも高級感があり、糖度も18%程度と高く、食味も良好である。
有望品種「サニールージュ」
 

 

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-調理飯や玄米食に向く小さくて丸いお米

 -極小粒うるち米水稲品種「つぶゆき」

農林総合研究センター水稲育種部

米の需要拡大を図るために、普通の米の品種開発に加えて幅広い用途に向く米(従来にない形、色、香りなどをもった米など)の開発も進めている。「つぶゆき」は、普通の品種に比べて大きさが6割程度の極小粒うるち品種で、形が丸いのが特徴である。極小粒のため収量性は低いが、障害型耐冷性やいもち病抵抗性が強いなどの特性を有しており、平成14年度に本県の「認定品種」に指定された。
 炊飯米は、タンパク質含量が高く、粘りは弱く、やや硬めでパラパラとした食感があるため、普通のご飯よりライスサラダ(ゆでた米を野菜とドレッシングであえる)やピラフ、チャーハンなどの調理飯に適している。
 ライスサラダにすると、口当たりが軽くさっぱりとしており、オードブルや付け合わせに向く。また、ピラフやチャーハンに利用すると、口の中でパラリとほぐれ、とても食感が良い。また、玄米混ぜご飯(「つぶゆき」の玄米を普通の白米に混ぜて炊く)は手軽な健康食となる。全国的にも珍しい形のお米で、地域の特色ある米料理や加工品開発の素材として期待されている。
ライスサラダと形状を比較

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雪の冷熱エネルギーを利用した野菜生産技術

農林総合研究センター水田利用部

  豪雪地帯である本県にとって、雪の有効利用を進めることは重要な課題である。特に、農業分野での利用事例は数少なく、その技術開発が求められている。
 平成15年度から3か年計画で冷涼な本県でも夏季の作型が難しいイチゴ、ホウレンソウ、レタスなどの品目について、雪の冷熱エネルギーを利用した高品質安定生産技術の開発試験を実施しているので、その概要を紹介する。
 雪の貯雪法は、籾がらを断熱材として利用した簡易なもので、昨年度は4月初めに雪を約600t(底辺20m、上辺8m、高さ5m)野積みし、周囲に袋に入れた籾がらを敷いたところ、9月中旬の残雪量は1割の60tであった。本年度は、籾がら利用の断熱方法を改善し、下図のとおり3月下旬に雪を約500t(底辺20m、上辺8m、高さ4m)を野積みし、周囲に直接籾殻を敷いた結果、7月10日時点で貯雪量は3分の2程度まで減少したが、昨年度より残量が多く断熱方法の改善効果が確認できた。
 雪山の融雪水は一旦タンクに貯め、熱交換パイプを使用してハウス内を循環させ土耕栽培、養液栽培の培地を冷却している。現在、イチゴ、ホウレンソウ、ルッコラ等を栽培しているが、冷却水循環の電力には、小型の風車及びソーラパネルによる自然エネルギー発電を利用している。
 

雪の冷熱エネルギー利用概念図

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