藤坂稲作部 冷害に強い品種の育成

冷害に強い品種の育成

 

 イネは熱帯性の作物であり、低温では様々な生育阻害を受けます。その中で被害が大きいのが、生育期の低温により、出穂・登熟の時期が遅れ、結果として完熟できずに減収となる遅延型冷害と、花粉ができる時期の低温により花粉の発育が阻害され、正常な花粉が減少し不稔(実がみのらないこと)が起こる障害型冷害です。
 特に東北地方の太平洋側は、イネの花粉ができる時期と太平洋から冷たい風(やませ)が吹き込む時期が重なりやすく、冷害を受けやすい地域です。藤坂稲作部ではその立地条件から、冷涼な気候と温度が低く豊富な湧水を利用して、創立当初から障害型冷害に強いイネの選抜を行ってきました。


 

 

昭和50年代に 主流だった短期深水耐冷性検定 

 

 

 冷害を受けた穂(耐冷性:上(強)~下(弱)) 


 

  現在では、地下水と灌慨水を混ぜあわせて温度を一定に保った水を循環させた田んぼでイネを育て、冷害を起こさせる「恒温深水灌慨法」と、人工的に気象を調節できる温室(人工気象室)で温度を精密にコントロールして、一定の条件で冷害を起こさせる方法を併用して、正確な障害型耐冷性の検定を行っています。

 

 

恒温深水灌慨法(処理水温19.0~19.5℃、水深25cm) 

 

 

耐冷性検定に用いられる人工気象室 


耐冷性の強いイネを作るには、親に使う品種も耐冷性の強い材料を使う必要があります。藤坂稲作部では日本の在来品種の持つ耐冷性の遺伝子を1種類のイネ系統に集めることで、耐冷性の強い「ユメコガネ」、「はまゆたか」、「チヨノモチ」などの品種やふ系PL1(上育418号/ユメコガネ)、ふ系PL2(マツマエ//トドロキワセ/ふ系94号)、中母42(レイメイ/はやゆき//レイメイ)、ふ系PL3(青系135号/ふ系186号)等の中間母本を育成しています。

 さらに、東南アジアの山岳地帯などが原産地とする在来稲の強い耐冷性の日本品種への導入を図っており、中母45(シモキタ/Precosus F.A.//レイメイ,F4///レイメイ)、中母52(Nauox Sollana/フジミノリ//シモキタ,F5///レイメイ)、中母53(ふ系72号/Uzros 770//シモキタ,F5///レイメイ) 、ふ系PL4(中間母本農8号/中母35)、ふ系PL5(中母59/東北155号)などの中間母本系統を育成しています。
 現在ではこれらの中間母本を材料に食味や品質、及び耐冷性を改良した実用品種の育成を目指して選抜を続けています。

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